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YAMAGUCHI DEAD END  作者: 遠藤信彦
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高待遇のわけ 2

『徳島が持ちそうにありません。』

朝食を米一粒残さず完食したあと、お茶を飲みながら山田は小さく話した。寝耳に水とはこの事でレイジは呆気に取られた。

「対高知討伐だと思っておりました。まさか徳島とは、、、。」

レイジは手に持っていた柿の葉茶をテーブルに置き、姿勢を正し直した。国や藩は違うが、今の自分に直接命令権を持つ香川の藩主に敬意を払っている。命令が近い。

「まぁ、かしこまらんで下さい。今日や明日の話ではない。」

山田は右手の掌でレイジを制すると言った。

「徳島に置いてあるウチらの者の見によると、友ヶ島伝いから蛮人が侵入したらしいです。』

同じ日本人であるが、人の道に外れた者たちを蛮人とひとくくりにして呼ぶのが山田流だ。高知の人間は土佐の蛮人と呼ぶ。

『侵入経路から大阪か和歌山に限られますよね。』

『その通り、和歌山から船に乗ってきたらしい。』

三重や愛知に向かえばよかったのに、よりによって四国に来やがったと山田はため息を着いた。

『しかも広島だ。』

レイジは唸った。

「あの広島鬼道ですか?」

レイジは掌にうっすらと汗をかいた。広島の蛮行は聞くも耐えれない物ばかりだった。とにかく食い尽くす。農産物はもちろん、家畜も人でさえも食う。決して共生を選ばない。奪い取った土地を大切にし、農産物を育てることもしない。奪い取って喰う、それだけだった。それだけに的にされた側は恐怖でしかない。妻を、子を喰われるかもしれないのだ。

「島根や鳥取は広島を跳ね返したが、それはまだ広島が今の規模と凶暴性を持っていなかった時の話だ。」

小さな湯呑み茶碗を大事そうに両手で持ち、愛おしそうに湯面を眺めている。

「かなり組織化された喧嘩ができると聞いております。」

レイジの言葉に山田は頷いた。

「天才というか、カリスマがいるみたいだ。皆、彼に心酔している。歳は定かではない。30代だという者もいれば、アレは60代だという者もいる。」

レイジは一言一句逃さずに記憶するよう顔を近づけた。

「自殺志願者。アイツらは自殺志願者の集まりなんだ。誰かに殺されるために殺戮と略奪をくりかえしている。矛盾しているようだが、これは事実だ」

山田は1分ほど間を空け、天井に近い上方に視線をやった。レイジは言葉の続きを待った。人が活発に活動する時間になっていたが、物音ひとつ聞こえなかった。虫や動物さえも山田の言葉の続きを待っているようだ。

「その自殺志願者たちはカリスマのいうことに絶対服従らしい。もしカリスマが内臓を差し出せと命令したら、喜んで捧げる人間ばかりだそうだ。」

レイジの頭はフル回転している。どうすれば伊予を守れるかのシュミレーションが始まっている。少将としてなるべく早く手を打った方が良い。このミーティングが終わり次第、真さんを伊予に帰らせようと決心した。

「彼らが徳島に侵入して今日で11日目だ。何故か足取りが重いらしい。砦を作っているという噂もある。真偽は定かではない。分かっているのは侵略スピードが遅いということと、徳島は負け続けているということ。」

香川に到達するまではもう少し時間があると山田は言った。


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