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勇者に殺される運命の村人に転生してしまった。  作者: 理〜ことわり
第1章 魔女
8/22

魔道士

勇者に殺される運命を持った村人のレオン。

勇者とは一体何者か。

勇者へと至る道は?

謎だらけですが、前世の記憶で何とかします。

昼休憩の交代を終え、午後から暫く自由時間となる。

もうすこし図書室で調べものをしよう。


家宰主催のミーティング後に図書室へ向かう。

図書室に入ると、中には先客が居た。

奥様付き小姓のソフィアだ。

領主の奥様イザベル様には2人の小姓が付き従う。

表向きの男性小姓リアムと世話係を兼ねる女性小姓のソフィアだ。

ソフィアは14歳、俺より2つ年上だ。

父親は騎士で、身長は170センチくらい、金髪、碧眼でスラリと伸びた手足と贅肉のない体つきだ。

胸は...ここは無駄な肉の無い引き締まったお胸と言っておこう。


「あなた、何か失礼なこと考えなかったしら?」


鋭い。女の感てやつか、声には出していないと思うが…


「いえ、ソフィア殿が図書室にいらっしゃるのが珍しいなと思っただけです。」

俺は、そう誤魔化し、なるべく胸の方を見ないよう心掛ける。


「あら、でもあなたが図書室に居ることの方が珍しいのじゃなくって。」


どうやら誤魔化せたみたいだ。

「森の魔女の件で、色々と調べているところです。」


「そう、感心ね。」


「それはそうと、ソフィア殿も調べものを?」


「お嬢様がこの秋から、公都にある寄宿舎に入られることは知っているわよね。」


そう、お嬢様は9月から、ここから200キロほど離れた公都にある学校に通われる予定だ。

公都の学校には騎士クラス、魔道士クラス、修道士クラスの3クラスがあり、入学時の試験結果によってどのクラスになるか決まる。

ちなみにお嬢様は修道士クラスに入る予定だ。

修道女として知性と教養を磨き、将来どこかの領主に嫁ぐための花嫁修業の一環のようだ。


「私も、お嬢様と同行して学校に通うことになっている。」

「お嬢様と違い、騎士クラスを目指しているので昼は別々になるけど、寄宿舎は一緒なのでお嬢様の身の回りは見ることができるわ。」


なので、俺のお嬢様付小姓のお役目も8月までとなる。


「騎士の心得やら、何か入学試験の参考になるものが無いか探しに来たのよ。」


「左様ですか、お邪魔でなければ森の魔女の件で何か手がかりらしきものが無いか、調べてもかまいませんか。」


「別段邪魔じゃないわ、私の事は気にせず遠慮なく調べて。」


俺は、女小姓ソフィア殿と図書室で調べものをすることとなった。


俺が、調べたいのは『魔法』だ。

この館に魔法を使える人間は居ない。

魔道士は貴重な存在で、魔道士になるには、魔道士学校で学ぶか、ちゃんとした師匠について修業するしかない。

ちなみに俺は、魔法を使えない。

使えないと言うか、正確には魔法を使えるように訓練されてない。

勇者と出会い、殺される運命となったからには、何か対抗手段を考えておかないといけない。

魔法はその手段の一つだ。

俺も魔法を使える可能性はあるのだろうか?


ふと、疑問に思ったことを口に出す。


「ソフィア殿。」


「何か?」


「ソフィア殿は『勇者』をご存じですか?」


「勇者ね。」

「勇者は魔と鬼が蔓延る時に現れると言われているわね。」

「不思議な力を帯び、人間の身で唯一鬼を滅ぼすことができると言い伝えられているわ。」

「でも、魔の方は勇者一人では滅ぼすことができず、勇者を助ける者の力と併せて滅ぼすと言われている。」

「ただのお伽噺かもしれないけど、いくらか真実も含まれているんじゃないかしら。」


「ありがとうございます。何か参考になる本でもあればお教え願えますか。」


「そこの『東方討魔伝』などいいだろう。読んでみてはどうだろう。」


教えてもらった本をマーキングする。

それより今は魔法だ。『東方討魔伝』は今度時間の空いた時に読むことにして、魔法に関する本を探す。


「ソフィア殿、度々すまない。」

「魔法に関する本で何か良いものは無いだろうか?」


「生憎、魔法に関しては何も教えてあげるものはないわね。」

「そのあたりの入門書でも読むと良いんじゃない。」


書棚の中をそれらしき本が無いか探す。

魔法と名の付いた本が1冊見つかった。

『魔道士入門』そのままの題名だ。

手に取る。

書見台はソフィア殿の本で占有されているので、奥から別の書見台を持ってくる。

ソフィア殿の書見台と並べて新しい書見台を設置する。


「レオン君。」


「何でしょうか。」


「公都の騎士試験のため、剣術の稽古がしたいんだが、付き合ってくれないかしら。」


「剣術の稽古ですか。槍は得意ですけど、剣術の方は余り得意ではありません。」

「それでも良かったら、打ち込みの相手をしますが。」


「もちろん、それで大丈夫よ。」

「いつから始められる?」


「明日は表番で、一日中お嬢様の身辺護衛です。」

「明後日は裏番なので、午前と午後に空きがあります。」


「そうか、では明後日の朝頼むわ。」

そう言うと書見台の本を片付け出ていった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


『魔道士入門』と書かれた書物に目を通す。

魔法を行使するには魔力と魔法の術式が必要と書かれていた。

すべての物、つまり人間、動物、植物、鉱物には多かれ少なかれ魔力がある。

普段は魔力を意識しないが魔法を行使するときは魔力の流れを制御し魔法へ変換する必要がある。


なかなか興味深い。

自分の中に魔力があるか探ってみる。

すると、前世の俺になかったものが体の奥底にあるのを感じ取れた。

これが魔力か。


本を読み進める。

魔力の制御と魔法への変換は修業によって得られる。と書かれている。


ふむ、修業か。今は無理だな。それこそ公都の学校で習わない限り無理だろう。

然しだ、理屈は理解した。

最初に魔法を発見した人間は、誰かに教えてもらって覚えたのでは無く、何かのきっかけで魔法が使えるようになったはずだ。

それが、俺にも出来ないと言う事は無いはずだ。

もう少し、ヒントが無いか探ってみよう。


魔法を行使するための条件は覚醒である、と書かれている。

覚醒?


更に読み進める。

覚醒とは先覚者(ここでは一般的に先達の魔道士を指す)によって元の精神の上に、魔法を扱う別の精神を得ること。


ん?元の元の精神の上に、別の精神。

これって、死んだ『レオン』の精神の上に俺の精神が乗っかってるって似て無いか?

ひょっとして、俺って既に覚醒してるんじゃ無いか?


何か簡単な魔術を試してみよう。

魔法が発動すれば、俺は魔道士ってことになる。


一番簡単な魔法は…

水を得る魔法

何々。

1 体の中の魔力を制御する。

2 空気中に存在する微量な魔力を感知する。

3 感知した魔力に微量の水分をまとわせる。

4 水分をまとった魔力を1点に凝縮する。

※ 魔力の範囲と凝縮量に比例し水球は大きくなる。


これか。

まずは、魔力の制御…

なんか、それらしいものが体の中から出てこようとする。

制御って、どうすんだ?

ものは試しだ。

出てこようとする魔力を自身にまとわせる。

制御できてるのか?

何か体にぼおーっと青白い何かがまとわりつく。


次は空気中の魔力感知ときた。

周りに、今まとわせている何かと同じものが無いか、『レオン』ではなく俺の精神で探ってみる。

微かにだがそれらしき物はあった。

よし、これに水分をまとわせて...


どこに水分があるんだ?

いや、元の世界の科学では、水はH2Oの化学式で表せるから、酸素と水素を融合して...

て、できるわけないじゃん。

いやいや、空気中には水蒸気があるはずだ。

水蒸気...見つけた。


さて、空気中の魔力に水蒸気をまとわせたぞ。

あとは。一気に圧縮だ。

...ポトリと一滴の水が床に落ちた。


『おめでとう、やったね。』

俺の頭の中で、どこからか声が響いた。


『お前は、誰だ。』

心の中の声に呼びかける。


『誰って、レオンの魂の抜け殻、元レオンの精神さ。』


『何の用だ、何故今出てきた。』


『レオンが死んでから、レオンの精神も眠ったままだったんだけど。』

『君が魔法を使ったおかげで、君との間にバイパス(道)が出来て目覚めたんだよ。』


『バイパス?目覚め?それはこの先ずっとなのか?』


『残念ながら、ずっとじゃないよ。』

『君が魔法を使おうとするときにしか、僕(レオンの精神)は外に出られない。それ以外は眠ったままさ。』


『だとして、君(レオンの精神)を呼び出すことに何のメリットがある?』


『そうだな、思考が二つあると考えてくれないか。』

『元レオンの思考と君自身の思考。』

『つまり、レオンの思考で武器を扱いながら、君の思考で魔法を行使する。」

『並列思考ってやつさ。』


『わかった、よく考えてみる。』

そう言って俺は魔法の行使を止めた。

すると、元レオンの精神=並列思考は静かになった。

どうも、並列思考とはこの先長い付き合いになりそうだな。


こうして俺は、魔道士となり並列思考をも手に入れたのだった。

登場人物が一人増えました。女小姓のソフィアさんです。この先もレオン君と係わっていきますので今後の展開にご期待ください。


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