閑話:初めてのショッピング
短くなっちゃったので閑話。
――馬車での騒動が一段落した後。
俺達は、目的の店の中をブラブラしていた。
それにしても、なかなかに面白い。
俺でも使い方のわかるものもあれば、全くわからないものもある。
多分そういうのは、魔法関連の品なんだろうな。
「ユウハ、これ、何?」
と、興味深げな様子でシイカが問い掛けてきたのは……何だこれ。
何かよくわからん、変な形の品だった。
文房具が置かれているところに一緒に置いてあるので、多分その一種だとは思うのだが……いや、なるほど。わかったぞ。
「フッ、わからないか、シイカ。俺には一目瞭然だぜ。これはなぁ、こうやって持って、こうすると……ビームが出るんだ」
「そう、つまりこれは、武器の一種ってことね?」
「おう、危ないからあんまり触るなよ。ケガするぞ」
「人間って意外と怖いのね。こんなものを普通に売ってるなんて」
「君達は文房具をいったいなんだと思ってるのかな?」
そこで、俺達の会話に耐えられなくなったらしいエルヴィーラが、思わずツッコミを入れる。
あ、やっぱ文房具で合ってたのか、これ。
こっちの世界の文房具、こんな変な形してんだな。
……いや、考えてみれば前世でも、特に数学で使うような文房具は変な形してたな。そんなもんか。
「……私、ユウハのことツッコミ側だと思ってたけど、実は違ったんだね」
「バカな、俺は日々繰り出される天然どもの言動を全て処理し、捌いてきた男だぜ? 学院で俺以上にその役が似合う奴はいないな」
「そうなんだ。今のその発言でむしろ疑わしくなったように思うけど」
「ユウハは面倒臭くなってくると、大分適当になるわ。今日はもう、馬車の処理をしたから、多分疲れちゃったのね」
「ボケというか、別のものを処理した訳だけど、疲れちゃったのなら仕方ないか」
疲れちゃったから仕方ないのです。
いや、実際疲れたので反応がかなり適当になっているのは否めないのだが。
「じゃあ、エル、このぶんぼーぐは、どうやって使うのかしら?」
「これはねぇ、シイカ。こうやって、こうすると――ビームが出ます」
「いや結局ビーム出てんじゃねぇか」
思わずそうツッコんでしまったところで、俺はハッと我に返る。
エルは、フッ、と不敵な笑みを浮かべ、俺を見ていた。
なっ、さ、誘われた……ッ!?
「ダメだよ、ユウハ。私、そんなに対人能力高くないんだから。一人だけ楽はさせないよ?」
「エル、お前……や、やるな」
「フフ、今日一日一緒にいて、私もちょっとは鍛えられたってことかな。二人には感謝しないとね」
「……むぅ。私、普通に使い方が知りたかったのに」
「あっ、ごめんごめん! えっとね、これはここに魔力を流し込んで、線を引いたり図形を描いたりするんだよ。魔法陣とかを書くのに使う道具だね」
「へぇ……エルは物知りね」
「う、うーん、物知り、ではないかな? その、結構みんな、使ったことのある道具のはずだから」
「よし、シイカ。次は俺に聞いてみろ。何でも答えてやるぞ」
「ユウハはそっちで、一人でビームでも出してればいいわ」
「ビームでも出してろって何」
そんな、とりとめもない会話をしながら俺達は、目的のない買い物を楽しんだのだった。




