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強化人間の村

 林田未結は、ひっそりと横穴の中へと入っていった。


 横穴の奥深くに進むと、土の壁に巧妙に偽装されたドアが現れる。そのドアを開け、林田はするりと中に足を踏み入れた。


 中は、まさに強化人間の居住施設の建設現場だった。施設は発見されにくいように工夫されており、この世界の人間を近づけたくない。つまり科学技術を見られたくないという彼らの強い意志が感じられる。


 強化人間たちが与えられた島は、元々は無人島だった。彼らが移住したことで今までの自治体から切り離され、新しい村として誕生したのだ。村の名前はまだ決まっておらず、ようやく村議会や村長が決まったばかりという時期に、林田は帰ってきた。


 林田は知人の科学者に、この世界への科学技術提供について相談したが、それは村長に相談すべき内容だと諭された。村長は現在、建設中の居住施設を視察しているとの情報を得て、林田はここにやってきたのだ。


 林田は、強化人間の移住成功の立役者の一人だ。そのため、突然村長の視察先に現れたにもかかわらず、無下に扱われることはなかった。視察の途中から同行を許され、村長の時間が空き次第、話を聞いてもらえることになった。


 居住施設の建設は計画通りに進んでいる。特に、超小型核融合炉発電設備が設置され、必要な電力供給ができていることが、このプロジェクトが順調に進んでいる最大のポイントだった。


 村長の時間がとれ、科学技術提供について相談したところ、村長はそれが将来に大きな影響を及ぼすことであり、独断では決めかねると述べた。村議会に諮り決定すべき案件であり、差し迫った問題であるため最優先で諮るように動くとのこと。その際、林田は議会に出席して意見表明できるよう段取りをするから、思いの丈を表明するように、と村長に言われた。


 林田は「よろしくお願いします」と答え、元レジスタンスのリーダーの元へと挨拶に向かった。


 元レジスタンスリーダーの村上は、林田を温かく迎えてくれた。彼は現在、村議会議員になっているという。サブリーダーだった田中も、同様に村議会議員とのことだった。


 林田が科学技術提供の件を話すと、村上は賛同し、田中にも話して賛同を得るように手配すると、心強い言葉をくれた。

「科学者チームや科学者を支えるチーム。製造チームもいるな」

 村上は、もう科学技術提供になった場合の具体的な対応について語り始めた。林田は頷きながら、村上の言葉に耳を傾ける。


「科学技術提供というより、この島を環境に優しい工業地帯にしたらどうだろうか?」

 村上はそう提案した。


「科学技術が間違った形で使われ、環境汚染につながるような事態は避けられますね」

 林田が受けて答える。その後も、とりとめのない様々なアイデアが次々と飛び交った。


 久しぶりに、気のおけない仲間との会話だ。ゆったりと時が流れ、林田は心がほぐれ、すっきりと晴れやかな気分になった。




 



 



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