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鳥居の向こうへ

 主上への謁見が許されたのは、四石に関わる関森由紀と関森リコ、青島孝の3名。そして、もう1名が許されたのは、神山明衣の指示で中原諒二だった。


 中原、関森由紀、関森リコ、青島の4人は、渡辺中佐の先導で移動を開始した。彼らの周囲を宮内警備隊の8人が固めている。


 中原にとっては、一度意識体として通った道を歩いていく感覚だ。だが、意識体の時には足を踏み入れられなかった場所がある。その鳥居が眼前に現れた時、一行は一礼してその下をくぐった。鳥居を過ぎると、空気が一変する。ひっそりと静謐せいひつな雰囲気が漂い、自然と背筋が伸びる。関森由紀、関森リコ、青島も同じ感覚を覚えているようで、中原は彼らの表情からそれを読み取った。


 石段のすぐ手前まで来た。鳥居の少し手前では50段ほどの段数に見えたが、ここから見ると、その先が霞んで見えないほど、さらに多くの段があるように見える。まるで天へと続く階段のようだ。


 石段を一段一段、ゆっくりと上っていく。石段の左右の木々からは、小鳥のさえずりが時折聞こえてくる。石段は木々の間を縫うように、上へ上へと続いていた。


 周囲を霞が覆い始めた。そして間もなく、石段を上り詰めた。石段を上りきると、少し先に再び鳥居があった。(二重の結界が張ってあったのか)中原はそう思いながら、再び一礼して鳥居をくぐる。


 その先には石畳が続いていた。周囲が霞んでいるため、先のほうはうっすらとしか見えない。塀に囲まれた屋敷があるようだ。中原はすでに渡辺の記憶を見ているので、この先に建物があることを知っていた。


 門にたどり着くと、門番が2人、長棒を地面に立てて手にし、門の両端に立っていた。棒術の使い手だろうか。彼らは一行に向かって一礼し、「かいもーん!」と叫ぶと、門番二人は門の中ほどにある左右の取っ手を持ち、手前に引いて門を開けた。


 門の内側にも、長棒を地面に立てて手にした門番が2人立っていた。


 門の先には建物がある。それは社殿であり、神明造りと呼ばれる建築様式に酷似していた。


 建物から一人の男が出てきた。宮内省宮内大臣の松川だ。その松川が「お待ちしていました」と一礼した。


 渡辺が松川大臣に一礼し、関森由紀、関森リコ、青島、中原もそれに倣って一礼した。


 渡辺が松川大臣を関森由紀、関森リコ、青島、中原に紹介し、4人はそれぞれ名乗った。


 松川大臣は「中へどうぞ」と言って先頭に立ち、案内を始めた。渡辺が続き、中原たち4人、そして宮内警備隊8人がその後を追った。




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