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YAMAGUCHI DEAD END  作者: 遠藤信彦
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カワイイ看護婦さん2

鏡を見る。

鏡をじっと見る。


リカの顔はみんなとは違う。大きな黒目は少し緑がかっている。まるで黒曜石のようだ。白目の部分はミルクのように白く、濁りもない。緑がかった黒色と白色とのコントラストが両方を際立たせている。リカの鼻は高い稜線を引き、おでこやほっぺから独立して聳え立つようにある。大きな耳はまるでパラボラアンテナだ。どんな小さなささやき声でも拾ってしまいそうだ。耳の大きさに対して耳たぶは小さく、全体をシュッと見させる。その対比がおもしろい。顎は小さく、綺麗な逆三角形で長い首や短い黒髪と相まって、彼女の雰囲気を高貴な印象を与える。人によっては彼女に対して近づき難い印象を受けるかもしれない。

『人とは違う顔』

リカは鏡をじっと見る。自分の顔を観察することによって自分を深く知ることができるだろうか?リカは本当の両親を知らない。乳幼児の時に赤ちゃんポストの中で保護された。その時分の髪の色は茶色で、目の色は少し青色が入っていた。10歳になるまでに目の色や髪の色が何度も変わってきたことから、かなりの種類の混血児だということが自分でもわかる。3年前の自分と今の自分は同一人物だとは思えないほど変わっている部分が多々ある。

リカは裕福な家庭に引き取られた。父親は日本人で、母親には日本と韓国とデンマークとの血が入っている。

リカの両親は60歳に近い年齢の時にリカを引き取った。下関の関門橋が見える、丘の上にある大きな屋敷でリカを育てた。実子は二人いたが、両人とも25歳を過ぎて独立していた。両親はもちろん、兄と姉もリカを溺愛した。

リカが溺愛された理由に、明らかに知能が高いこと、類い稀なる美貌を持っていること、そしてイタズラ好きな一面があることだった。運動はあまりできる方ではなく、ドジなところがあるのが、彼女の可愛さに拍車をかけたのかもしれない。

鏡をじっと見ている。

リカはそばかすが一つ増えているのを確認してため息をついた。今年になって4つも増えている。このペースで行くと顔中そばかすだらけになる。それでなくとも日本人離れした顔をしているので、顔をじっと覗き込まれることが多いのに、綺麗でない肌を見られるのが我慢できないと思った。好きな異性はいなかったが、それでも女の子なので見た目はとても気になっていた。せめて日焼け止めがほしかったが、しばらく見たことがない、贅沢品だった。

リカは頭が良かったので、今の日本とYAMAGUCHIが置かれている状況を理解できていた。もしかしたら自分を含めたこの日本とYAMAGUCHIの共同体が明日、今日にでもなくなるかもしれないということを。


『私は結婚ができるまで生きていられるのかしら?』

リカは目を瞑る。そして想像する。自分がウエディングドレスを着て、養父おとうさんと腕を組み、新郎の前に出るのを。養母おかあさんは着物を着ている。そばに立って私たち二人を見守っている。目をハンカチで抑えている。ずっと泣いている。やがてリカは父の腕から時分の腕を離し、新郎に一歩近づく。その新郎は白いタキシードを着ている。背は高くがっしりしている。光の加減で相手の顔がよく見えない。

『あなたは誰?お顔を見せて?』

リカは目を瞑っている。空想に思いを寄せている。いつか平和になったら、私は結婚するのだと自分に言い聞かせる。早く迎えに来てくれないかな?


鏡の向こうにあの人がいるかもしれないとリカは注意深く覗き込んだ。

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