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決断

 神山一輝は、中原派遣の件で深く迷っていた。


 中原は有能な捜査員の一人であり、数多くの案件を抱えている。迷宮入り事件だけでなく、公安が対応している問題まで舞い込んでいる状況だ。果たして、「向こうの世界」の事まで対応すべきなのだろうか。


 熟考の末、導き出した答えは**「対応する」**というものだった。かつてアークが人類を都合の良い者だけ残し、不要な人間を抹殺するという事件が起きた。もしあらかじめアークの存在が分かっていれば、被害が起こる前に防げたかもしれない。


 今回の「向こうの世界」への派遣は、事件発生を未然に防ぎ、この世界の日常を揺るがすことがないようにするためではないか、と一輝は考えた。そして、対応すると決めた決定的な出来事があった。それは、林田未結が関森由紀の治療院に一瞬ではあったが、姿を現したという報告を受けたからだ。


 関森由紀が患者と向き合い治療を始めようとしたその時、林田が突然現れた。現れるとニヤリと笑い、「またな」と言って消えたという。その場にいた患者は驚きの声を上げ、しばらく興奮状態が続き、鎮めるのに時間を要したという報告だった。


 さらに、青島孝が「向こうの世界」に行ったり来たりする現象や、暗闇の中で「石を返せ」と繰り返す夢を見続けることも続いていた。


 「向こうの世界」へ出張する予定のメンバーが会議に集められた。前回出張したメンバー、神山明衣、宮本綱紀、藤井真宙、新井澪、関森リコに加え、今回は中原諒二が加わる。


 会議室内はテーブルが「ロの字型」にレイアウトされており、神山一輝が口を開いた。

「すでに伝えた通り、林田未結が関森由紀さんの治療院に一瞬だが現れた。これは、林田が我々の世界の座標を掴んだということに他ならない。私が危惧しているのは、何らかの形で『向こうの世界』の事象にこちらの世界が巻き込まれないかということだ。四石が関わっているのであれば、巻き込まれないような方策を取りたい」


「林田は逆恨みしてるかもしれないから、何か仕掛けてくるかな」


 神山明衣がぼそりと呟いた。これは、神山一輝が以前、こちらの座標を変えるように関森リコに依頼したことを皮肉っているのだ。


「あの時は、最善の策と考えたから座標を変えるようにした」

 神山一輝はムッとした表情だ。


「まあまあ。私も最善の策だったと思いますよ」

 中原が間に入ってなだめる。

「副室長も同じことをしたのではありませんか?」

 中原が神山明衣に問うと、明衣は「そうだったかもしれないけど」と口ごもった。


「前も同じ話をしたな」

 神山一輝がたたみかけるように言うと、明衣は「もう言いません」と答えた。神山明衣は神山一輝の妹だ。どうしても兄に対して甘えが出てしまうのだろう。


「それでは、『向こうの世界』への出張について話を始めよう」

 神山一輝の言葉で、出発日時、出発場所、目的、注意点など、具体的な話し合いが始まった。

 

 

 



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