召集 3
『たまには両親に会えますか?』
寂しさを隠せないで少し目が潤んでいる。とても美しい顔立ちだ。ピンと伸びた背筋が彼女の神々しいオーラを更に際立たせている。ケンジはお人形さんのように美しい少女に目を奪われた。実家がある街でも外国人はたまに見たが、彼女は別格に美人だった。
小瀬谷校長、いや、塾長がにっこりと笑って説明した。
『もちろん、会えるよ。会いたいときに会えばいい。この塾ではなにも強制はしない。リカくんだったね?リカくんが自ら勉強したいと願い、強い意志を持ってここで勉強さえしてくれればそれでいい。』
リカはそれを聞いてとても安心したように頷いた。
『わたし、たくさん勉強します!!たくさん勉強して本当の看護婦さんになるの!』
大きな目をさらに大きくさせてリカは塾長に言った。
とても良い目標ですね、きっと成れると思います、看護婦さんは正義の味方だと塾長はリカに微笑んだ。
小瀬谷塾長は12人の生徒全員に挨拶、自己紹介するように促した。もうすぐ9歳になるケンジが最年少で、48歳になる大石力弥が最年長だった。
『ケンジです。8歳です。元気です。』
『リカです。9歳ですが、来月10歳になります。看護婦さんになりたいです。』
『大石力弥です。たぶん、、、というか確実に最年長ですね。ここには自分から志願して参りました。みなさんとは同級生になるので、遠慮せず、僕のことは力弥くんと呼んでください。』
校長がうん、うんと頷いた。
『みんなも下の名前で、くん付けで呼び合いましょう。たまたまですが、重複する名前がなかったので良かった。』
それぞれ12人が自己紹介を終えた。塾長がこのあと一人づつ面談して勉強の方向性を個別に決めていくので、呼ばれた人だけが校長室に、それ以外の人はこの教室で自由待機とするようにと伝え、力弥と共に教室を出て行った。
残された者同士でポツポツと雑談し始めた。リカが年齢の近いケンジに近づいてきて改めて挨拶した。
『わたし、リカ。』
『ぼくケンジ。』
『ねえ、ケンジくんはどこから来たん?わたしはね、下関に家があったんじゃけど、福岡からの人が怖いけぇ、小郡に疎開しちょったの。そこでは看護婦さんの補助をしていたのよ。』
お人形のように美しい顔立ちの女の子が山口弁を喋っている奇妙さにケンジはしどろもどろになりながら、なんとか言葉を繋いでいった。
『家は徳山にあったんじゃけど、工場が多くて空襲が怖いけぇ、じいちゃんとばあちゃんと一緒に鹿野に疎開しちょった。カエルの養殖の仕事をしちょった。』
『あっ!わたしカエルの唐揚げ大好き!鹿野と長門と田布施の養殖場があって、どれが一番美味しいかいつも議論になってた!』
リカは大きな目をキラキラさせて、ケンジに育て方を聞かせてとせがんだ。ケンジはカエルの味を褒められたことに気を良くし、説明を始めた。カエルの味は食べ物、つまり餌に左右されることが大きく、、、とケンジが得意気になって話していると、力弥が帰ってきてケンジの番だから急ぐようにと言った。
『もう、せっかくいいところだったのに!リカちゃん、じゃお先にね。あとでカエルの美味しい食べ方も教えるね。』
ケンジはそうリカに言って校長室に急いだ。




