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YAMAGUCHI DEAD END  作者: 遠藤信彦
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攻める1 ミノル

『喰わせろ!喰わせぇやぁ!ワりゃぁ!!』

広島鬼道と名乗る男たちが吠えた。

場所は瀬戸大橋、香川まであと100メートルの場所だった。彼らが立ち止まったのには理由があった。橋の終点、香川側に300人はいるだろうか?男たちが構えていた。男たちは鎌や日本刀、猟銃を持っていた。例外なく皆武装しているのが見える。

『広島のクソが!!人喰うて生き延びやがって!!人を辞めたんか!死ねぇや!!』

香川側も負けじと吠え返す。

ミノルは冷や汗をかいていた。猟銃の数が多すぎると思った。予想では10丁くらいだろうと高を括っていたのだが、目視で20丁は見える。弾薬はどのくらいあるのだろうか?こちらも大小合わせた小火器を揃えていたが、相手よりも少ないし、弾薬が入っていない”ハッタリ”も数丁あるのだった。

『ちょっと数が多いな・・・』

ミノルの口からそう溢れると何人かが不安がってミノルの方を見た。ミノルの戦闘能力と指揮力に心酔している奴らだ。

『引き返しますか?』

古株の潮田がそう聞くと、ミノルは首を振った。たとえ帰っても、100人の男たちを喰わせていく食料は岡山側にはない。やるしかない。たとえ負けて味方の数が減っても、それはそれで食い扶持が少なくなって助かるのかもしれない。

『このへんで死んでもいいのかもな。』

ミノルがそう言うと潮田も笑った。

『そうかもしれない。やっと死ねる。』

潮田はそう言って、お先にと言わんばかりにミノルに敬礼をし、香川側に走っていった。散弾銃を数発、発砲し名乗りを上げた。

『俺は潮田豪蔵だ!死にに来た!香川の馬鹿たれどもが!てめぇの肝臓を喰ってやる!!』

潮田は走った。駆け抜けたと言ったほうが良いのかもしれない。弾の切れた猟銃を捨て、腰に刺していた2本のナイフを両手に持ち変えた。

『うおぉ!!!!!』

その時、たくさんの銃声が鳴り響いた。1発が潮田の腹を捉えた。潮田はその場に崩れた。そしてまた何発か銃声が鳴ったが、今度はどれも潮田を捉えなかった。

『ぐふぅ、くぞぉ!!』

潮田は腹を押さえながら立ち上がり、前に進んだ。顔は笑っていた。やっと死ねると言ったのは本心なのかもしれない。そしてまた銃声がたくさん鳴った。どれも潮田を捉えない。何人かの男たちが潮田の後を追った。爽やかな顔をしている。もう人間を食うくらいなら、闘いの中で生を感じながら死んでいく方がマシだと思っているのだろう。顔には笑みが浮かんでいた。

『山本圭一郎だ!!誰でもいい、サシで勝負せぇや!!』

『五味和治だ!こいやぁ!』

次々と名乗っている。自分が生きた証を残したいのだろう。誰でもいい、こんなクソみたいな世の中になったが、たとえ敵でも自分の名前を聞いてもらいたい。少しの間でもいい、覚えてもらえたらという願いがこもっている。

香川の男たちは皆無視をした。数で優っているので当たり前だろう。誰も一歩前に出て闘うことはなかった。皆、銃で、弓矢で狙い、石を投げた。しかしどれも相手を捉えなかった。もともと動いている相手に命中させるのはプロでも至難の業だ。経験のある猟師や弓道有段者でも仕留めるのは難しいだろう。

『一番乗りじゃぁ!!』

撃たれて腹を抱えて走るのがゆっくりになった潮田を山本が抜き、香川の防御陣に一人突っ込んだ。大金槌を振り回し、数人の頭を吹き飛ばした。会心の一撃に山本は歓喜した。生きている、生きているぞと叫びながら突進した。

『パァーン。』

乾いた音がなった。警察で使われていた38口径の音だった。山本の眉間に穴が空いた。

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