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YAMAGUCHI DEAD END  作者: 遠藤信彦
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高待遇のわけ 1

レイジたちは香川国境に着いた。道中では何の障害もなく安全に速やかに移動できたので、改めて自国、伊予国の強さと安全性を再認識した。高知との長い国境から離れるのはいささか気掛かりであったが、前年の冷夏による米の収穫量の低下を考えると、致し方なかった。 国境付近にある小屋のような検問所が見えてきた。相手方香川が持つ検問所である。あらかじめ斥候を兼ねた連絡員を向かわせていたので問題なく通過できた。驚いたのは検問所で100人全員に握り飯を二つずつ渡されたことであり、対応の速さと大量の仕出しができるほどの備蓄と設備に驚いた。 『伝令来てから、ほんのちょっとしか経っとらんのに、こんだけ揃えとるんは、たいしたもんやね〜。』

准将である秋山好和は唸った。レイジは頷き、

『素晴らしい行動力ですね。われわれも見習わないと。』 年上である秋山に尊敬と気遣いを見せ、レイジは笑った。階級はレイジが少将なので上なのだが、歳は秋山が20歳も上である。加えて秋山が実戦にめっぽう強く、彼が何度も隊や伊予国そのものを救ってきたのを見てきたので、レイジは肚の底から秋山を尊敬していた。自然と敬語になる。 『好さん、今日はここに泊まりましょう。テントを貼って休憩しましょう。』

『高松までは、まっすぐ行っても100キロはあるけん、ちと遠いのう。こんまんま戦地に向こうたほうが、近うて楽かもしれんねぇ。』

「僕だけが高松まで出向いて、後は好さんと真さねさんに任せましょうかね。」

握り飯を頬張りながらレイジは冗談のつもりで尋ねた。

「ダメ、ダメ!アイツは頭は良いが喧嘩の踏ん張りどころを知らん。まだ少し早いわ。」

好和は斬って落とすような物言いをしたが、内心は喜んでいた。真之介(さねのすけ)は13歳も歳が離れた弟で、小さい時からとても可愛がっていた。しかも生まれつきの戦争の才能があり、戦略、作戦の立案が他を圧倒していた。好和の自慢の弟である。今年30歳になる。位は好和と同じく准将である。

『とりあえず寝てしまいましょう。明日は昼まで起きなくて良いと伝令を出します。』

そう言ってレイジはテントの中に入っていった。


少し乱暴に地面の土を蹴る音がする。まだ早朝だというのに気の利かないやつだ。こっちは行軍で疲れているのに。せっかく安全の地につき、昼まで起きなくて良いと全軍に言い渡したのに、これでは疲れが取れない。レイジはすこし腹をたてながらも軍人の癖で耳を利かせながらテントの外に神経を尖らせていた。


『山田宗一郎です。おはようございます』

レイジは飛び起きた。慌てて身支度をし、テントから飛びだした。

「おはようございます、藩主。伊代国兵隊100名到着しました。」 レイジが敬礼をしながら報告をした。

「わざわざ遠いところからよくお越しくださいました。ゆっくり休んでくださいと言いたい所でしたが、事態が変わりました。詳しい話は近くに民家を借りているので、そこで話しましょう。」 40手前であろう、少し後退した生え際を隠すように前髪を前へ流している。身長は170くらいであったが、肩幅が異常に広く、筋肉のつき方が常人離れしている。山田は席を挟んでレイジと対面した。お付きほおらず、レイジも部下を連れていないので、一対一の対面であった。 白いご飯に納豆、お味噌汁にお漬物がある。だし巻き卵に魚の煮付けまである。

「さぁ、食べて下さい、香川の米は美味いですよ!」

メガネの向こうで目を細めながらニコニコしている。レイジが手をつけないのを見て山田が先に茶碗を手に取り、米を食べた。卵焼きを頬張り、のけぞった。

「うぅ、、まい!」

見ていて惚れ惚れするような食べっぷりで、こちらまで幸せな気分になれる。レイジも茶碗を手に取り、山田自慢の米を頬張った。

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