7神石
「その昔、七神石という七つの石がありました。その石は、七柱の神がお創りになったと言われています。そして、今から1400年ほど前のことですが、国を二分する大きな戦がありました。その戦は、それぞれの勢力がそれぞれの主上を立てての争いとなり、主上にとっては兄弟での争いです。その際に、七神石の奪い合いも同時に起こりました。七神石は主上の力の源とも言われています。力の源なので、七神石を多く持った方がより強大な能力を持つのですが、元々の素質がないと七神石の力を効果的に使うことはできません。結局、四神石と三神石との対立になりましたが、三神石を得た主上の素質がかなり上回っており、勝利されました。四神石を得た主上は、四神石を持ったまま落ち延びていかれ、その後の行方が分からなくなりました」
渡辺は一旦話を切り、神山明衣の反応を待った。
「落ち延びた方は、その後もずっと不明ですか?」
「はい。しかし、今回あなたたちや林田さんたちがこの世界に来たことによって、並行世界があるということが分かりました。別の世界に行くことを可能にして、この世界から四神石を持って別の世界に落ち延びたのではないかと推測します」
「推測ですか……」
「推測というのはどうでもよく、あなたたちが四石と言っているのは、四神石だということが重要なのです」
「それで?」
「その四神石を返していただきたい」
やはりそう来たかと、神山明衣は思った。さて、どうするか。
「四石は青島さんが所有している物です。彼の意向を確認しないと返事はできません」
「分かりました。彼をここに呼びましょう」
青島は今、宮本たちと一緒にいるから安心だが、もしここに呼ばれることになれば、途中で一人孤立することになる。そうなれば、何をされるか分からない。
「いや、私が彼のところに行きます」
渡辺は困ったような顔をした。神山明衣は渡辺の一挙手一投足を見逃さないようにした。相手がどんな能力を持っているかはすべてを知っているわけではない。部屋に緊張が走る。
緊張したのは渡辺も同様だった。神山明衣を捕縛して人質として利用し、四神石を奪うべきか、それともこのまま行かせるかの判断に迫られていた。さらに、そもそも神山明衣を捕縛できるかどうかも不明だった。神山明衣の能力は、渡辺にとって未知なのである。