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龍の《薬師》~最強暗殺者の《毒使い》は、捨てられた邪竜と聖竜を拾い、主として信頼されてます  作者: あまうい白一


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竜の仲直り(仮)

「いやあ、スノウもリリスも治療も済んで何よりだね」


 リリスは、野原で大の字になって倒れているカムイから、そんな言葉を貰っていた。

 なんでも先ほどのやり取りを終えた後、

 

『さすがに興奮しすぎたのでクールダウンしないとね!』


 とのことらしく。即座に倒れたのだ。

 さすがに竜と戦って何事もないわけがないのだろう。怪我とかより、興奮状況で倒れるのがカムイらしいが。

 心配したスノウが念のためと膝枕をしている。


「ホントゴメンね。私と、パパのせいで」


 対して自分の父、ヴァスキーは正座だ。


「見当違いな怒りを向けるなど、誠に申し訳ないことをした……」


 さっきから、平謝りである。


 カムイも父もお互い、見た目は結構ボロボロである。

 

 何なら周囲も荒れに荒れていて、元草原というべき土まみれの地帯になっていた。

 

 ……ジルニアさんの家が無事なのは幸いだったわね。

  

 といっても、ジルニアも外の騒ぎに気付いてはいたようで。

 

『まあ、家を吹き飛ばさなきゃ何でもいいから。あたしゃ儀式で疲れたから街の共同浴場でリフレッシュしてくる』


 と言って、出て行ってしまった。召喚獣が多いこの街で生きている人だからか、こんな騒ぎが慣れっこであるというような感じだ。

 

 こちらとしては、父親がやらかしたことなので、そういってくれるのは助かる。


 カムイもそのあたりは同じなようで、父に向って笑いながら声をかけた。


「まあまあ。お気になさらず。貴方はあまり眠っていなかったみたいだし、怒りっぽくなっているのは仕方ないことさ」


「え? そうだったの?」


「む……言い訳になるが。半月ほど不眠で探し続けたのもあり、我の思考能力が鈍っていたのは確かだ」


 ヴァスキーは額に手を当てながら言った。クマなどはないし、リリスにとっては、いつもと同じように見える父の顔であるが、


「カムイにはわかるのね」


「薬師だからね。肉体の動作だけでも、寝不足かどうか位はわかるさ。しかし、半月も不眠で探し続けたんだね」


 カムイの言葉にヴァスキーは深く頷いた。


「うむ。娘の身体はまだ小さい。竜の身体のままであれば、どこに潜んでいてもおかしくないのでな。木陰から岩の裏まで、念入りに探していたのだ」


「私、虫みたいに隠れないわよ」


 確かに竜形態の体は小さいけれど。


「まあ、普通じゃないことが起きたのだから。普通じゃない探し方をしてもおかしくはない、ってことだろうね。ともあれ、いくら強くても、竜であっても、眠らなければ判断能力は低下するし、健康でなくなれば弱くなるってことだよ」


「それは、とてもよくわかります……」


 スノウが小さく頷いて、自らのお腹に手を当てている。

 

「そうね。私たちも、契約の異常で体調を壊したら、何もできなかったものね」


 カムイに救ってもらったから今は平然としているけれども。自分たちだって体調を崩していた時はまともに動くことすら出来なかったのだ。健康は本当に大事なことだ。

 

 ……そんな体調で探しに来てくれたこと自体は、有難いことなのよね……。

 

 そういう思いはありつつ、そもそも自分が出て行ったきっかけは向こうにあるので、なんとも言い難いのだけれども。そんなふうに思っていると、

 

「すまなかった、娘よ。あの時はお前の気持ちも考えず言い過ぎた」

 

 とこちらにも頭を下げてきた。


 そんなボロボロの状態で言ってくるのは卑怯だと思いつつ、


「いいわよ、もう。パパがデリカシーがないのは分かっていたし。……しょうがないから、ちょっとだけ許してあげる。まだ怒りは燻ぶってるけど」

 

「うむ……今の我にはその対応で充分だ」


 自分たちの親子喧嘩は、大抵の場合、こうして収まる。今回は大分規模が大きいというか、自分が一番つかれたら嫌な部分をつかれたし、イレギュラーが重なったわけだけど。大体はこんな感じなのだが、


「完全に許したって言わないところが、リリスさんらしいですね」


「うん。それを邪竜さんも受け入れてるから、向こうにとっては普通っぽいね」


 ちょっとだけ落ち着いたのか、体だけ起こしているカムイとスノウがそんなことを言ってきた。どうにも、彼らにとっては普通ではないようだ。

 ちょっと恥ずかしい。


「も、もう! いいでしょ、丸く収まったなら」


「そうだねえ。とりあえず、皆無事だしね」


「ってそうよ。……カムイは本当に大丈夫なの? パパの一撃とかかなりもらってたけど」


 そう言うと、カムイは力強く頷いた。

 

「大丈夫も何も、むしろ元気になったくらいだよ。毒を食らって、幸せだったんだから」


 とてもにこにこしながら言っている。その様子を見て、ヴァスキーは目を細めた。


「……なるほど。マツリカが形作った最高傑作か。その意味が改めて分かった。かつての戦場で後ろ姿を見かけた時とは大違いだから、分からなかったが。まさか貴様が薬師をやれるとはな……」


 そしてそんなことを言ったのだ。


「かつての戦場って……パパが出張った戦争は最近だと、魔王軍との戦いだけじゃなかったっけ? そこにカムイもいたの?」


【お読み頂いた御礼とお願い】


 本作品をここまでお読み頂き、有り難うございます。

「面白かった」

「この先が気になる」

「竜の子達可愛い! 続きが読みたい!」


 少しでもそう思って頂けましたら、広告の下にある☆☆☆☆☆のポイント評価、そしてブックマークの登録をして頂けますと、作者のモチベーションになります!


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