みつけた
薬が出来て数分後に、儀式の魔法陣は完成したらしく。
俺たちはジルニアさんに呼ばれて、家の外まで来ていた。
目の前には、円形の魔法陣が光り輝く状態で出来上がっている。
ジルニアは、肩をこきこきならしながら、リリスやスノウが持つ赤い薬の瓶を見て、
「その瓶……今回も良い質の薬が出来てるようだね。流石は腕利きの薬師だ。私の儀式魔法を使い甲斐があるってもんだ」
ニカっと笑った。そして、リリスとスノウに目をやり、声をかける。
「二人はこの中に入っとくれ」
言われるがままに、薬の入った瓶を持ったリリスとスノウは魔法陣の中に入る。
「んで、カムイ。部外者は魔法陣に足を踏み入れない方が効果が出るから、出来るだけ入らないこと」
「了解。外からでも針を打って体力回復のツボとかは押せるけど、二人に何かあったらサポートに入るよ?」
「それでいい。あと陣は土を掘ると消えるくらい脆いから。そこも気をつけとくれ。アタシは家ン中の祭壇で解呪儀式の詠唱を開始するよ。魔法陣の光が強まったら薬を飲んでくれ」
そう言ってジルニアは家の中に戻って数秒後、魔法陣の光が強まった。
「始まった、のかしら?」
「うん。この調子でいくと、もう数十秒もすれば疲れてくると思うよ」
ジルニアの解呪を見るのはこれが初めてではないし、こういった方法を見るのも、何度か経験がある。
それと同じであるならば、そろそろな筈だと思っていると、
「ん……なんだか、体が熱くなってきました……」
スノウがそう言って、己の胸に手を当てた。それと同時に、魔法陣の光がさらに強まる。
「気持ち悪くはないかい?」
「大丈夫です。ちょっと鼓動が早くなっていますが。これが、お薬を飲む頃合いなんですよね」
「うん。ゆっくりでいいから飲んでいってね。具合が悪くなったら指圧とか、針で、サポートできるから。きつくなったら直ぐに言うんだよ」
「分かったわ。ありがとう」
スノウとリリスはお互いに顔を見合わせ、薬の瓶を開け、ゆっくりと口に流し込み始めた。
最初は順調に飲んでいた、のだが、
「うえ……げほっ……」
やはりというべきか、リリスがせき込んでしまった。
顔も真っ青だ。
「おっとっと。吐き出してしまっても良いよ」
「う……で、でも、勿体ないから。けほっ」
無理やり飲もうとして、しかしリリスはむせてしまっている。口の端から薬をこぼしてしまう。傍から見ると、まるで血を吐いているようだ。
「ごめんなさい……。せっかく作ってくれたのに、ちょっとこぼれちゃった」
「大丈夫さ。疲れるときに美味しくないものを飲めばそうなるのは当然だし。ゆっくり飲んでいけばいいだけだから。……こっちにおいで。落ち着くツボを押してあげよう」
そう言って魔法陣の端にリリスを呼び寄せ、背中をさする。リリスは落ち着きを取り戻したようだが、まだ、顔色は悪い。
「う……念のため、針を打ってもらった方が良いかも」
「そっか。じゃあ、とりあえず、魔力の流れを整えて気分を良くするツボに打とうか。首を傾けてくれるかい?」
「はい。お願いするわ」
言いながら、苦しそうにしているリリスの首筋に、針を刺す。魔法陣を踏まないために、長めの針だ。
それを、少しだけ、リリスの首筋に入れ込む。それだけで、リリスの顔色は若干良くなった。
……この調子なら、問題なく終わりそうかなあ。
そう思った時だった。
「私の娘になにをしている……!!」
彼方から、怒号のような声が聞こえたのは。
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