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2:特連軍と自衛隊

 UH−1Jに搭載された無線機ですぐに全艦に人がいる可能性があると伝えられた。そこで加賀は車輌の一部を陸揚げする事を提案したが、やはり銃器の携行は許されなかった。


 『びぜん』艦尾の扉が開き、ジープと高機動車を乗せたLCACエルキャックホバー揚陸艇が上陸して車輌を陸揚げする。


「降ろすのはジープ2台と高機1台か。バイクは降ろしたのか?」


「一様2台はあるみたいです。それと…艦の隊員からこんな餞別も貰ってきました」


 ジープの荷台に布でうまく隠して運ばれてきた餞別。自衛隊が正式採用している国産小銃――――89式小銃が3挺入った木箱が2つと世界一高価なサブマシンガンとして有名な9mm機関拳銃が6丁。これだけあれば少しは応戦の使用がある。


「艦に残ったヤツラに感謝せんとな。はっきり言って拳銃だけじゃ不安だからな」


「2尉も隠して持ってきていたんですね」


 そういうと上着を上げてズボンに挟んだ9mm拳銃を出す。どうやら織田も心配で密かに銃器を携行していたのだろう。


 ジープには細川を始め3人を分譲、運転は同小隊の清原陽介陸士長がつとめ織田は89式小銃、細川は9mm機関拳銃を携行した。


 他の隊員も持ち込まれた銃器を渡し、バイク隊員には使い勝手の良い機関拳銃を持たせた。


 先ほどの道を少し回り道をして飛行場に向かったが細川は先ほどから感じる何かが気になって仕方が無かった。


 最初に感じたのは飛行場を発見した時。何かが突き刺さるような感覚、まるで監視されているような気分になっていた。


「そろそろですね」


 運転手の清原が深くアクセルを踏もうとしたそのときだった。

バンッ!

 突然放たれた銃弾。狙撃である。どこから飛んできたのかは見当がつかない。


「全車両停車!反撃に備えろ!」


 車体を盾に銃を持つ者は反撃の準備をする。


 しかし狙撃手がどこから撃って来たのかが判らないのでは無闇に固まっているのは無謀だ。細川は次の指示を出した。


「バイク隊員は急いで浜に戻って援軍を要請!俺達は来るまで移動しつつ飛行場を目指す!こっちの話を聞けないのであれば応戦も止む無しだ」


「むしろとっとと反撃に出たほうがいいですよ。俺だって狙撃なら負けませんぜ!」


 東部方面隊に敵無しと謳われている狙撃手だけあって織田は張り切っていた。


 バイク隊員が援護を連れてくるまで少なくとも15分は掛かる。しかしあの中隊長が指揮官ではどうなるかが見当もつかない。


 信用で切る人間がいるとすれば彼だけだ。かつて自分の教官を勤めてくれたあの人なら救援に駆けつけてくれると信じるほか無い。


 ジープと高機動車は速度を上げて先ほどの飛行場に到着した。しかしそこには先客が居た。


 日の丸のついた鉄帽子に古臭いボトルアクション式の小銃。先頭に立っている男は日本刀を地面に立てている。そして何より一番目に付いたのは後ろでなびいている旗。それは紛れもなく日本の国旗であった。


「待ってくれ!我々は日本人だ!」


 通じたかどうかはわからないが、先頭に立っている男が声を張り上げてこう叫んだ。


「大日本帝国ラオス島特連合軍陸戦隊指揮官、上杉重三大佐である!」


 ラオス島?特連軍?訳もわからない言葉に動揺する隊員達。しかしその中で細川はラオス島という言葉に反応した。祖父が自費出版で書いた自伝小説にそんな島の名前があったのを思い出したのだ。


「貴様らは一体何者だ!?外見や言語からすれば日本人に見えるが、持っている銃は米軍の物ではないか」


「先ほども申し上げたように我々は日本人です!我々は日本国陸上自衛隊ヤキマ演習部隊のものです。自分は演習部隊第2小隊隊長の細川和也2等陸尉です」


 すると向こうの特連軍と名乗る兵士達がざわめきだした。


「日本国?自衛隊?……」


「我々に攻撃の意思はありません。ですから銃を収めてください」


「………良かろう。全員銃を降ろせ!」


 上杉の命令で後ろの日本兵達は銃を降ろした。


 それと同時に空よりこちらに向かってくる何かが見えた。自衛隊のUH−60JAと米海兵隊のAH−1Zスーパーコブラだ。


「細川2尉、手塚1尉から通信が入っています!」


「貸せ!こちら細川、増援は感謝しますが丁度話し合いに入ろうとしたところです」


『こちら手塚だ。バイク隊員から連絡を受けたときには腰を抜かしたぞ。中隊長にはしかるべき救援が必要だと言って無理矢理普通科隊員15名を連れてきたが…』


「それよりあの米軍のスーパーコブラは何なんですか?」


『米軍も情報を必要として偵察部隊を送り込んだらしい。たまたま鉢合わせて手伝ってもらおうと思ったが、必要ないみたいだったな』


 UH−60JAとスーパーコブラが着陸し、手塚と細川で事情説明に入った。


「気付いたらこの島の沖で、なるほどな。しかし日本が敗戦したと言う話は未だに信じられんな。しかしミッドウェー海戦で航空空母4隻を失った事を考えれば負けるのも当然か」


「祖父の書いた自伝小説にこの島の事も書かれていました。昭和19年の7月15日未明に忽然と姿が消えたと………」


「………3年前、突然の地震で島とその周辺の海域が飛ばされたのだ、この奇妙な世界に」


「奇妙な世界、ですか?」


「この世界は緒我々のいた世界ではない。大陸の形も文化系等もまったく違う異世界なのだ」


 突然突きつけられた答え。異世界?自分達が立っている所は自分達が元いた世界から運ばれてきたものだとでもいうのか。にわかには信じられなかった。


 しかし上杉の言う『旭日の陽炎作戦』や特連軍も事も触れる程度にだが書かれていたし、何より消えたはずのラオス島も今この場にある。


「明日にでも我々の司令部に来てくれ。基地司令官と貴官らの指揮官とで今後の話もしなければならんしな」


「判りました」


「それと米軍の指揮官ともお話がしたい。いくら今の日本とは同盟国とは言え我々の時代では敵国だったのだ。そこの話もまとめておきたい」


 彼らからすれば、終戦前後の日本が米軍にどれだけ煮え湯を飲まされていたことを知れば当然怒るだろうが、それが戦争と言うものだ。現に大日本帝国も中国や朝鮮に対しても同じ事をしたのだから負ければ当然の事だ。


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