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第2話 理学療法士(リハビリ師)は大抵飲み会好き

題名偏見が混ざってます。ごめんなさい。

シャーロット・クリストスは、第3王子ルーメルドと婚約関係にあったが、その実、上手くはいっていなかった。

我儘で自分勝手なシャーロットをルーメルドは嫌っていた。

だが、ルーメルドは優秀な兄と自分を比較し、コンプレックスから自分の意見を言うのが苦手であった。それを良しとしたシャーロットの我儘は、さらに悪化していき、ルーメルドはまるで召使いのような扱いを受けていた。

そんなとき、ヒロインが現れるのである。

ヒロインは優秀な兄の弟でもなく、王子としてでもなく、ルーメルド本人を見てくれた。そして、平民ながらにも逞しく生き、誰にも気持ちで負けない強さを持つヒロインに、いつしかルーメルドは惹かれていった。



ーーヒロイン、良い奴だなぁ。


私は『暁夜のシンデレラ』のルーメルドルートを思い出しながら物思いに耽っていた。


ーーこれからどうしよう、とか。凪雲凜々は死んだのか、とか気になるけど、どうしようもないしなぁ。


私は頬を思いっ切り両手でパチン!っと叩いた。


うん。痛い。夢じゃない。それに、シャーロットとしての記憶もある。ありえない事だけど考えてもわからないことは仕方がない。


「看護の世界で臨機応変な対応は基本中の基本だし。」


コンコン


扉を叩くノックの音が聞こえた。何となく遠慮がちな、恐る恐る、っといったような音だ。


「……どうぞ。」


「お嬢様……? お、お目覚めですか? 」


入ってきたのは、ピンクの髪をポニーテールに結わえたメイドのリリィだ。気が小さく、要領も悪いせいで、シャーロットにはよく怒られていた。昨日は確か顔に紅茶を掛けた気がする。


ーー悪いことしたなぁ。まぁ、私であって私でないんだけど。


「ええ。よく眠れたわ。」


「良かったですぅ。お嬢様、いきなり朝食前に倒れるものだから、どうしようかと……。あっ、すみません! 許可もなくベラベラと……。」



しょぼーーん。そんな顔でリリィは俯く。

まるで小動物だ。


「いいわよ。気にしてないわ。……そう、私倒れたのね。」


私は肩にかかっていたブロンドの髪をファサと手で払う。

これはシャーロットの癖だ。


「えっ、お嬢様、き、記憶が?」


リリィは驚いた表情で此方を見る。


「ええ、少し倒れた時のことを思い出せないの。何が悪いものでも食べたのかしら。」


「ふぇっ。いや、あ、の、シェフの方が、そんなこと……」


「え?」


「えっ?」


ーーあぁ。悪いもの食べたのかしら=シェフが毒でも盛ったんじゃない?=シェフ処刑 とでも曲解したのかな。


リリィは黙った私の方を見て、青いような赤いような焦ったような驚いたような顔をしている。

私は少し面白くなって、無言でリリィに近づく。


「ふぇ、ぇ……ぅぅ……。」


体を縮こませて、目線はあっちへいったりこっちへ行ったり。私が右手を上にあげると、リリィの肩もビクッと上に上がる。


「ごめんなさい!ごめんなさい!」


リリィはとうとう泣き出してしまった。


ーーあっ、しまった。やりすぎた。


私はそのまま手をリリィの頭の上に優しくおき、撫でる。


ーーなーでなでなで、ごめんよ、なでなで。


「ふぇ? 」


「ごめんなさい。脅しすぎたわ。反省。悪いものでも食べたのかしらっていうのは、冗談みたいなものよ。」


私はリリィの頭を撫で続ける。リリィの背が低いのかシャーロットの背が高いのか、丁度の位置に頭があり撫でやすい。それにピンクの髪が柔らかくて気持ちがいい。


ーーウサギみたい……。


「あ、あのぅ……。」


ーーあ。


無心でリリィを撫でていたら、いつの間にかリリィは沸騰しそうなほど顔が真っ赤に染まっていた。


ーーどういう表情だ、これ。怒りなのか?


使用人といってもリリィはシャーロットより年上で21歳だ。さすがに21歳が15歳に撫でられるのは屈辱的だっただろうか。


「ごめんなさい。つい貴女が可愛らしかったから、調子に乗りすぎたわ。2回目の反省ね。」


私はやっとリリィの頭から手を離した。


「か……!? え、…あ、いや、そんな……。」


リリィは両手を頬にあて身体をクネらせている。


ーー可愛いな、おい。


私が男に転生していたら間違いなくリリィを食っている。性的な意味で。


ーー命拾いしたな、リリィ。


グゥゥ


腹の音が響いた。


ーーいやいや、まさか。凪雲凜々ならまだしも、こんな天女の様なシャーロットから腹の音など。あっ、さてはリリィだな。この食いしん坊め。


「リリィ、お腹が空いたのね。私はいいから朝食をとってらっしゃい。」


私はまるで聖母のような優しい目付き(のつもり)で、リリィを見る。


「えっ、いや、あの私じゃ、あっ、いや。えっと、……。」


リリィはあからさまに狼狽え、最後には無言になってしまった。


ーそうね。リリィ。分かったわ。降参よ。貴女の可愛さにも降参よ。


ーー私は確か朝食前に倒れた、と言っていた。そこから導き出されるアンサーはひとつよね、コ○ンくん。


私は、お腹が減っている。


「名探偵もお手上げの名推理ね。」


「えっ?」


「いえ、なんでもないわ。私はどうやらお腹がすいてるみたいなの。朝食はまだあるかしら。」


「あっはい! お嬢様が倒れられてから、1時間も経っていないはずですから! すぐにシェフに伝えてきます!」


リリィは失礼します、と勢いよく頭を下げてバタバタと走り去っていった。


ーーそんなに急がなくてもいいのだけれど。よっぽどお腹が減っているように見えたのか。



少し恥ずかしい気持ちになりながら、私はゆっくりと広間に向かった。

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