生と死《2》
言葉が少なめのルーと、急かさないよう少しずつ話をしながら飯を食べ終えた後、この後彼女が暇だということなので、一緒に試合を見ることにした俺達は、会場へと向かっていた。
華焔は本体の刀に戻り、俺の腰に。
シイカは、いつものように俺の隣を歩き。
そしてルーは、ちょこちょこと歩きながら、シイカの尻尾が気になるようで、揺れるシイカの尻尾に合わせ、左にゆらぁ、右にゆらぁ、と揺れていた。
「おもしろいしっぽ」
「そう?」
「ん。るーのと、ちがう。みんなのともちがう。かっこいい」
「そう、ありがとう。ルーの尻尾も、モフモフで、あったかそうで、良いわ。きっと良い魔法も放てるわ」
「ほんと? まほー、使える?」
「勿論。尻尾を持っている以上、よゆーよ、よゆー」
「……それ、お前だけの常識じゃないのか?」
「? そんなことないわ。この子の尻尾も、私の尻尾と同じくらい、魔力が詰まってるもの」
『お前様、勿論尻尾持ち全員がそうという訳ではないが、妖狐もまた、尾に魔力を貯める種じゃぞ。この娘っ子はまだ一尾じゃが、能力が伸びていくにつれ、尾の数も増えていくはずじゃ』
「へぇ……そうなのか」
「尾のないユウハは、可哀想ね。尾があったら、きっともっと魔法使えるのに。だからユウハは、尾を生やす訓練をこれからするべきだわ」
「ゆーはにぃ、しっぽ、あったらべんり」
「そうだな。そうかもしれんが、残念ながら人間は、後天的に尻尾を生やすことは出来ないんだ」
なんか知らんが、シイカとルーは馬が合ったようで、会ってからまだ一時間も経っていないのに、もうすでに結構仲良くなっていた。
多分、俺よりシイカの方がこの子とは仲良くなっていることだろう。
……シイカの不思議ワールドな言動が移らないことを祈らんばかりである。
俺は苦笑を溢し、それからルーに言う。
「それより、ほら、ルー。そろそろ人多くなってきたから、あんまりウロウロしてると、他の人にぶつかっちゃうぞ」
するとルーは、俺を見上げ、「ん」と手を伸ばしてくる。
……これは、もしかしなくても、手を繋げってことだろうな。
慣れていないので、少々照れ臭くなりながらも、彼女の手を握ってやる。
小さく、だがとても暖かい手。
感じられる、命。
……命か。
次にルーは、反対のシイカの方にも手を伸ばし、シイカもまたその手を握ってやる。
そして獣人幼女は、少しだけだが、小さく笑顔を浮かべたのだ。
彼女の笑顔を見て、その手の温もりを感じて。
俺は、思った。
――あぁ、そうか。
生きる、っていうのは、多分、こういうことなんだろうな。
そしてミアラちゃんは、その一部が……欠けているのだろう。
ヒトが、ヒトとして生きるために重要なものが、確かに一つ、足りていないのだ。
彼女は、その欠けを強く理解していながら、どうにか埋めたいと思いながら、しかし解決することが出来ず、今日までを過ごしてきたのだ。
「ユウハ?」
「……ん、何でもない。行こうか」
「きょーぎかい、たのしみ」
「とても楽しいわ! きっとルーも、気に入ると思うの」
「そうだな。ボックス・ガーデンだと、ちょっと見せていいのか悩むとこだが、ブルームとかなら、多分楽しめるんじゃないかな」
「なんでもたのしみ」
「そうよ、ユウハ! 全部面白いわ!」
「へいへい。付いて行きますよ」




