再会 1、
強い風に運ばれ、彼らが着地したのは、すぐ近くの広場だった。
地面に降り立つと、石田は一同にしばらく待つようにと告げた。神山明衣は、風を操り刃にしたり、人を空中輸送したりする石田たちの特殊能力を目の当たりにし、思わず嬉しそうな表情を見せる。
そんな明衣の様子を見た新井は、先ほど見た悪夢のような未来の光景で陰鬱となっている自分の気分と比べ、明衣の無邪気な喜びが羨ましく思えた。
30分ほど待たされただろうか。広場の向こうに馬車が2台到着し、中から9人の男女が降りてきた。彼らはまっすぐにこちらへ歩いてくる。
その中に、神山明衣は林田未結の姿を見つけた。驚きに目を見開き、「林田未結!」と叫んだ。その声を聞いた青島孝、関森由紀、関森リコもまた、驚きを隠せない様子だった。
叫ばれた林田もまた、驚いていた。神山明衣、青島孝、関森由紀。他にも名前は知らないが、特殊捜査室で見かけたことのあるメンバーがいる。さらに、以前北海道で青島孝と対峙した時に一緒にいた女もいる。そして、その女はこちらの世界でも見たことがある。
9人の中には林田の他、渡辺中佐(少佐から中佐に昇進していた)と7人の兵士がいた。
近くまで来ると、林田が神山明衣たち7人を見回しながら質問した。
「どうしてここへ?」
彼女は誰とも目を合わせようとはしなかった。目を合わせたら何をされるか分からない、という警戒心からだ。青島孝には金縛りにする能力があるのは知っている。神山明衣も何かしら恐ろしい能力を秘めているはずだ。特殊捜査室のメンバーの能力は詳しく知らないが、警戒を怠ってはならない、と林田は思ったのだ。
「こっちも聞きたい。なぜここにいる?」
神山明衣も逆に問い返した。
神山明衣と林田がそれぞれ説明しようと前へ進み出ようとした時、林田の隣にいた渡辺中佐が林田の方を向き尋ねた。
「知っている者たちか?」
「はい。以前お話しした、私がいた世界以外の世界の者たちです。ご注意ください。彼らは特殊な能力を持っています」
「警察関係者か?」
「警察関係者と、青島孝、関森由紀、あとはあの女性は顔は見たことありますが、名前は知りません」
林田は関森リコを指差した。
渡辺は神山明衣から視線を外せないでいた。神山明衣は美人顔だ。男性であれば惹かれるのも分からないでもないが、彼の視線はそういったものとは違っていた。同じ陽光族なのではないか、と引きつけられるものがあったのだ。一方、神山明衣も渡辺ともう一人、気になる者がいた。陽光軍の林中尉だ。この二人は自分と同類ではないかと、明衣は気になったのだった。