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リカバリー

 神山明衣は藤井の傍らに立ち、右掌を藤井の額に当てた。その瞬間、明衣の大きな瞳が見開かれ、オレンジ色に輝く。額に当てた掌からエネルギーがほとばしり出て、藤井に活力を与えた。


 藤井は先ほどまでの軽い疲労感が一掃され、体が軽くなったのを感じた。これならまだまだサイコバリアの継続が可能だ。


 神山明衣が藤井の疲労回復を行う様子を見ていた石田が、明衣に向かって尋ねた。

「あんたは陽光族か?」


「ヨウコウゾク? それは何?」


 明衣の問いに、石田は「いや、いいんだ」とだけ言い、再び黙って警戒に当たった。


 渡辺中佐たちが去ってから40分ほどが経過した頃、石田は風通信で連絡を受け、その場を少し離れた。


 風通信を終えた石田が戻ってきて、神山明衣に話しかける。

「これから移動してもらいます。渡辺中佐がお待ちです」


 石田の号令が発せられた。広場に運ばれてきた時と全く同じだ。風軍兵士に囲まれた神山明衣たち、そして地軍兵士。一瞬、強い風が吹き荒れる。ふわりと宙に浮き上がり、風に運ばれて舞い上がり、彼らは再び空中を飛翔した。


 眼下には広大な林が見える。その中にくねくねと道が続き、その先には大きな建物が立っていた。建物に囲まれた広い中庭がある。林田と中村がこの世界に来た時に案内された場所だ。


 着地すると、渡辺中佐以下7人の兵士と林田が迎えに出ていた。彼らはすぐに建物内へと案内される。長い廊下を歩き、一つの部屋に通された。広さはおよそ200平方メートルほどだろうか。当初は一人ずつ別々の部屋に案内すると言われたが、神山明衣が頑なに拒否したため、渡辺は「仕方ない」と折れたのだ。


「相手をしたいところですが、臨時の会議があるので、ここでしばらくお待ちください」

 渡辺はそう言い残すと、林田を従え去っていった。林田は神山明衣たちが現れてから、感情が不安定な状態が続いていた。渡辺は、過去の経緯を簡単に聞いている。ここで一暴れされては、神山明衣たちとの話し合いになった時に不都合が生じる。そう考えた渡辺は、林田を残しておくのはまずいと判断し、彼女を連れて行き、別の任務を指示したのだ。


「結構待たされますね」

 青島孝がぼそりと呟いた。


「警戒されているから仕方ありません。いろいろ確認しながら対応しているのでしょう」

 神山明衣が応えた。


 青島孝は四石の能力を失い、精彩を欠いている。これまでの彼が、いかに能力に頼り切っていたかを物語っていた。その反動に違いない。関森由紀は、能力を得る前、いや、四石のことを知る前の彼に戻ってほしいと願った。


 




 

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