尻尾
……部屋でユウハと先輩ら、いいね。
やっぱりその気になったので、その内書きます。
短め。
――部屋にて。
俺の腕に巻き付き、そして先っぽが機嫌良さそうに揺れているシイカの尻尾。
相変わらず感情がすぐにわかる動きである。
俺が首を左に傾けると、同じように傾け、次に右に傾けると、やはり同じように傾く。
うーん……可愛い。
もう俺には、この尻尾が恐ろしいものには到底思えない。
ペットを飼っている人はきっと、こんな気分で自らのペットを愛しているんだろうな。
何となく、ちょん、と突くと、本体から「うにゃんっ」という声が漏れる。
うにゃん。
「……えっち」
「自分から巻き付いといて、そう言われる筋合いはないぞ」
「むむ……じゃあ、すけこまし」
「お前はその言葉を、どういう意味で教わったんだ?」
前から思っていたが、お前は言葉のチョイスがおかしい時があるな。
「……しょうがない、触りたいなら、ちょっとだけよ。ちょっとだけ。ユウハだけなんだから」
別にそういう意図は一切ないのだろうが、すごくツンデレみたいなセリフだな。
「それじゃあ、遠慮なく」
俺は、彼女の尻尾に手を触れる。
滑らかな表面。
皮膚は少し厚く、弾力があり、非常に触り心地が良い。
一生こうしていたいような中毒性がある。
……多分今の俺は、シイカや華焔が俺の魔力を求めるのと、同じような気持ちでいることだろう。
そして、尻尾にある割れ目。
指を這わせ、撫でる。
戦いの際や、捕食する際にしか開かない、普通にしていたら気付けないであろう尻尾に付いている口の部分だ。
割れ目の中に指を滑り込ませると、触れるのは歯。
相手が何者であろうが一撃で噛み砕けるであろう、恐ろしい口の歯だが、こうして大人しい今は、何だかすごく可愛く見える。
さらに、触れる度にちょっとピクッと反応するのが、こう……非常に楽しい。
――いつしか俺は、その感触に夢中になっていた。
だから、意識から飛んでしまっていた。
これが、シイカの身体の一部である、ということが。
「あー……お前様よ。それくらいにしておいてやったらどうじゃ。姫様が悶えておるぞ」
「えっ」
慌ててシイカの方を見る。
――彼女は、耳まで真っ赤になっていた。
赤くなった肌。
潤んだ瞳。
ビクッ、ビクッ、と震えている身体。
今まで見たこともないような表情に、思わず心臓が跳ねる。
すぐに俺は、パッと手を放す。
「すっ、すまん」
「……ちょっとって、言ったのに」
責めるような口調。
睨むように、上目遣いになっているのが……ヤバい。
「えっち」
「わ、悪かった」
「へんたい」
「ご、ごめんなさい」
「……罰として、今日は一日、もう好きにさせてもらうから。でも尻尾に触ったら、シャーってするわ」
「へ、へい」
すると、バシッと伸びてきた尻尾が、俺の両腕を封じるように絡んでくる。
「……えっと、俺が動きたくなった場合は……」
「だめ」
「……へい」
その後、大人しく、シイカの好きなようにさせる俺。
視界の隅に、やれやれと言いたげな様子の華焔の姿が映った。
今章終了! 次章に続く!