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YAMAGUCHI DEAD END  作者: 遠藤信彦
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和歌山から

長い白髪にやはり長い髭を蓄えている。60代にも見えるし、40代にも見える。体は見事に鍛えられていて、鋼のようだ。上下を白い布で多い、なんだかギリシャ神話にでも出てきそうだ。

その年齢不詳の男性はたくさんの男達を連れて和歌山にいた。元は広島の人間だ。食べ物を探すために、生きていくために男達を従え、各地を転戦してきた。地獄と呼ばれた岡山、神戸、大阪を超え、和歌山まできた。ここ和歌山も大阪の人間に蹂躙され食い尽くされてはいたが、それでもまだマシな方だった。

『船で友ケ島に渡り、それから淡路を経て徳島に入ろう。徳島北部は神戸や大阪、南部は高知から攻められて疲弊しているはずだ。東側は案外手薄であろう。香川と違って何かが優れていると言う情報もない。まずは徳島を落とし、力を蓄え、香川を落とそう。あそこには食料が沢山あると聞いている。』

その男性が周りに聞こえるように言うと、あちこちから歓声が上がった。久しぶりに白い米が食べれると誰もが言い、みんな嬉しがった。

『和歌山の魚がこんなにも美味いんじゃけぇ、徳島の魚も格別じゃろうの。』

頭髪と共に眉毛までも剃り上げた、逞しい体躯をした男がそう言った。食料調達係のその男は潮田豪蔵といい、歳は45歳であった。

『ミノルさん、楽しみじゃねぇ。』

その潮田が謎の男に向かって叫ぶように言った。潮田が敬語を使っているところをみて、謎の男がこの潮田よりも格が上であるとわかった。年齢も上なのかもしれない。名前はミノルというらしい。このミノルと呼ばれた男は深く頷くだけで何も言わなかった。潮田はニッと白い歯を見せて笑顔を見せ、海の方に視線を向けた。ミノルもずっと海の向こうを見ている。二人が見ているこの海の向こうに徳島があるのだ。


一人の男が片方の腕を無くした男を引きずり、ミノルの前へ出てきた。引き摺っている男の方は白の上下のツナギのようなものを着ており、それには大きく広島と刺繍が施してある。短い金髪でたくさんのピアスがしてある。10代後半に見えた。

『ミノルさん、この男が言うには友ヶ島への渡航は難しいらしいです。潮の流れ的に熟練した漁師でもこの航路を選ばんらしいです。転流ていう潮の流れが一瞬だけ止むんですが、その時だけチャンスがあるらしいです。遠回りになるけど、直接徳島に行くルートを選択した方がええって言うちょりました。』

腕のない男は痛みのための苦痛を隠しきれていなかったが、それよりも自分の目の前で自分の腕を調理して食べたこの男がとても怖かった。

『たすけてえなぁ…たすけてぇ! 徳島行きたいんやったら、案内できるさかい。ほんま、殺さんといてぇな。』

『お前は俺に食われるために生まれてきたんじゃ、往生せいや!おう?』

金髪の男が凄む。その一言は腕のない男を失神させるのに十分だった。力の無くなった腕のない男は地面に力なく横たわった。

『圭一郎、ぎりぎりまで殺すな。とりあえず船が集まるまで生かしちょけ。他にも人間のおる処を知っちょるかもしれんけぇね。』

潮田が諭すように若い男に言った。一部始終を見ていたミノルだったが、終始表情を変えなかった。

『難しい方を選ぼうや。みんな早く死にたがっちょる。それに本土から隔離されている島の方が戦利品も多いかもしれんしのう。』

ミノルは潮田にそう言った。潮田は頷いた。

『早急に船を集めるけぇ、待っちょきんさいね。』

潮田は笑顔でそう言って何人かの部下を従えて離れていった。

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