謁見希望
林田未結が強化人間たちの村に帰ってから3日後、つまり昨日、林田は渡辺中佐の元に戻り、途中経過を報告した。科学技術提供の件は、強化人間たちがこの世界に大きな変化をもたらしてしまうことを危惧しているという。そのため、村議会での採決にとどまらず、さらに村民投票も行うことになったとのこと。結果が出るまでにはまだ2〜3日かかると伝えられた。
最近は、情報局内で頻繁に会議が開かれている。情報の共有が主な目的だ。内閣の招集や安全保障会議も頻繁に開かれており、会議結果によって指示が下りてきたり、逆にこちらから議題を上げたりすることもある。そして、上層部からは常に最新情報を出すよう催促が来ている状況だ。
そんな中、渡辺中佐に神山明衣たちが戻ってきたとの報告が入った。以前より一人増えているという。そして、恐れ多くも主上に謁見を求めているとのことだった。
渡辺が神山明衣の元に到着した時には、既に彼の部下7名も到着していた。敬礼で迎えられ、渡辺も答礼を返す。
渡辺は部屋の扉をノックした。中から「どうぞ」という声が聞こえる。扉を開けると、報告通り、神山明衣たちがいた。確かに一人増えている。その新顔の人物を見た時、渡辺は今までと違う感覚に囚われてわずかに身震いをした。
「主上に謁見したいと報告を受けましたが」
渡辺が問うと、神山明衣が答えた。
「いきなりで申し訳ないのですが、四石をどうするか、謁見して決めることになりました」
「なぜ、謁見が必要なのか教えてもらいたいのですが」
渡辺は訝しげな表情で尋ねた。神山明衣は正直に答えるべきか考えたので、少し沈黙の時が流れる。渡辺は少し焦れた様子だ。
「四石が七神石の中の四神石であるという確証が欲しいのです。言葉ではそう言われても、すぐには信じられません。ここにいる中原は心を読む能力があります。中原一人だけでも謁見させていただきたい」
「主上のお心を読まれると!? そんな不遜なことは許されん!」
いつもは冷静な渡辺だったが、激昂して体を震わせた。
「やはりそうですよね。私が同じ立場であれば同様の回答になります。もうしばらく我々だけで四石をどうするか検討させてください。今度は勝手に自分たちの世界に戻りませんから」
渡辺は一呼吸おいて、「分かりました」と言い、そう言うと、彼は部屋を出ていった