レオンという名の村人
3話部分連投です
チクショウ!
もう直ぐ畑に着くってのに、領主館へ逆戻りかよ。
『レオン』って奴は巻き込まれ体質なのか?
3日間水やりをしていない、畑を遠目でながら、引き返すことにする。
俺の作物たちよ、かまってやれないが、スクスク育つんだぞ。
畑に向かってそう祝福の言葉を投げかけた。
暫く行くと、こちらに向かってくるファティマと出会った。
「今から弁当を届けるとこ。」
「でも、こんな時間に何で引き返しているの?」
ファティマは不思議そうに俺の見つめてくる。
説明しておこう、彼女は「ファティマ」、俺と同じ12歳。隣家に住む幼馴染だ。
生まれた月は1月先だから、お姉ちゃんと呼んでもいいかもしれない。
俺の両親が死んでから、畑仕事の日は、こうして弁当を届けてくれる。
もちろん、ファティマ特性の愛情たっぷり手作り弁当だ。
建前では、親父さんに弁当を届けるついでということになっているが、そういうことにしておこう。
ファティマの母親と、俺の死んだおふくろが従妹だったので、また従妹の関係でもある。
そして、ファティマは何しろデカイ!
齢12にして身長は180センチを超えている。
同じ年の少女と一緒に歩くと、大人と子供が歩いているかと目を疑うほどだ。
然し、プロポーションは悪くない。
ちょっとくせ毛の茶色の巻き髪にくりくりとした青みがかった大きな目。
手足はスラリとして伸び。出るとこは出、引っ込むところは引っ込んでいる抜群のプロポーションだ。
ただ、そのデカさのせいか。俺以外男友達はいない。
同じ年の少年と歩くと、ショタを連れたお姉さまって感じになる。いや、想像するのをやめておこう。
ファティマも心得たもので、やたらと俺をかまってくる。
意識しているのだろうか?
確か、ちっちゃなときに「お嫁さんにしてあげる。」と言ったか、言わなかったか。
まあ、俺の身長と彼女の身長とでは釣り合っているからそれはそれでアリなのかも。
デカいのはひいじいちゃんの遺伝かもしれないな。
元の俺『レオン』は筋肉馬鹿の脳筋だ。何しろ腹筋はシックスパックで見事に割れている。
ファティマもおつむは余り良くないが、気立てがよく、世話焼きだ。
一緒になれば、脳筋カップルの出来上がりてなもんだ。
まあ、先の話は置いといて。
「悪イ、急な用事ができた。これから領主館へ逆戻りだ。」
「そう、で弁当はどうするの?」
「折角作ってくれたんだ、領主館で食べるよ。」
小姓番の時、昼は領主館で用意してくれる。
だが、生憎今日は農作業の日で非番だ。メシは無い。
ファティマから籐の小折に入った弁当を受け取ると。
「それでなんだが...」
言いにくそうにはファティマに告げる。
「事によっちゃ、1日の市の日も小姓番になるかもしれねえ。」
「片が付いたら、この埋め合わせはするから、1日の市の日は俺抜きで行ってくれ。」
「そう、私にお父さんと一緒に市へ行けって言うのね。」
ファティマの親父さんは、最近酒場の後家と懇ろになっていた。
「傍から見ても、バカップルぶりがすごい。」
母親の喪があけて、そろそろ次の相手が欲しくなったようだ。
親父さんは、俺の両親が死んでから、俺の親父に代わって租税徴収官をしている。
作った作物分の税が免除されるので、比較的裕福だ。
「ご免、頼む。」
そう言うと.大きな図体をを縮こませながら、ファティマに謝罪する。
「良いわよ、次の市まであなたのパンは無しよ。おかゆ(オートミール)で腹を膨らませなさい。」
そう言い放つと、親父さんの弁当を届けるため、スタスタと歩いて行った。
「なんだって!俺のメシが、俺のメシが!」
この図体だから、燃費が非常に悪い。
これは死活問題だ。俺はファティマを追いかけようと一歩踏み出したが、諦めて領主館へと向かった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
今朝も通った正門脇から、門番に挨拶をし、館の裏へ回る。
小姓番のときのルーティーンになってる。
執事を呼び出してもらう。
執事が控え部屋に現れると、先程あった『森の魔女の伝言』の話をする。
執事は、驚愕の表情を浮かべると。「お嬢様にお伝えします。」と言ってその場を立ち去った。
「お嬢様がお待ちです。」
暫くすると執事が、お嬢様の部屋ではなく、家宰の執務室に案内する。
家宰とは、この館の事務方全般を取り仕切る、領主の家族を除くと、領内で2番目のお偉いさんだ。
勿論、騎士の称号を持つお貴族様でもある。
この部屋の中に居るのは、正面に家宰。その横の椅子にお嬢様。さらにその後ろに家宰の息子で従士の「カーター」。それと俺、執事の5人だ。
領主夫妻を除くと、実質この館を運営しているお偉い様方と言っていい。
俺は、家宰に促されるように。『魔女の伝言』とそれに至った経緯を説明する。
「ふむ。これは厄介なことになりましたね。」
家宰はその肥満気味の体を揺すりながらため息をつく。
「それでは取り合えず、兵士の数を2倍に増やしましょう。」
「それと、夜間も巡回をすることにします。」
「さらに、この件が片付くまで息子のカータをお嬢様付きとしましょう。」
「魔女を目撃したあなたにもこの館に詰めてもらいましょう。」
「この件が片付くまでの一時的な処置です。」
「何か質問はありますか?」
家宰がそう言うと、俺は促されるまま発言した。
「森の魔女について何かわかるかもしれません、なので図書室の文献を当たらせてください。」
最も至極な提案だ。
その発言を聞くと、お嬢様はこう言った。
「あなた、何者なの!」
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