表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
146/148

性別不明エルフ、来襲



 ゴツいガタいの、カルの親戚の叔父さんが去って行った後。


 ポツポツとお客さんが増え始め、忙しいという程ではないものの、程良く仕事をする必要があるくらいの客入りとなっている。


 お客さん方は、まず店名の『ミアラちゃんの屋台』を見て「おっ」という顔になり、次にシイカを見てギョッとした顔をし、最後に「流石この学院だな……」という顔で去って行くという流れが出来つつある。


 変わらずシイカは、他者からは恐れられる種であるらしい。


 パッと見て「トーデス・テイル」だと理解されるくらい知名度があり、だから扱いとしては本当に、龍族とかそういう、皆が知っている最強種と同じくらいの種なのだろう。


 そうして彼女と屋台を回している内に、フィオがクラスの手伝いが終え、俺達の手伝いへとやって来る。


 魔法少女服のまま。


「……今、笑いませんでしたか、ユウハさん」


「いやいや、そんなまさか」


 鋭い。


 何だろうな。シイカも同じものを着ており、それもちゃんと似合っているのだが……フィオは似合ってるとか似合ってないとかを超えているのだ。


 本物。紛うことなき本物である。


「言いたいことがあるなら言ってくださいよ。ねぇ、ユウハさん」


「可愛いぞ、その恰好」


「…………本当に言わないでくださいよ。困ります」


 俺が笑うと、フィオは唇を尖らせ、そっぽを向いた。


「……ユウハさんって、こういうところありますよね」


「そうね。私もさっきやられたから、気持ちはわかるわ」


「前から思ってましたけど、この人結構……アレですよね」


「アレね」


「何だアレって」


「アレはアレです」


「アレはアレよ」


「……そ、そうか」


 深く言及すると、負ける気がするので、やめておこう。


 ――なんて、二人と話していると、また一人、お客さんがやってくる。


「こんにちはー! それ、一つくださーい!」


 学院祭のどっかで売ってるのか、なんか仮面を被った、少女か少年かわからないような声音の小柄なお客さん。


 ……というか、待て。


 この声、覚えがあるな。


「……ルーヴァ先輩、ですか?」


「せいかーい! ちょっと前ぶり、ユウハ君! 元気そうで何より!」


 仮面の下に覗いた顔は、魔法杯で二度程戦った、男性か女性かわからないエルフの知り合い。


 ルーヴァ先輩だった。


「魔法杯ぶりです。相変わらず、性別不詳ですね。というか、狙ってますね、それ?」


 ゆったりとした、スカートにも見えるようなズボンを履き、上も、体形がわからないようなカジュアルなシャツを身に纏っている。


 すごくよく似合っているのだが、この人これ、自分が中性的に見えるのを理解して、絶対狙って着こなしてるな。


「んふふ~、その方が面白いからね! それにしても、交友期間は魔法杯だけだったのに、しっかり僕のことわかってくれるなんて、嬉しいよ! いやぁ、ちょっと照れちゃうな~!」


「先輩みたいなインパクトある人、忘れろという方が難しいと思いますよ」


「つまり、僕の存在は君の中に刻み付けられたってことだね!」


 ぐっ……あ、相変わらず、強い。


「ゆ、ユウハさん……お知り合いの方、ですか? 随分、その、濃い方ですが……」


「初めまして、可愛い恰好の君! よく似合ってるね、それ!」


「……あ、ありがとうございます」


「このエルフは、ルーヴァよ。ユウハは、男の子か女の子かわからないって言ってたわ」


「え? 女の子じゃないんですか? この方。あ、フィオです。よろしくお願いします」


「よろしくね、フィオちゃん! エルフィン法国学院の二年、ルーヴァだよ!」


「いや、それがどうもわかんねぇんだ。聞いても答えてくれないし――って、その言い方だと、シイカはわかるのか? ルーヴァ先輩の性別」


「? 当たり前よ。体臭でわかるわ」


 ……な、なるほど、元々森の中で過ごしてきたシイカなら、確かにそういうのでわかりそうだ。


「あー! ダメダメ! シイカちゃん、教えちゃダメだからね。そういう特殊技能で判断するのはルール違反だよ!」


「そう。るーるいはん? なら、黙っておくわ」


「……ルーヴァ先輩、超気になるんですが」


「……私も気になります」


「そのまま気にし続けなさい!」


 ニコニコと、楽しそうに笑うルーヴァ先輩。


 ……本当に、綺麗な顔で笑うから、わからないのだ。この人の性別が。


「……それで、先輩もエルフィン法国から、学院祭に遊びに来たんですか?」


「うん、そだね。あーでも、半分くらいは勉強かな? 魔法士の世界で知らない者がいない『エルランシア王立魔法学院』を、一度は見て来いって、何人かの他のエルフ達と一緒に送り出されたんだ」


「へぇ……先輩、魔法杯にも出てましたし、やっぱり優秀なんですね」


「うん、僕、天才だからね。色々期待されてるんだ」


 あっけらかんと、自分でそう言い放つルーヴァ先輩。


 ただ、実際そうなのだろう。魔法杯の本戦で戦った時、あの怪物のような先輩二人と張り合えてたのがこの人だからな。


 ――エルフの国、『エルフィン法国』。


 何でも、現エルフの女王がこの学院の卒業生だそうで、その関係でミアラちゃんとかなり仲が良いらしく、で、それが理由でこの国『エルランシア王国』とも友好国として長年付き合いがあるらしい。


 先輩が通ってるのは、先程言っていた通り『エルフィン法国学院』ってところだそうだが、そこも、ここでの学院生活の経験を参考にして女王が建てたそうで、今では世界に名だたる学院にまでなっているとか。

 少なくとも、世界で三本指には入るであろうという話だ。


 同じエルフであるオルガ先輩に、雑談がてらいつか聞いたことがある。


 国許にそんな有名な学院がありながら、怠惰が過ぎて、あの人はこっちまで飛ばされてきた訳だが。


「で、うーん……」


「? どうしました?」


「いや、学院の案内、出来たら誰かにしてほしいなぁって思ったんだけど、君達、明らかに仕事中みたいだからさ」


「あ、なら……午後からなら、案内しますよ? ここの三人と、あと華焔達――ええっと、まあ他にもいますが、その時俺達もゆっくり見て回るつもりだったので。いいよな、お前ら?」


「私は別にいいわ」


「私もいいですよ。エルフィン法国学院のお話、実は聞いてみたいって前から思ってたんです」


「……ホント? 何だかお願いしちゃったみたいで悪いけど、ありがとう、君達! いいよいいよ、何でも話したげる。よーし、なら僕も、今から君達の仕事を手伝って、横で笑顔で『いらっしゃいませー!』って愛想良く言うマシーンになってあげる!」


「え、あー……わかりました、お願いします。じゃあマシーン先輩、こちらにどうぞ」


「はい! いらっしゃいませー!」


「うわマシーンだ」


「……なるほど、どういう性格の方か、大体わかってきましたね」


「ルーヴァは結構愉快よ」


 変人なのは間違いないな。

 少しの間、投稿頻度落ちます! 具体的には今月いっぱい更新遅くなります! ごめんね!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] ルーヴァ先輩、振る舞いから服装まで好みすぎる。 性別不詳っていうのは、それだけで素晴らしい個性なんだ。 よく解ってらっしゃる。 [一言] 今回も楽しく拝読しました。 次回の投稿も気長に待っ…
[一言] 結局読者にも教えないのかwww
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ