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元気になってからの話と解呪の進行状況

竜たちが店員として働き始めてから、十数日目。

 

 朝、俺はいつものように、リリスとスノウたちと共に、今日の予定を確認していた。


「今日の患者さんは、大型グリフォンだね。といっても、既に治療を終えていて、経過観察や健康のためのツボ押しをするのが主だけど。契約者は狩人さんなんだけど、ジルニアさんの知人らしくて。ジルニアさんの家で待っているらしいから、町はずれに行く準備をしようか」


「かしこまりました」


「分かったわ。……って、カムイ。前から気になっていたんだけどさ。診察時に持っていく道具の中に、時折、長い棒があるんだけど。何に使うの?」


「ああ、これかい?」


 リリスが視線を向けているのは、俺が手にしている1メートル強の棒だ。

 棒の側面には、いくつかの彫刻が入っている。

  

「これは、大型獣などのツボ押しをするときに使う棒だよ。大型獣がいつも横になってくれる訳じゃないし、立った姿勢で押した方が良いときもあるから。その時に使うんだ」


「そうだったの。普段持ち歩いているのに使わないから、何だろうと思ってたけど」


「まあね。とはいえ、腰を痛めた人がいれば杖としても使えるし、結構便利なんだよ。この前は、ミノタウロスのお爺さんに使って貰ったりしたね」


 普段使わないからと言っていつ必要になるのか、こちらでは読めないから。普段から持ち歩いているのだ。

 

「カムイさまは薬を作られるだけじゃなくて、そういったフォローをなされることが多いですね」


「薬師としてこの町に入ってきたのは、最近だからね。お客さんをつけるために、他の人がやってないサービスは何かなって探した結果だよ」


 そのお陰で、リピーターがついてきてくれるのだから、やる意味は十分にあったと思う。

 

 今から行くジルニアも、そのリピーターの一人だし。

 

「って、そうだ。どうせジルニアさんの所に行くなら、ついでに君たちの契約解除状況がどうなっているかも聞いてみようか」


 当初の予定通りに進んでいるのだとしたら、もう半月もかからずに解除できるはずだ。


 そう思って言うと、二人は顔を見合わせ、


「解除されたら私たちはどうすればいいの?」


 リリスが代表するように言ってきた。


「どうすればって、とりあえず元気にはなるだろうから。あとは君たちは何をしても良いと思うよ」


「何をしても、ですか?」


「うん。帰りたければ帰っても良いし、元の場所に送る必要があるなら送ろう。この町に残りたいなら残ってもいい。薬屋の店員を続けるならモカさんだって大喜びだし。元気になったのなら、君たちの自由に好きな事をして、好きなように行動すればいいんだよ」


「自由に……」


「好きな事をする、ですか。考えたこともありませんでした」


 二人とも難しそうな表情をしているが、


「難しく考えずに、やりたいことをやると良いよ! 俺もこの一件が終わったら、毒草と薬草採取に行くつもりだしね! ああ、楽しみだなあ!」


 俺だったらこうする、という感じで例を示して見せると。

 二人は、少しだけポカンとしたあと、顔をほころばせた。


「カムイ様みたいに、好きな事をアピールできるくらいに、やりたいことを考えてみます」


「うん。私も、そうするわ」


「よしよし。じゃあ、まとまったところで、ジルニアさんの所に行こうか!」



 街はずれのジルニアさんの店前。

 

 そこに狩人と大型のグリフォンが立っている。以前と同様であれば、今回もそれが見えてくるはずなのだが、


「聞いた話と違って、誰もいないわね」


「あれ? 本当だ」


 街から店の前まで歩いて行ったのだが、誰もいない。


 とはいえ、もしかしたら店内で待っているのかも、と思い、


「こんにちわー」


 店を訪ねてみた。すると中には、


「ありゃ、ジルニアさん一人?」


 ジルニアが、気難しそうな表情で座っていた。

 

 そして彼女は俺の顔を見るなり、


「ああ、来たかい。狩人の子から伝言だよ。『急にすみません。グリフォンがこの町に近づこうとしなくて。暴れて帰ろうとしてしまうため、一旦家に戻ります』だそうだ」


「あらら、こんなことは今までなかったのに。何か街で嫌な事でもあったのかな」


「さてね。アンタにも懐いていたのは見たから、アンタが嫌いってわけでもなさそうだけど。あるいは、この前飛竜が来たことで、何かしら匂いが残ったとかじゃないか?」


「あー、そのケースもあるね」


 召喚獣の中には、危険そうなものに近づきたがらない、警戒心の強いものがいる。狩人のグリフォンなどは、狩りに同行して、危険すぎる魔獣が出た時は撤退するようにしつけられているので、その気も強いだろう。


「まあ、そういう事なら、また日を改めてかな」


「すまないね」


「良いよ。こういうのは持ちつ持たれつだし」


 召喚獣によっては、虫の居所が悪い日があり、リスケジュールになることもままある。慣れっこではあるのだ。それに、

 

「ジルニアさんの家に来る理由も別にあった訳だしさ。この二人の解呪はどのくらい進んでる?」


 スノウとリリスに目をやりながら言うと、ジルニアは静かに頷いて、


「順調……ではあるんだけど、ちょっと厄介な絡み方をしていてね。ちょっと協力してもらいたいことがあるのさ」

【お読み頂いた御礼とお願い】


 本作品をここまでお読み頂き、有り難うございます。

「面白かった」

「この先が気になる」

「竜の子達可愛い! 続きが読みたい!」


 少しでもそう思って頂けましたら、広告の下にある☆☆☆☆☆のポイント評価、そしてブックマークの登録をして頂けますと、作者のモチベーションになります!


 どうぞよろしくお願いいたします!

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