乱入
リリスの問いに対して、
「ああ」
ヴァスキーは頷く。
確かにカムイはかなり強いが、大分、特殊な性格をしている彼が戦地にいることなんて想像がつかないのだが。
カムイに視線を向けると、彼は微笑で肯定を返した。
「まあ、俺も色々やってたからね。というか、戦場で見た時に声をかけてくれればよかったのに。俺も師匠から見た目は聞いてなかったから、ここまで気付けなかったけど。そこで顔見知りになっておけたら、今回の出会いで簡単に説明できたんだし」
カムイの言葉にリリスも頷く。
「そうよ。今回だってこんな騒動にはならなかったのに。しかもカムイの師匠とやらと友達だったんでしょ、パパ」
だったら、その時点で知り合っておいても良い筈だったろうに。
そう言うと、父は珍しく、大きく目を見開いた。
「あの時の貴様に声掛け? ……本気で言っているのか?」
それはまるで、こちらがおかしなことを言っているかのような驚きの表情だ。
……パパがそんな驚いた表情するの、あんまりないのに……。
それはつまり、カムイの発言が、父にとっては驚くほど変だという事になるのだけれど。
「カムイはかなり特殊だけど、朗らかで、社交的な性格だと思うけど。やっぱり戦場だと違ったの?」
少なくとも自分の見立てはそうだ。スノウも頷いている。
毒に対しての執着と反応はちょっとおかしいとは思いつつ、人当たりもいいし、声をかけにくいような性格でもないように見える。勿論毒に興奮しているときは別の意味で話しかけづらいが、対応は優しいので慣れれば平気だ。
そう思っていったのだが、
「朗らか……か。我はこの男が、こんな表情を取れると初めて知った。そもそも、こやつの前に立ちたくはない、と後ろ姿だけを見てもそう思ったくらいなのだから」
父はそう言った。
「え?」
リリスは驚いていた。
ヴァスキーは、デリカシーこそがないが、非常に強力な竜であることは娘であるリリスはよく知っている。
人間からも恐れられ、敬われている。そんな父が、人間に対してそんな表現をしたのを初めて聞いた。だからこその驚きだ。
「それ、って、どういう……?」
「うむ。こやつが戦場でなんと呼ばれていたかを考えれば、我が思い違うも何もない。雰囲気だけでも別人だったのだ。何せ――」
そこまで言った時だ。
――キイン
と、僅かな音が鳴った。刹那、
「伏せろ!!」
表情を険しいものに変えたヴァスキーは叫び。
自分を突き飛ばすようにして伏せさせた。そして、リリスは見た。
――ブオン!
そんな音と共に飛来した燃えるメイスが、父の右肩を吹き飛ばしたのを。
そして己の周囲に爆炎が舞い散ったのを。
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