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道行き

 年を無事に越すことができて新年を迎えた。

 モナから散々言われた課題も終わらせ、新学期に向けて準備万端だ。

 そして今日。

 成人式を間近に控えたオレたち基麓(もとろく)中元3-1組の面々はとある豪邸に来ていた。

 着なれないスーツを身につけ、格好だけなら立派な成人男性だ。



 「でっ……………デケェェェェェ!!」



 目の前にある鉄の扉に度肝を抜かれる。

 心はまだまだ中学生のままらしい。



 「コーキうるさい」



 そんな俺を後ろから頭を叩くモナ。



 「俺がかつて夢見た景色はこれなんだよ。クソッ……………誇治郎の奴、いつの間にこんな豪邸に住んでいやがったんだ!」


 「ここは篠山くんの家じゃないし、ただの貸家だよ」


 「同じことだろ!こんな家を借りれるなんて、アイツはどうかしてる!!」


 「今更僻んだって仕方ないでしょ。ほらっ、もうすぐで集合時間だよ」



 モナは至極冷静で、俺の横を歩く。

 鉄の扉をくぐり、アスファルトの道を辿ると丁寧に手入れされた芝生があり辺りは噴水のような機械で水が撒かれている。

 うちのボロアパートとの違いに、心底へこむ。



 「なあ、モナ」


 「なに?」


 「オレ、宝くじ当たったら絶対この家買うわ」


 「またバカなこと考えてる」



 事実、俺がこの家を手にするためにはそんな手段しか思いつかない。

 今の大学から超優良企業に就職できる訳ないし、正攻法となると一体何年かかるか想像もつかない。

 人生を賭けたギャンブル。

 俺の手札にはそんなハイリスクなものしか残っていないのだ。



 「コーキ、ちょっと待って」


 「なんだ?」



 モナに呼び止められ顔を向ける。



 「ネクタイ曲がってるよ」



 そう言うとネクタイに手をかけ、ぐちゃぐちゃになったそれを解き、再度結び直す。



 「ほらっ、できたよ」


 「おぉ。ありがと」


 「全く、これで同窓会に参加するつもりだったの?」


 「普段スーツなんて着ないから、分からないんだよ。みんなもどーせ俺と同じだよ」


 「そんなわけないでしょ」


 「俺以上にガサツな奴は絶対いるぜ?」


 「だとしてもコーキほどじゃない」


 「モナは俺をなんだと思ってるんだ…………?」



 淡々としたツッコミにそろそろ心が折れそうである。



 「だらしがなくて、スケベで、不真面目で、エッチで、変態で─────」


 「俺はエロい奴以外の何者でもないのか!?」



 全て事実だから否定もできない。

 そしてモナは会心の一撃をかます。



 「それでも童貞。いや、だから童貞かな」


 「おいぃぃぃぃ!!!」



 何故そのことを知っているのか恐ろしい奴だ。

 見栄を張る余裕もなく、肯定するようなツッコミを入れる。



 「早く彼女作りなよ」


 「無理だと思って言ってるよな…………?」


 「まあね」


 「このヤロオォォォ!」



 俺の目からは悔し涙が止めどなく流れている。

 モナは小さく笑うだけで慰めの言葉もかけない。

 完っ然に俺をおちょくっている。

 悔しさが怒りへと変わり、モナの顔をじっと見る。



 「な、なに?」



 引き気味に問うモナ。

 顔は小さく目も大きい上に、中性的な見た目ではあるものの出るところはしっかりと出てしまるところはキチッとしまっている。

 今着ている黒のパーティードレスも、モナの奥ゆかしさを強調していて、なんだか…………。



 「……………完敗だ」



 その場で膝をつき、頭を打つ。

 これほどの完璧超人に俺が叶うところなんて何一つ見つからない。

 なのにどうして彼氏がいないのか、人類史上最大の謎と言っても過言ではないだろう。

 


 「そもそも性別が違うし、当たり前じゃん」


 「どうやったらそうなれるのか教えてくれよぉ」



 モナを見上げ、懇願するような泣きっ面で問う。



 「規則正しい生活をして、真面目に勉強してればそれなりにはなるよ」


 「ぐっ……………!」


 「あとは、ちゃんと親孝行して、部屋を片付けて、エッチな本を全部捨てて─────」


 「そ、それ以上は勘弁してくれ…………」



 モナの言葉の数々が俺の心に突き刺さる。

 すでにライフはゼロ。

 "加西 光輝 死す" と言うテロップが脳内に映る。

 

 

 「昔はクラスの人気者だったコーキが、こんな体たらくになるなんて誰が想像してたんだろうね」


 「頼むからみんなの前では余計なことは言うなよ!」


 「そもそも、私とコーキが幼馴染って知ってる人っていないんじゃない?」


 「それもそうだけど……………とにかく、他言無用だ!」


 「はいはい」



 モナに念押しし、無事に同窓会を終えることができるように心から祈る。



 「ほらっ、もうすぐそこだよ」



 俺は再びモナの横を歩く。

まだもう少しジョブは続きます(おいっ)

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