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YAMAGUCHI DEAD END  作者: 遠藤信彦
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大漁 2 伊予国 レイジ

レイジはおじさんの家に居候している。

家は漁港まで歩いて5分、そして白く長く続く砂浜までは歩いて10分のところにあった。おじさんの祖父の代からの家で、見た目は古いが太くてしっかりした柱があり、広くて天井が高い平屋だった。おじさんには家族はいないので、この広い家を二人と居候の猫二匹と暮らしている。家の大きさに対して庭は広くなく、庭の代わりに車が2台余裕で入る車庫があった。車庫の中には漁で使う道具が所狭しと並べられている。釣竿も少なくない数が並べられているので、仕事でも趣味でも海に出て魚を狙うのだろう。

おじさんは田中義雄という立派な名前があったが、”どこにでもある名前”と本人は嫌っており、レイジにはおじさんと呼ばせた。

『レイジ、何になりてぇんじゃ?漁師じゃのうても、好きなもんになりゃええんぞ。国の決まりで、子供も働かんといけんけんど、勉強は自由じゃ。やりてぇんじゃったら、どんだけでもやりゃええんじゃ。なんせ、この国の大統領は、子供の教育にやたら気ぃ入れとるけんのぅ。特にできるやつには、なおさらじゃ。』

おじさんは毎日のようにレイジに勉強したほうが良いぞと促した。レイジも勉強ができる方だったので嬉しがって勉強した。おじさんはレイジには政治家や学者などになって欲しいと期待したが、レイジにはなりたいものがあった。それは軍人だった。軍人になって、偉くなって山口の奴らに復讐するのだと決めていた。できれば軍で一番偉くなって自らの指揮で山口に攻め込みたいと思っていた。そのためには何が必要なのかは分からなかったが、勉強ができることが必須だとは分かっていた。

『僕は伊予で一番勉強ができるようになりたい。もちろん漁師も頑張る。漁師飯が美味しいから』

伊予弁を上手にまだ使えないレイジは標準語でおじさんにそう伝えていた。本当のことは黙っておいた。おじさんは疑うこともなく、とても喜んだ。そして勉強に集中できるように部屋と机を与えた。

毎日の学校は2時限しかない。それも労働の後で集中が難しい。レイジは眠たい目を擦り、机に齧り付く日々を送る。そして勉強が終わると目を瞑り、夢想する。かっこいい軍服を来て1万の四国の男を引き連れて海を渡る。レイジの号令で一斉に砲弾を打ち込む。次の号令で一斉射撃をする。山口の男たちは成す術なく、その銃弾によってチリのように細かく切り刻まれていく。ゴミのようになった山口の男たちをレイジはその軍靴で踏み躙る。軽蔑の目で見下ろし、唾を吐きかける。

『地獄に堕ちろ。』


鼻から息を大きく吸い込み、肚で溜め、少し待ってからゆっくりと口から吐き出す。学校で習ったばかりの精神統一の呼吸法だ。俺は絶対に負けないとレイジは毎日強く誓う。山口の人間だけは絶対に許さない。

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