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YAMAGUCHI DEAD END  作者: 遠藤信彦
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拠点を作ってみる

ミノルたち一行は川島城後に着いた。


彼らは徳島に着いてからは目に入るものは全て薙ぎ倒し、そして喰った。徳島の人間はもともと対高知で疲れ切っており、財も兵も全てそちらに割かれていたのだ。その手薄になっていた海岸線にミノルたち広島鬼道の来襲があったので、人々は大いに驚き、そして簡単に崩れた。男たちはよく戦ったが、目の前で子を喰う広島人に女たちが耐えきれなかった。みんなこぞって香川を目指したので男たちもそれに着いて行かざるを得なかった。伊予国も徳島とは国境(県境)を接するが、広い範囲ではなく、大雑把に言って点でしかないので、情報が遅れていたのだ。香川が農業で成功しており、食料が得られるかもしれないという噂が徳島にもあったのかもしれない。


『どんな風の吹き回しじゃろうか?』

山本圭一郎は隣の潮田豪蔵に質問を投げかけた。徳島に入ってっからのミノルの活躍は凄まじく、まさに鬼人を思わせるような働きぶりであったが、その快進撃の途中、この川島城後を見てからはぴたりと止んでしまい、天守閣に引きこもってしまった。もともとはレストランであったこの天守閣であったが、施設が閉鎖された後は手入れもされていなく、トイレに行くのにも不便であったが、ミノルはなぜかここが気に入ったらしく、動こうとしない。

『もしかしたら定住する気にもなったんかいねぇ?別に驚くことじゃぁない、今までがしんどすぎたんよ。」

豪蔵の言葉に確かにと頷いた圭一郎であった。

『稲でも植えろとお達しがあっても俺は驚かんけぇね。』

豪蔵はそう言って炊き出しを貰いに行くと言って消えていった。久しぶりに牛を見つけたと言われて嬉しがっていた。

圭一郎は今後の作戦についてミノルに相談したかったが、豪蔵の言葉を聞いて思いとどまった。人を喰らい生き延びてきた自分達が農業や漁業をするとは思えなかったが、休息を取れるのであればそれはそれで嬉しかった。食料問題さえクリアできれば定住だって悪くない筈だ。大きく背伸びをした圭一郎は女を繋いでいる倉庫に向かっていった。


ミノルは外を眺めている。天守閣にて周りには誰もいない。そしてあの時の事を思い出していた。あの時、プツンと何かが切れた音がした。確かにしたのだ。木剣で相手の脳天を打ち砕いたあの時、返り血を浴びながら敵陣中央に躍り出たあの時に。ミノルは視界に入った川島城を見て動きが止まってしまった。耳の奥底に残る破裂音に近い音が響く中、紐が切れたマリオネットのように動かなくなってしまった。敵の石つぶてが飛んでくる最中に動かないミノルを見て、慌てた圭一郎がミノルを担ぎ、奥まで避難させたのだった。

『外から見た川島城が綺麗だった。そして今はその中からあの時にいた外を眺めている。』

ミノルは横になった。食事はもう2日食べていない。空腹感もなかった。自分の中で何かが失われたのだとは気づいたが、それが何なのかは分からなかった。

『全員に休息命令。最低でも1週間動くことはせず、ここに在留。食料調達は交代制。各自家を探し、体力の回復に努めよ。』

ミノルはそう伝達すると自分は一人で天守閣に引きこもった。桜の季節は過ぎており、緑は逞しく夏の到来を予感させた。

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