会っていなかった生徒《2》
やばい、この話を投稿する、直前の段階の確認で気付いたんだけど、名前をオルガにすると、「勝ち取りたい、物もない! 無力なバ~カ~にはなれない!」の人になっちゃうな。
……ま、いっか!
「えっと……それで、結局オルガ先輩は、外の授業で何やってたんです?」
俺の質問に、彼は一言。
「遺跡研究だよ」
「へぇ……となると、考古学とか、そういう感じの分野の勉強を?」
「そうだね。魔法考古学の分野、と言うべきかな。僕が今回行ったのは、このミアラ様の授業の延長で、だったけど、通常の魔法考古学の授業も、ちょっと面白いから、興味があるなら取ってみるといいよ。ちょっとだけど」
そういう授業もあるのか。
ホント、面白そうなの、いっぱいあんな。
ただ、学院の一年生が取れる授業の中にはなかったはずなので、恐らく学年が上がってから参加出来るようになるものなのだろう。
そこに、アリア先輩の補足が入る。
「オルガ君は、頭の回転が本当に速くて、色んなことに『気付く目』があるのよ。この学院の生徒の中で、最も頭が良い子だろうって私は思ってるんだけど……本人のやる気が、ちょっとねぇ」
その気付く目っていうのは……魔法的な意味ではなく、単純なIQ的な意味で、か。
「またまた。僕みたいなやる気のないのより、優秀な人なんていっぱいいるでしょ、ここは。アリアさんもそうだし」
「そのやる気がもうちょっと出たら、誰も敵わないのにねぇ」
「あはは、まあ、才能がなくちゃ、それをやってはいけないなんて道理はないし、逆に才能があるなら、それをしなきゃいけないって訳でもないからね」
「良いこと言いますね、ミアラ様。そうですよね」
「うん、君に今同意されると、ちょっとなって私も思うんだけどね」
やれやれ、と言いたげな様子のミアラちゃん。
この幼女学院長に対して、ここまで我を貫けるっていうのも珍しいもんだ。
……とりあえず言えることは、この場で一番バカなのって、恐らく俺だろうな。
フィオは言わずもがな、何だかんだシイカも賢いし。普段の言動がアレなので、なかなかそうは見えないのだが。
あと、この場にいない華焔は真面目な時は賢いし、メチャクチャ頼れるので、戦闘時とかは俺の生命線であると言えるのだが、通常時は割と抜けている。
端的に言ってポンコツである。
ルーといる時なんかは、ちゃんとお姉さんって感じに見えるんだがなぁ……普段は基本的に食っちゃ寝生活だし。
で、時々「生き物斬りたい! ねー、生き物斬りたい!」とわがままを言うのだ。
こう考えると、シイカって実はしっかりしてるんだよな。
……いや、それも当たり前のことなのかもしれない。
シイカはヒト社会のことを全然知らないが、しかし今まではずっと、一人で自然界を生き抜いてきた。
身の回りのことは全て自分で行い、工夫し、日々を過ごしてきたのだ。
何もせずとも料理が出て来るような環境ではない以上、それを怠れば死ぬ環境と言っても過言ではないだろうし、しっかりしているのも当然と言えるのではないだろうか。
料理とか好きなのを見る辺り、結構家庭的だしな。
「? 何?」
「いや……お前はやっぱり、スペックが高いよなと思って」
「そう、ありがとう。ユウハは、うーんと……黒い髪が素敵だわ」
「よりによって褒めるとこがそれか」
「え、えっと、ユウハさんの、その髪の色合い、良いと思いますよ」
「おう、ありがとう。お前の角も、お前に似合っていて、可愛くて良い感じだぞ」
「え、えへへ、そ、そうですか? ありがとうございます」
お返しで褒めたら、何だか想像以上嬉しそうにするフィオ。
いや、まあ、本心だから良いんだけれども。
そんな感じで話が一段落したところで、「よし」とオルガ先輩が席を立つ。
「そう言う訳で、これからよろしく、後輩達。何かわからないことがあったら……僕じゃなくてアリアさんに聞いてね」
「そこは『僕に何でも聞いてね』って言うところじゃないんすかね」
「面倒くさいから僕には聞かないでね」
うーん、正直。
「一周回って潔いですね、オルガ先輩」
俺とフィオの苦笑にも動じず、そのまま彼は「じゃ、僕は疲れたから、寝る」と言い残し、手をヒラヒラと振って去って行った。
「何と言うか……色々と濃い人でしたね、オルガ先輩。こういう時に、自分が普通だって思いますよ」
その俺の言葉に、だがミアラちゃんを除いた女性陣が、同時に「ん……?」という顔をする。
「ユウハ君が普通……? なかなか面白い冗談ね」
「ユウハさん、残念ですけど、ユウハさんは普通じゃないですよ? もうちょっと、自分を見つめてみるといいと思います」
「ユウハ、ユウハは多分、かなり変よ? ミアラちゃんとか、カエンとか、そういう特別な子と、同じ枠ね」
「…………」
総ツッコミである。
「い、いや、俺は至って普通の男子学生のはずだ! そこまで特殊な属性は……いや、魔力は変かもしれんが、それだけだし、その他は平々凡々なもののはず! ね、そうですよね、ミアラちゃん?」
すると彼女は、慈愛の感じられる表情を浮かべ。
「大丈夫だよ、ユウハ君。個性的な子は、この学院にはいっぱいいるから。ユウハ君は、ユウハ君のままでいてくれていいんだよ」
「そんな浮くレベルで変だって言いたいんすか、ミアラちゃん。ねぇ」
一番ミアラちゃんが酷いまである。
ギンラが、我関せずといった様子でテーブルの上で丸くなりながら、「人間はいつも騒がしいな」と言いたげな様子でこちらを見ていた。
今章終了!
ようやく夏が終わったよ。
で、このペースで行くと、実際に夏になった頃に、冬の話が来るんですね、わかります。