プレコグニション 1、
新井は瞑想の中で、空に黒く渦巻く無数の雲を見た。その雲から、次々と人が降りてくる。
雲から降りてきた人々は、手から火球を放ち、商店や民家を次々と燃やしていく。燃え広がる街中で、人々は逃げ惑い、黒焦げになって倒れ伏す。火球は直接逃げ惑う人々にも襲いかかり、街中は阿鼻叫喚の巷と化していた。
(見ていられない……。気分は最悪だ)
新井はそう思い、目を開いた。目を開くと同時に、神山明衣が尋ねてきた。
「どうだった?」
新井は見たものを伝えた。その光景は近い将来起きる可能性が高い。しかし、ちょっとしたことで未来は変わる。あくまで現時点での未来予知に過ぎない。
新井が瞑想を始めた時、石田はすでに太刀を抜き、「何だこれは!」と叫びながらサイコバリアを斬りつけていた。目に見えない壁の存在は彼にとって初めての経験であり、混乱しているようだった。
太刀を収めた石田は、次に神術を使うことにした。風刃を連続で放ち、兵士たちにも同じ場所を同時に攻撃するよう命じた。しかし、見えない壁は微動だにしない。
さらに強い攻撃力が必要だと判断した石田は、衝撃波を兵士たちと同時に放とうとしたが、周囲の商店に被害が及ぶ可能性があったため、ためらいを見せた。だが、その時、サイコバリアに守られた神山明衣が話しかけてきた。
「荒っぽい歓迎だなぁ」
「何だこの見えない壁は!」
石田は怒気を含んだ声で問い詰める。
「それがサイコバリアだよ」
「いろいろ尋ねたいことがあるから同行しろ」
「嫌だと言っても無理やり連れていく? できないと思うけど」
明衣が挑発的に言うと、石田は諦めたように言った。
「仕方ない。運ぶか」
石田は同行していた地軍兵士の方を振り向き、同意を求めるような言い方をした。
「そうだな。賛成だ」
同行している地軍兵士は、石田と防衛専門学校の基礎課程で2年間一緒だった。軍は違うが、今でも気の合う仲間の一人だ。
神山明衣は、同行しても良いとは思ったが、彼らがどうやって自分たちを運ぶのかという好奇心に駆られ、そのまま待つことにした。
石田の号令が発せられた。風軍兵士に囲まれた神山明衣たち、それに地軍兵士。一瞬、強い風が吹き荒れた。ふわりと宙に浮き上がり、風に運ばれて舞い上がり、彼らは空中を飛翔し始めた。