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不老不死の女性に恋をした。  作者: 子桜優華
7/9

チビすぎだろ


 ―1603年12月25日 16:30―


 三郎の餅屋を後にした智樹は、初に準備してもらった甚平をきて、初の家へと向かった。

大きな通りの両端には、商店や機織りを行っている建物がずらりと並んでいる。

きっと、江戸の中でも都会、と言えるだろう。

先ほどと同じように、やはりこちらを見るものの、冷たい視線は全くと言っていいほど向けられなかった。

智樹にとって、この江戸時代にタイムスリップしてきて、初めて一人での移動となった。

「・・・しかし、この時代はみんな小さいんだなあ」

初と出会った時から智樹は思っていた。智樹の身長は170cmほどで、2020年でいえば平均を下回るくらいだろう。しかし、江戸時代に来てからは、智樹より身長の高い人間はまだ見ていないどころか、男性でも、155cmほどの、2020年でいう女性くらいの身長しかない人ばかりだった。

(だからこんなにこの時代の格好をしてもみられるのか)

智樹はまだこの時代に隠れきれてないこと実感し、すこし恥じらいを感じながらも初の家を目指した。

そのとき、一人の男性に声をかけられた。

「おい、あんちゃん!あんたすげえでけえんだな!」

見た目は20後半といったところか。その男性はまじまじと智樹の顔を見上げた。

「な、なんでしょうか?」

するとその男性は、申し訳なさそうな顔した。

「すまんなあ、おらの息子が凧揚げであそんでるところ、屋根に引っかかってしまった。できれば、とっておくれ。」

そういうと男性は家の屋根を指さした。指をさした先には言われた通り凧がひっかかっている。

とれなくもなさそうだが、台がないと厳しい高さだ。智樹は台があればとれるんだけれど・・・と、取ってあげるか悩んでいると

「さすがにあんちゃんの高さでもありゃ無理か。そうだ、机を使ってとってくれ」

その男性は智樹の思っているこがわかっていたかのように、すぐに中から机を取ってきた。

智樹は断れない状況になり、しかたなく取ってあげることにした。

「よいしょ・・・!はい取れましたよ」

男性は智樹から凧を受け取ると満面の笑みを智樹に見せた。

「ありがとうな!こんど御礼させてくれ。俺の名は勝重だ」

「勝重さんですか。またなにかあれば言ってください」

智樹はそういうと、机を勝重に返し、そそくさとその場を離れた。

なぜなら、江戸時代ではめったにいないであろう170cmの男が、机だけを使って屋根に引っかかったものを取った。それだけで大変目立つ行為であるために、ギャラリーが集まりかけていたからだ。

(危ない危ない・・・目立つのはよくない)

そう言い聞かせながら、早歩きで初の家まで向かった。

しばらく歩くと、大きな通りの両側に建物があるのは変わらないが、建物が商店などではなく、

なにやら民家らしき並びに変わっていった。さっき通った時の活発な雰囲気とは裏腹に、閑静な住宅街、と言えそうな雰囲気が漂っている。

「・・・ん?これじゃないか?」

智樹が見つけたのは家の扉の前に置いてある、小さな木彫りのたぬきだった。

智樹はあたりをいった見渡し、恐る恐る扉をあけた。

中を見ると、タンスのような収納やちいさなかまどが置いてある。

さらに奥には畳がしいてある部屋もある。

「きっとここだ。」

生活感の溢れるこの家こそが、初の家だった。

中に入り、扉をしめた瞬間、智樹は大きなため息をついた。

「はあ、ここに来るまで大変だった。江戸時代の人たちチビすぎだろ。」

愚痴をいいながら智樹は、奥の畳の部屋でくつろぐことにした。



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