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主上の記憶 1、

 中原は御簾の向こうにいる主上に精神を集中させた。


 記憶の中に入り込み、石に関連するものを探索すると、石の記憶領域はすぐに見つかった。しかし、それは驚きの連続だった。主上の年齢は24歳ということは記憶に入り込んですぐに確認したが、石の記憶領域を探っていくと、24年どころではない。深すぎて底が見えないのだ。


 それは不滅の魂だった。石に関連する記憶は何十年、何百年、いや、千年以上も続いている。中原は高速移動で一気に記憶の始まりまで行ってみる。


 始まりは突然だった。石はすでに存在している。どのようにして石が手に入ったのかは記憶の中にない。しかし、神々から贈られたものだと記憶は伝えている。細かいことは、神々にとって都合の悪いことがあり、記憶を消しているのではないかと中原は思った。


 石は神石と呼ばれ、主上の権威の象徴でもあった。


 始まりから3世代後、双子の兄弟が生まれた。


 双子のどちらが先に生まれたのか、親にとってはどうでもいいことだった。成長していく上で、才を確認し、跡を継がせようと考えていた。しかし、それが争いの種となってしまう。


 幼い頃は兄弟仲良く遊んだ記憶を見つけた。だが、12歳頃から朝廷・貴族・豪族の中で、兄弟それぞれに派閥ができ始めた。


 兄弟は、担ぎ上げる周囲の人々に翻弄され、行事以外では顔を合わせることもなくなった。


 兄弟が17歳になった年末。雨が1週間降らず、乾燥した風が吹きすさぶ夜中に、親の寝所で火の手が上がった。兄弟は離れた場所に住んでおり、無事だった。


 親の亡骸は火の勢いが激しく、焼け焦げて判別が難しいほどだった。兄弟は悲しみに打ちひしがれたが、周りは違った。


 権力闘争に明け暮れ、兄弟は周囲の言いなりという有様だった。抗えば自分の生命が危うい。


 神石は数多あまたあり、神が宿ると言われていた(実際は宿っているわけではなかったが)。その中でも七神石が特に霊験あらたかだと言われていた。その七神石の争奪戦が激化し、最終的に三神石と四神石とに分かたれ、国を二分してのいくさが始まった。


 神石は主上以外が持つと神罰が下ると信じられていたため、朝廷内や貴族、豪族は神石を奪い去るようなことはなかった。


 戦が長引くと、怨嗟えんさ、憎悪、殺戮さつりくが満ち溢れた。田畑は荒れ、食料は不足し、国民は激減していく。日本國が滅亡に向かっていることは明らかだった



 

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