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竜から見た薬師

リリスは薬屋のカウンターの奥で。モカから簡単な手ほどきを受けながら。


 横の診察室で、カムイが触診し、観察し、ゴーレムスライムに質問している様子を、スノウと共に見ていた。


「これぎっくり腰だね」


「え!? ゴーレムかつスライムの特性を持つのに、ぎっくり腰になるのかい!?」


「人型だからね。腰が肝要なんだよ。この石と石の連結が悪くなってるんだ。内部がスライム状なのもあって、痛みはないだろうけど。痛くないけど、突然動かなくなった、という感じでいいんだよね?」


 カムイが聞くと、ゴーレムはこくこくと頷いている。

 

「ぎっくり腰かあ。だから先生、ゴーレムを運ぶとき痛くないかって聞いたんだな」


「うん。人間のぎっくり腰患者相手に、そんな抱え方したらとんでもないことになるからね。……っと、薬はこのあたりの調合でいいかな」


 カムイは薬棚からいくつかの生薬を取り出しつつ、

 

「リリス、そっちにある棚から、5番って書いてある薬瓶を一個とってくれるかな」


「は、はい。分かったわ」

 

 言われた通りのものを渡すと、

 

「ありがとう。助かるよ」


「い、良いわよ。このくらいの手伝いで、そんなお礼なんて」


 なのに、大真面目にお礼を言ってくるものだから、顔が微妙に熱くなる。

 

 それを隠すように、モカたちの方へ戻る。

 

「あの子、新しく入った店員さんかい?」


「そうだよ。ウチの看板娘の一人だ」


 などと背後で話しているので、更に顔が赤くなる。

 

 ただ、それと同時に、初めての手伝いをこなせたのはほっとした気持ちもあった。

 

「やったわね、リリスちゃん」


「モカさんまで……。でも、ええ。ちょっとでも手伝えたのは、嬉しいわ」


 などと思いながらカムイの方を見ると、既に調合を終えたらしく、

 

「調合完了。この薬は岩石の体にもしみこむから、効果的だよ。あとは針が打てればいいかな」


 そう言ってカムイは、自分の懐から一本の細長い棒を取り出した。長さは三十センチほどの、両端がとがっている銀色の棒だ。


「岩石の体に針? 鉄の針じゃ折れちまうと思うけど、入るのかい?」


「この針は特別性でね。岩石でも大丈夫なんだ。ミスリルですら貫くからね」


「ええ!? そんなもの、中々作れなさそうだけど、どうやって手に入れたんだ?」


「昔の仕事でね。お偉い方が色々な種族に効果が見込めるようにって、用意してくれたモノを大切に使っているんだよ。というわけで、チクっとやろう」


 カムイはそう言うと手早くゴーレムの腰に薬を塗布し、

 

 ――トンッ

 

 針を撃った。硬そうな岩石の表皮をものともせず、針は突き刺さる。

 

 そして、すぐさま針を抜くと、


「……!?」


 ゴーレムスライムは驚きの表情を浮かべ、

 

 ――バッ!

 

 と、勢いよく起き上がった。


 先ほどまで動けなかったとは思えない俊敏さで、だ。そして嬉しさを示すように、カムイと親方に抱き着いている。

 

「おおお! すげえ、もう治ったのか!」


「問題としている部分は一旦ね。ただ、触診の感じ、腰の使いすぎが原因っぽいから、しばらく安静にしていた方が良いけど――って、よしよし。元気さを示すために岩をこすりつけてこなくても大丈夫だからね」


 そんな様子を傍から見て、ふとリリスは思った。


「患者さんを診てるときのカムイって、なんだか大人っぽいわね」


 言うと、スノウも同意してくれて、


「そうですね。なんだか毒の事を語っていたり、喜んでいるときは、カムイ様は無邪気な部分が見えてましたが。今は違う気がします」


 リリスとスノウの感想に、モカも頷く。


「カムイ君は毒に対しては大分変人だけど、病人と薬に対しては真摯に向き合うし、真面目だからね。本当に善い人よ。そこは私が保証するわ」


 自分たちを拾った人が、どういう人なのか。優しい一面以外に、どんな性格をしているのか。

 

 ……知れるのは、契約した身としては、知れて良かったなあ。

 

 なんて思っていると、


「毒の爪をもった魔獣が出たって!? それは興味深いな!」


 親方と会話しているカムイが、そんな声を発した

 

「変な部分も出たわね」



【お読み頂いた御礼とお願い】


 本作品をここまでお読み頂き、有り難うございます。

「面白かった」

「この先が気になる」

「竜の子達可愛い! 続きが読みたい!」


 少しでもそう思って頂けましたら、広告の下にある☆☆☆☆☆のポイント評価、そしてブックマークの登録をして頂けますと、作者のモチベーションになります!


 どうぞよろしくお願いいたします!


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