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あの頃の思い出

初めての投稿となります。


少々シリアスが過ぎるところもありますが、読んでいただけると幸いです。

 築68年のボロアパート。

 これが俺、加西(かさい)光輝(こうき)の暮らす城である。

 下を見れば雑草が生い茂り、前を見れば錆びれた外観が目に入る。

 部屋に入れば床がギシギシと鳴り、トイレはあれど風呂はない。

 ガキの頃は『大人になったらデッケェ城みたいな家に住むんだ!』って口癖のように言っていたけど、今じゃこの有様。

 まあ、Fラン大学でバイトの仕事もろくにできない人間には相応しい家なのだが。

 そんな底辺な生活を送るオレだけど、一つ他人に誇れるものがあった。



 「お邪魔しまーす」


 「いらっしゃい」



 ヒールの高い靴を脱ぎ、扉からひょこっと姿を見せるこの女。

 そう、俺の幼馴染の豊岡(とよおか)モナだ。

 艶やかで短く整えられた黒髪が特徴的で、自然体で飾らない性格をしていて怒ったところを見たことないほど至極穏やかな心を持っている。

 それに加えて国立の大学に通っている超エリートだ。

 学校は幼稚園から中学まで一緒で、家族ぐるみの付き合いがあり互いに『モナ』、『コーキ』と呼び合う間柄なのだが交際には至っていない。

 俺自身告白する勇気もない根性無し(チキン)なことと、モナ自身恋愛に全く興味がないと言っていたからだ。

 今日ここへきたのも、母ちゃんが頼み込んでのことなんだろう。

 こうして週に一回は必ずきてくれている。



 「うわっ、全然掃除できてないじゃん。まさかこれで迎え入れる気だったの?」


 「いや、できれば掃除を手伝ってもらおうかなぁと……………」



 我ながら最低な発言だ。

 モナも呆れながらため息をつく。



 「おばさんが一人暮らしさせるのを反対する理由がわかったよ」


 「掃除しようとは思うんだけど、なかなか手につかなくてなぁ」


 「はいはい、言い訳はもういいからとっとと始めるよ」



 モナはそう言い、床に散らばったゴミを片付け始める。

 オレも彼女に続き、散らばった雑誌を本棚にまとめる。



 「学校生活はどうだ?」


 「別に、普通だよ」


 「そうか」


 「コーキはどうなの?ちゃんと課題やってる?」


 「も、モチロンやってるに決まってるダロ!俺にかかればそんなモン……………」


 「やっぱり嘘が下手。目が泳ぎまくってるよ」


 「うっ……………鋭い……………」



 物心つく前からそばにいるためか、モナは俺の些細な変化によく気づく。

 中でも、俺が中学で野球部にいた時5ミリ程度だった髪を3ミリに変えた時、いち早く違いに気づいたのはモナだった。

 母ちゃんですら気づかなかったと言うのに、すごく驚いた思い出がある。



 「それに、雑誌をすぐ片付けたのも私に見られたくないエッチな本があるからでしょ?」


 「なっ!?」


 「コーキの性癖には興味ないから安心して。それに、そんなモノを見たところで今更気にしないから」


 「ま、まさかモナ……………大学で男たちとあんなことやそんなことをしたから見慣れて─────」


 「そんなわけないじゃん。みんな、コーキとは違って真面目だよ」


 「そ、そっかー。はははっ」



 大人になったとはいえ俺たちはまだ20歳。

 モナが他の男に汚されてなくてよかったとホッとする。



 「そういえば、モナってまだ実家暮らしなんだっけ?」


 「ううん。この前引っ越したとこ」


 「へぇ。とうとう独り立ちか」


 「いつまでも家にいるわけにはいかないからね」


 「確かに、母ちゃんには細かいことで怒られるし、父ちゃんには勉強しろってゲンコツされるし、家にいてもいいことなんて何もねぇよ」


 「それは全部コーキが悪いんじゃないの?」


 「そ、そんなことはない!」


 「今すぐ実家に戻ったら?」


 「俺の楽園「パラダイス」は誰にも渡さん!!」


 「私からすれば地獄(ごみやしき)にしか見えないんだけど」


 「今から楽園にするんだよ!」



 それからしばらく経ち、モナのおかげでゴミはあらかた片付き、空気も入れ替え楽園が一歩近づいた。

 一息つこうと、俺は冷蔵庫からオレンジジュースを取り出し、コップに注いだあとモナへと渡す。



 「そういえば、同窓会の招待状って届いた?」


 「招待状?」



 モナの言ってる言葉が分からず首を傾げる。



 「メール見てみなよ」



 モナの言葉に従い、携帯の電源を入れメールをみる。 

 そこには確かに基麓中元3-1組同窓会招待のメールが届いていた。



 「おお、あったあった」


 「早く返事返さないと篠山くんも困るよ」


 「ああ、誇治郎か!懐かしいなぁ」



 誇治郎こと篠山(ささやま)誇治郎(こじろう)は当時のクラスメイトで、金持ちのボンボンである。

 当時もクラスで企画をする時は奴が率先して動いていたし、この同窓会が開かれるのも納得だ。

 


 「コーキはどうするの?」


 「もちろん参加に決まってるだろ!」



 メールに参加すると打ち込み、送信する。



 「モナはいくのか?」


 「うん。久しぶりにみんなと会いたいし」


 「ふーん」



 そう話すモナだが、クラスでは無口で表情の変化もあまりなかったから誰かと親しくしてる様子は記憶にない。

 男子から『鉄仮面』とあだ名がついてるほどだったから尚更だ。



 「コーキは昔から友達多かったもんね」


 「まあな〜。野球やってて人と関わりが多かったってのがあるけど」


 「よくふざけて先生に怒られてたよね」


 「ああ。何度廊下に立たされたことか…………」


 「それでもやめないから、コーキはみんなからバカだって揶揄われてたんだよ」


 「バカで結構!みんなと楽しめたから俺はそれでよかったんだよ」


 「そっか」



 モナはそう言い少しだけ口角が上がった。

 


 「全員集合ともなれば、中学卒業以来か」


 「高校もバラバラだったからね。コーキもちゃんと勉強しとけば私と同じ高校に通えたのにね」


 「あ、あの時は野球一筋だったんだよ!高校も強豪に行ったんだし!」


 「結局3年間ベンチにも入れないまま、現役を引退。中学まではエースで4番を任されていたあの頃の輝きはどこへ行ったのやら」


 「うっせぇよ!こっちだって色々あったんだから…………」


 「マネージャーさんに手を出したとか?」


 「違う!!」

 


 モナは人前ではあまり話すことはないのだが、俺と二人でいる時は結構饒舌に話す。

 女子とも話していたようだが俺ほどではないし、男子と会話しているところなんか見たことも聞いたこともない。

 要するに、モナにとって俺がナンバーワン、オンリーワンだ。

 なんて自意識過剰なことを言うが、幼馴染という関係がなかったらこうして話すこともなかったんだろうな。



 「でも、あの時は本当に楽しかったよね」


 「ああ。みんなでバカやって、毎日がお祭り騒ぎだったよな」



 今でも思い出すあの頃の光景。

 イジメなんて起きたこともなく、男子女子関係なく仲良しで最高のクラスだったと言える。

 叶うのであれば、今の自堕落な暮らしを抜け出してあの頃に戻りたいとすら思っている。

 それ程、あの時の思い出が強く印象に残っているのだ。



 「2週間後か。待ち遠しいな」


 「その前にちゃんと課題終わらせなよ。成人になれても進級できなかったら意味ないんだからね」


 「わかってらい!」



 同窓会までにやらなければならないことが、目白押しだ。

序盤はジョブということで少しずつ過激に行きます

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