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YAMAGUCHI DEAD END  作者: 遠藤信彦
14/46

撃て

大きな閃光が見えた。なんども見えた。音は少しだけ遅くやってきた。雷のようだと思ったが、キノコのような雲を作ったので、それが爆弾だと理解した。

下関から北九州が空爆にあったのが確認できた。それと同時にYAMAGUCHI藩内に戒厳令とケタタマシイ、サイレンが鳴った。

『沿岸警備に重点を置け!』

『大人は24時間待機じゃ!!』

まだあどけない顔をした少年たちは動揺を隠せないでいた。なぜならYAMAGUCHIでは14歳で元服、立志式を終えると大人となる。その”14歳の大人たち”も老人たちと混ざって警備につくために移動を始めた。

『沿岸警備に行くぇ、女の子を頼むぞ!!』

リカの住む小郡からも救援部隊が組織された。近所のタダシ兄ちゃんが銛を持って大人たちと海に向かって行った。福岡から山口に向かって船やボート、泳ぎで渡航する奴らを返り討ちにするためだ。小郡と下関では距離があるが、人はどこから上陸するか分からない。万一上陸されたら、藩内で被害が出るのは目に見えている。リカは胸に手を合わせ、どうかタダシ兄ちゃんや、近所の叔父さんたちが福岡人に食べられてしまわないように祈った。

4ヶ月前に食料に困った福岡人が大量に山口に渡航しようとした。山口藩人は決死の覚悟でこれを阻止した。福岡人は狂人の如く、殴られ、銃で撃たれても山口に侵入しようとした。獣や人を喰らい、生き延びていくのが嫌になったのだろう。’助けてくれ”、”受け入れてくれ”、そう叫びながら棒切れや石斧を振り回した。山口藩人はこれを冷静に、そして組織的に駆逐していった。いくつかの被害が出たが、死者は二人に抑えられた。戦いの組織的訓練を定期的にやっているおかげだった。

今回は福岡に大きな爆弾が何発も落ちたので、この4ヶ月前に起こった事件の時よりもさらに多くの福岡人が山口に向けて渡航することが予想された。絶対に防がなければならない。



『撃て!!撃て!!怯むな!!撃ち殺せ!!』

爆弾が落ちて最初の7日間は門司と下関間で血みどろの戦いが続いた。

福岡人にとっては爆弾で死ぬか、希望を捨てずに危険を冒してでも他県に渡航するかの二択だった。どっちにしても死ぬのならば、爆弾にやられるより、勇気を持って前に進んだ方が良いと判断したのだろう、何千という人で海峡は埋め尽くされた。

『絶対に山口に入れさせんなや!』

守り手の山口の狙撃班が叫び、味方を鼓舞する。弾薬をあまり無駄にできないので、半数は弓矢を使っていた。福岡人は小さなボートやサーフボードを使って海峡を渡ってくる。小さな木片に捕まりながら海を渡ろうとする者もたくさんいた。山口の銃弾、そして矢が降り注ぐ雨のように海に向け発射された。海はどこを見ても渡海者で埋め尽くされていたので、撃てば当たる状態だった。たくさんの悲鳴の中、どんどん人が海中に沈んでいく。大きく山口人を罵る声、恨み節を唱える声、痛みを訴える声、悲鳴が続く。山口の狙撃は容赦なく、的確であったが、渡海をする者の数に対して圧倒的に少なく、大勢の福岡人たちが渡海できた。

砂浜では剣道の心得がある者が真剣を手に取り、待ち構えていた。3人で1組のグループを作り、必ず三対一の状況を作り、闘った。相手は渡海してすぐで疲労困憊、武器も持っていない福岡人だったので、難なく倒せた。

『油断せんなや!油断せんなや!三対一を崩すな!必ず一人一人、確実に始末していくんじゃ!』

老齢の剣道高段者が指揮をとっていた。山口の防衛戦、生命線は自分達にあると自覚している。鬼の形相で福岡人を次々と斬っていった。

『母を思え!妹を想え!お前らが守るんじゃ!!』

山口の男は皆、福岡人を躊躇なく仕留めて行った。




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