題10話 介護士はお菓子とドラマの話によく食いつく
偏見題名すみません。
sideクラウス
派手な色した髪の女がぶつかってこようとした時、避けようと思えば避けられた。だが、何故かその柔らかそうな髪に目を奪われて動けなかった。
女のことは知っていた。とんだ我儘女だと、第3王子が愚痴をこぼしているのを聞いた事があったし、何度か大声で怒鳴っているのを見かけたことがあった。
だから、どうせ詫びのひとつもないだろうとタカを括っていたから謝罪された時には驚いた。
でもそんな言葉よりも、女と目が合った瞬間綺麗だと思った。
綺麗だ、などと女を見て初めて抱いた感情だった。前に見かけた時は、そんなこと思いもしなかった。
おう、と返答しようとしたつもりだったのに、無性に喉が乾いて言葉が出なかった。
一応護衛対象であるコーラッドの後ろでカレーを5秒ほどで平らげていると、さっきの女がカレーを運んでいるのが見えた。いやに視線を感じると思っていたが、俺が頼んだのをみてカレーを頼んだのだろうか。カレーなんぞ食うようには見えなかったが。
飯も食い終わって、何となく女を目で追う。変な女に絡まれているようだった。困った顔をしているのが遠くからでも分かった。偶に視線がカレーにいっているのが、可笑しくて吹き出しそうになる。
絡んでいた女が癇癪を起こしたように、自分の弁当をひっくり返して泣き喚き出した。アイツは、地面に転がった弁当をみて、少し怒っている様子だった。
絡んでいた女の叫び声を聞いて、コーラッドが席を立つ。そういえば、最近第3王子やコーラッドに付きまとっている女が居たが、あの喚いている女か。
俺は、コーラッドの後に続いて様子を見に行く。いつもならコーラッドを護れる位置で傍観するだけだが、少しあの女が心配だった。
泣いたり怒ったりした顔は見たくないと無性に思った。
コーラッドは盲目になっているようで、変な女の味方についた。明らかに演技くさいことにも気付いてないようだ。
そんなアホな王子よりも頭のおかしい変な女よりも何よりも怒りが湧いたのは、あの女が頭を下げようとしていたからだった。
だから、思わず口を挟んでしまった。てめぇはなんもしてねぇだろ、なんでお前が頭下げようとするんだよ。この目の前の女が頭を下げる所を絶対に見たくない、何故かそう思った。
俺が女に頭を下げるなと言うと、女は邪魔をするな、とでも言いたそうな顔で俺を見上げた。
俺は苛立ちが抑えられなくなりそうで、護衛も放棄し、その場から離れた。あの女にあんな目でこれ以上見られたくなかった。
「ッんなんだよ、コレは!」




