表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者に殺される運命の村人に転生してしまった。  作者: 理〜ことわり
第1章 魔女
9/22

ソフィア

魔法が使える!

この先の運命に一筋の光明を見いだしたレオン。

並列思考を使って何か出来ないか、考えるのだった。



カンカンカン

清澄な朝に木剣の乾いた音が響く。

俺は今、ソフィアと剣の手合わせの真っ最中だ。

と言っても打ち込み稽古なので、俺が一方的に受け身になっている。

手には綿の詰まったグローブ。胴にも綿の詰まったチョッキを着ている。


ソフィアは打ち込み手なので、防具は着けず軽装だ。

木剣を振るたび、ポニーテールの髪がピョコピョコ跳ね回る。


3分連続して打ち込み、2分休憩。

それを3セットこなす。


「ふーつ、やるじゃないか。」

ソフィアが汗額のを拭いながら水筒から水を飲む。

館の裏庭にある稽古場は、北側にあり斜めからの陽光が二人を照らす。


俺は、剣は得意ではない。

が、魔法の訓練で、2つの精神をコントロールする術を学び、今は難なく対処できる。

『レオン』の思考が目の前の木剣の動きと体の裁きを受け持ち、『俺』の思考が戦術を組み立て、相手の攻撃への最適解を導き出す。

並列思考というやつだ。

並列思考を使うため魔力を予め通してある。

魔力を通さないと元レオンの精神=並列思考が起きてくれないからだ。

森の魔女が予告した日まで、あと12日。

並列思考とそれに合わせた剣、槍の捌き方を磨かねばならない。

時間は余りない。


「休憩が終わったら、相対稽古をしませんか?」

俺は、そう提案した。


「相対稽古か。相手を斬るつもりで打ち込むが、それでもいいか?」

「当たったらかなり痛いぞ。」


「構いません。そちらも防具を着けてください。」


「言ったな、泣きを見ても知らないからな。」


ソフィアは、普段は柔らかな物言いだが、いざ剣を取ると言葉が勇ましくなる。

ギャップ萌えと言うやつだろうか、普段の女らしさと大違いだ。


休憩のあと、相対稽古をする。

得物は木剣だ。

相対稽古用の木剣には鉛が仕込んである。

本物の剣の重みを再現するためだ。

これだと、下手に空振りできない。

空振ると態勢が崩れるし、そもそも重い木剣をそう何度も振ると腕が疲れる。

真剣勝負は、無駄に剣を振り回したりしない。

一撃必殺が基本だ。

ただ当たると相当痛い。


ソフィアが剣を振った。

流石に、良い太刀筋をしている。

剣に勢いがあるし鋭い。

かろうじて受ける。

並列思考を使っても、受けで精いっぱいだ。

反撃する隙が無い。

2撃目はステップバックで躱す。

あぶないあぶない、もう一歩打ち込みが深かったら当たっていたところだ。

さて、3撃目をどうするかだ。

体の切れでは勝ち目がないことを悟り、対策を練る。

有効な反撃法はカウンターしかない。


3撃目が飛んでくる瞬間、俺も木剣を飛ばす。

振りぬくと、相手の剣勢の方が上なので、相手に合わさず刺突をする。

剣道でいうところの『面』に『突き』で返す要領だ。


取ったかと思ったが、一瞬ソフィアの木剣が早かった。


「負けました。ありがとうございました。」

会釈をする。


「なかなかの太刀筋だったぞ、特に最後の突きは良かった。」

そう言って木剣を収め汗を拭う。


「ふーつ」

緊張が解けたのか尻もちをつく。

まだまだ、やることがありそうだ。


「またレオンが裏番のとき稽古をしないか?」


「はい、喜んで。」


「それは楽しみだ、ではまた明後日。」

そう俺に声を掛け、その場を立ち去る。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


息を整えると、防具のグローブ、チョッキを脱ぐ。

汗がべったりだ。

木剣と、防具を仕舞うと、汗を流すことにした。


館には風呂は無い、少なくとも従者が使えるようなものは無い。

領主様やお嬢様は風呂に入っていらっしゃるのかもしれないが、見たことは無い。

シャワーも無い。館は高台にあるので水は貴重だ。

館に何か所かある井戸から汲む水が生活用水として使われている。

従者に許されるのは、井戸から自ら水を汲み、タオルに浸した水で体を清めるくらいだ。


俺は、余り使われていない木陰の中の井戸の方へ向かった。


そこには...先客がいた。


気が合うのだろうか?

2日前も図書室で一緒になったが、何とも偶然な事である。


ソフィアは井戸の前で上半身をはだけ、背中をこちら向きにしてタオルで汗を拭っていた。

ちらりと小ぶりなおっぱいが覗き隠れする。

先程のポニーテールを解き、髪を前におろしているせいか、先っちょの方は上手く隠れていて見えない。


やばいな、咄嗟に俺は引き返そうとした。

静かにあと摺りをしたと思ったのだが。小枝を踏んでしまった。


「誰だ!」

誰何の声。


「ちょ、誤解です。」

返事をする前に、木桶が飛んできた。

え、20メートルはあるぞ。

しかも良いコントロールだ。


『おい、どうする避けようか?』

並列思考が頭の中で俺に問いかける。


避けようと思えば避けられたが、それはそれであとが恐ろしい。


『いや良い、このまま知らなかったふりをしよう。」

そう並列思考に返事をし、敢えて木桶と衝突することにする。

目に火花が散って、意識が飛んだ。


このあと2日後の稽古で死ぬほど痛めつけられたのはまた別の話だ。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


午後から魔法の訓練をする。

額にたんこぶができているが、訓練に支障はない。

2日前に成功した水の魔法を繰り返し練習する。

練習のせいか一滴だった水の生成が、この2日間でコップ半分くらいまで成長していた。

やるじゃん、俺。

様になってきたところで次のステップに進むことにする。

『魔道士入門』の別の魔法を試してみる。

といっても入門書なので、本に書かれている魔法は、どれも基本の魔法ばかりだ。

初級以上の魔法を習得するには、やはり魔法の師匠の弟子になるか、学校で学ぶしか無い様だ。


物体の移動魔法を試してみることにする。

つまり水の生成魔法と組み合わせることによって、誰かに水球をぶつけることができる。

殺傷効果は無いが、牽制程度には使えるだろう。

入門書を読み、魔法の仕組みを理解し、試してみる。


「うーん、物体を動かすことには成功したが、コントロールとスピードがいまいちだな。」

水球が動く方向は合っているのだが、的に当たらない。それもゆらゆらと的に向かって動くので、馬鹿でも避けられてしまう。」

これもやはり訓練か。

俺は午後いっぱい魔法の訓練に明け暮れるのだった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


夕方の交代時間前に早い夕食を摂ることにする。

従者用食堂に入ると、メイドさんたちが遠巻きに俺を見てくる。

どこかで、朝の話が伝わったのか、引くような警戒する眼差しだ。

俺って何か悪いことをしましたっけ?

自覚はありますよ。

針の蓆にでも座らされた気分だ。

でも、わざとじゃないんです。

そう、心の中で念じつつ独り寂しく夕食を摂るレオンだった。

ソフィアさんと少し仲良く?なれました。

森の魔女との対決に向け試行錯誤をしながら成長していきます。

今後の展開をお楽しみに。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ