表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/12

8にゃす「にゃすのお願い」

 ここ一週間仕事でのミスが続いた。

 小さなミスで止まっているが、同僚には恋愛でもしているのか、と茶化された。

 原因は自分でも知っている、()()()()三週間が立ったが荷物が届いていないのだ。

 荷物の中身がやはりまずかったのか、にゃすに何か遭ったのか。心配でならないのだ。


 いつもの一駅ウォーキングも二週間が過ぎたところから、二駅に増やした。

 会いかたがわからないので、路地にいるかもしれないと探しながら帰った。今思えば、毎晩、夜遅くに路地をキョロキョロしているって不審者だ。見回りの人に声をかけられたら猫を探してると言おう、嘘ではないし。


 一週間前の土日は、母からの連絡を心待ちにしていた。

 スマートフォンが一瞬でも唸れば疾風のごとく、ロックを解除し確認した。

 日曜日の夜は気になって母に連絡をしてみた。


「お疲れ様、最近どう?」


 この時間なら、実家はリラックスタイムのハズだ。

 でも、返事が返ってきたのは随分ゆっくりだった。いや、そう感じただけで、そんなに間は空いてなかったのかもしれない。


 ブッ

 と唸ったスマートフォンを多分0.1秒で開いたと思う。


「はーい、変わりないのよーどうしたの?連絡くれるなんて珍しいわね。」

「うん、ちょっと気が向いてね」


 贈り物をしたことを言うか迷った。

 母の日の定型カーネーションと、誕生日の定型メッセージカード意外贈り物なんてしないので、恥ずかしい気持ちが大半だ。それと、贈り物はSNSに載せるネタにもなっていたので、後ろめたくもあった。


「そう、今も忙しいの?」

「そうだね、ぼちぼちかな?」

「たまには帰って来ていいのよ、そんなに遠くもないでしょ」


 そうなの、実家はそんなに遠くない。

 でもそれは現代文明を活用してだから、私が実家まで歩いたら8時間ぐらいはかかると思う。それも目的地が明確で舗装された歩きやすい道があるからだ。


 その後は他愛のないやりとりを数回して終わりにした。つくづく現金な娘だと思う。

 それにしても、母の反応を見る限り忘れてるそぶりもなかった。


 そんなことを思い出しながら、今日も不信な見回りが完了して玄関への階段を登っていた。

 今日はリカバリをキチンとして、早めに上がれたからワンチャンあるかな、と思ったが不発に終わった。


 階段を登り切って廊下を歩きながら、左手に持っていたカバンに手を入れ鍵を探す。なかなか見つからず、目線をカバンの中に落とした。


「わこ、にゃす」


 またもや突然声をかけられた。

 玄関のドアをチラ見したときないなかったと思うんだけど、目の前にあの小柄なグレーと茶色混じりのにゃすが現れた。

 ほっとして、その場にしゃがみ込んだ私の膝に、白手袋のふわふわの手を乗せて覗き込んできた。


「わこ、お願いがあるにゃす」

「はい、なんでしょう?」

「おとどけさきが、わからないにゃす」


 お届け物と、にゃすはどうやら無事なようだ。



 はー、膝に乗った肉球を全神経で感じようと、今日一集中した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ