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ミアラの授業《1》


 エルランシア王立魔法学院内部にて、『中央棟』と呼ばれる、敷地の中心に立つ建物。


 この学院はバカみたいに広く、多くの建物が存在するが、普段使われる教室や研究施設等は大体がここに集中しており、メイン校舎としての役割を果たしている


 そして俺とシイカは今、その最上階付近にやって来ていた。


「よし、来てくれたね、二人とも。待ってたよ」


 指定された研究室で待っていたのは、幼女学院長ミアラ=ニュクス。


 中央棟の、一定階層から上はほぼミアラちゃん専用区域となっているらしく、基本的には立ち入り禁止となっているらしい。


 いや、立ち入り禁止というか、魔法的な結界が張ってあって、ミアラちゃん側からの許可がなければ入れないのだとか。


 研究室内部を見渡すと、まず目につくのは、壁一面の本棚と、そこに収まった大量の本。

 流石に図書室程ではないが、それでも千は余裕で超えているだろう。


 何らかの魔法道具らしきものも多く置かれ、ゴポゴポだったりカタカタだったり稼働しており、ちょっと怪しい色の薬品がガラス瓶に入れられ、ズラリと並べられていたりする。


 色々あって雑多な様子なのだが、かと言って散らかっているといった印象はなく、物が多いながらも綺麗に整理されている感じだ。


 そして、天井から吊るされているのは……この世界の星座だろうか?


 星だと思われる幾つかの球体が、規則正しく並べられており――ん、すげーわかりづらいが、微妙に動いてるな。


 もしやこれ、リアルタイムの星座と連動しているのだろうか。


 なかなか、心躍る部屋だ。

 秘密基地、なんて言葉が頭に思い浮かぶ。


「おはようございます、ミアラちゃん」


「おはよう、ミアラちゃん。今日もちっちゃいわ」


「フフフ、私は幼女学院長だからね。いつでも小さいのさ」


 ――今日が、『魔法研究Ⅵ』という、ミアラちゃんの授業の初回である。


 この授業は、ミアラちゃんが直接声を掛けた生徒しか参加出来ないそうで、新入生で受けているのは俺とシイカ、そしてフィオのみであるらしい。


 いったい、どういう基準で選んでるんだろうな。

 少なくとも、俺がいる時点で、魔法に関する技量や知識は無関係なのだろうが。


「シイカさん、おはようございます。ユウハさんはさっきぶりです」


 朝食で一緒だったフィオは、先に来ていたようで、ミアラちゃんの次にこちらに会釈してくる。


「あなたも……ちっちゃい子!」


「言っておきますけどシイカさん、私とあなた、そこまで背丈変わりませんからね? というか、名前忘れてるでしょ! フィオです、フィオ!」


「勿論、わかってるわ。おはよう、フィオ」


「……おはようございます」


 うむ、この二人、意外と相性が良いのかもしれんな。


 彼女らのやり取りに笑っていると、研究室の奥から、書物を手にした誰かがひょっこりと顔を覗かせる。


「あら、今期は三人もいて、優秀――って、ユウハ君」


 そこにいたのは、生徒会長アリア=オーランドだった。


「! おはようございます、先輩。もしかして、先輩もこの授業を?」


「えぇ、一年生の頃に学院長様にお声がけいただいてね。そう、君が今期の……」


「お、アリアちゃんとユウハ君は知り合いなのかい。ふむ、それじゃあとりあえず、自己紹介からしようか。先輩のアリアちゃんからお願いね」


「はい、わかりました。――私はアリア=オーランド、四年生よ。一応生徒会長もやらせてもらっているから、何か困ったこととか、知りたいこととかあったら気軽に聞いてちょうだいね?」


 ニコッと笑う生徒会長さんに、少し恐々とした様子でフィオが問い掛ける。


「アリア先輩は、やっぱりオーランド家の……?」


「えぇ、そのオーランド家ね。でもまあ、この学院にいる間は爵位なんて関係ないから、普通に接してくれると嬉しいわ」


 ふむ?


「アリア先輩は、いいとこの出なので?」


 俺の質問に答えたのは、フィオだった。


「……ユウハさん、オーランド家っていうのは、このエルランシア王国の、公爵家(・・・)です。つまり、上から数えた方が早いくらいの名家ってことですよ」


 若干呆れた視線をこちらに向けるフィオ。


 常識なんだけど、という内心の思いがありありと伝わってくる視線である。


「へぇ……まあ、先輩に気品があるのはわかるが。綺麗なお嬢様って感じの」


「あら、フフ、ありがとう。嬉しいわ」


 頬に手を当て、ニコッと上品に笑う先輩。


 その横で、フィオがやっぱり呆れた様子で俺を見ながら、口を開く。


「……反応が軽くないですか、ユウハさん?」


「いや、爵位がどうのって聞いてから態度を変えるようじゃ、むしろ失礼だろ。先輩が先輩だってのは変わらん訳だし」


 と言っても、貴族というものがピンと来ていないというのは、否めない事実なのだが。

 こちとら現代日本生まれ……いや、森生まれなので。


「うん、良いことを言ったね、ユウハ君。この学院にいる間は、世俗での地位や立場は関係ない。フィオちゃんも、そこは気を付けないとダメだよ」


「……は、はい、そうですね。わかりました、気を付けます」


 その後、俺とシイカとフィオが、それぞれ自己紹介を行う。


 シイカの種族が『トーデス・テイル』とわかったところで、先輩が「やっぱりそうなの!」と興味深そうにしていたが、まあ自己紹介なのでそれ以外特に何もなく、つつがなく終わり。


 そのタイミングで、ミアラちゃんが口を開いた。


「私の授業は学年関係なく来てもらってるから、みんな仲良くしてね。もう一人、三年生の男の子がいるんだけれど、その子は外に出てるから、その内紹介するよ。君達三人は、この研究室の位置を覚えておいて。授業始まりは、基本的にまずここに集まってもらうことになるから」


 外?

 何か、現地での研究みたいなことをしてるのだろうか?


「さ、じゃあ、アリアちゃんはまた後でね。いつも通り、自分の研究を。新入生三人組は私に付いておいで。今からいいところに連れて行ってあげよう」


「? 移動するんですか?」


「ミアラちゃん、どこ行くの?」


 すると学院長は、ニヤリといたずらっ子のような笑みを浮かべ、言った。




「――宝物庫さ」


 今日も間に合ったらもう一本!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 宝物庫……!心躍りますねぇ。 ……どこぞの英雄王を思い出すな。 [一言] 今回も楽しく拝読しました。 次回の投稿も楽しみに待っています。
[一言] ミアラちゃんかわいすぎない?
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