3にゃす「にゃすにゃすQ便のチラシ」
あれから一週間が立った。
その後、道端で出会うこともなく、お届けしてくれるでもなく、いつもの生活だった。
毎日通勤ラッシュに揉まれ、人が少なくなった夜遅くの電車で帰っている。今日もそんな一日だった。
しかし最近の健康ブームの波に乗り、疲れた体に鞭打って一駅分歩いて帰ってきた最中、アパートの集合ポストにふと目がいった。何か紙が挟まっている。
とろとろとポストのダイアルを回し、ロックを解除すると、中にはカード会社からの案内や住宅購入を斡旋する両面フルカラーのチラシ、スーパーの特売案内が入っていた。
先ほどのチラシは挿入口に挟まっていたようで、開いたとたんひらひらと舞った。
裏側は真っ白で、拾い上げながら表側を見た私の心も舞った。
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にゃすにゃすQ便であなたの大事な人に、お荷物お届けしませんか。
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手書きをコピーされたそのチラシのタイトルを読んで、そそくさと他の郵便も手に取りポストを閉めた。早く読みたいが、声が出そうなので一刻も早く部屋に入るのだ。
カバンから鍵を取り出そうとするが、引っかかってうまく取れない。階段を踏み外しそうだ。顔が熱い。
チャッ ガチャン バタン
と、部屋に入ってチラシの続きを読む。
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1.地域にゃすたちとリレーをして荷物を運びます。
2.軽くて時間がかかっても良いものでお願いします。
3.その他運べない物があるので、諸注意をにゃすから受けてください。
4.運賃は物資でお願いします。
5.集荷に参りますので、玄関に集荷希望と貼ってください。
運営局 The 揚げ屋襟井
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「ふぁぁああ、にゃすたちってことは別のにゃすもいるのか!」
玄関でテンションが爆上がりしてしまった。家に入って正解。
あのすっとんきょんな愛嬌のある子たちがワンサカいると想像するだけで、顔が綻んだ。あぶない、よだれが、この服高かったから気をつけなきゃ。
二週間もかかる謎は、地域にゃすという子たちがリレーをするからみたいだ。ここから実家まで人力、もといにゃす力で届けてくれるらしい。
そう考えると、彼らのメリットは四つ目の項目、運賃の物資だろうか。特に何も書いて無いので一番困る。まぁ、どの項目も謎に満ちているのだが。
明日は休みだし、母にこの前のお返しを探しに街に行こう。
疲れなんて吹き飛んだ、ああ、なんていい夜なんだろう。