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不老不死の女性に恋をした。  作者: 子桜優華
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小さな出発


 ―1603年12月25日 16:00―


 「ふう、お腹いっぱい」

智樹は、三郎の作った餅と団子を食べつくした。

「ごちそうさまでした。助けてもらったのに、ごはんまで食べさせてもらって、なんだか申し訳ない」

そう話すと、初は智樹の食べた食器をかたずけながら言った。

「いえいえ。困ったときはお互い様や。まあ、お互い様言うても、会うたばかりやけどなあ?」

初はくすくすと笑いながら、智樹の使った食器を持って一階まで下りて行った。

なんていい人なんだろう。智樹はそう思った。何をしてでも寛容で、見た目が若いので智樹と年が近いだろうが、智樹よりもずっと大人な雰囲気だ。

しばらくすると、初は何やら布のようなものを持って再び二階へあがってきた。

「さて・・・これからどうするかやけど。私はまだここで仕事があるさかい、智樹さんは先にうちの家にいって休んでてええで。道はあとで教えますよ」

そう智樹に話しかけると、初は、持っていた布のようなものを智樹の前に置いた。

「このへんにおるときは、これ着て歩き。」

初が持ってきたのは、すこしボロボロの甚平じんべいだった。

「これ、三郎さんのお古やねん。すこし汚れてるけど、その格好して歩くよりだいぶいいでしょ?これさえ着れば、周りの目もきにせんでええ。」

たしかに、洋服を着ているよりかは遥かにいい。と智樹は思った。

よくわからないが、未来から来たとか知られたら厄介ごとが起きそうだ。

「ありがとう、これがあれば何とかなりそう」

智樹は甚平を受け取り、着ている洋服の上に軽く羽織ってみた。

「あら、未来人さんも、意外と甚平さん似合ってるやん」

「そうかな・・・?」

智樹は顔を赤らめた。まあもっとも、2020年にも甚平は存在しているので、初めて着たわけでもないのだが。

すると初は袖をまくり、パン、と手をたたいた。

「よし!せやったら、とりあえずその甚平に着替えたら一階におりてきて。道教えたるから」

そういうと初は、一階に下りて行った。

智樹は着替えを始めた。三郎のほうが智樹より身長が低かったが、三郎のがたいに合わせて作ったのだろうか、細身の智樹にはぴったりのサイズだった。

智樹は着替え終わり、今まで来ていた洋服をバッグの中に入れ、初の待つ一階に下りた。

「お!なかなか似合うじゃねえか!兄ちゃん!」

一階に下りると三郎と目があい、三郎もまた、智樹の姿を褒めてくれた。

「あ、甚平まで貸してくださって、ありがとうございます。お餅も美味しかったです。」

智樹は三郎に感謝の気持ちを伝えた。

「おお、いいってことよ。どうせボロだからな。その甚平はもうお前さんにくれてやるよ。俺の作った餅も一級品だったろう?また食いにおいで!」

「ほんとうに、ありがとうございます」

智樹と三郎が会話していると、奥から初が出てきた。

「ほな、道教えたる。っていっても、すぐそこなんやけどなあ」

初と智樹は店の前の外に出た。それからすぐ初はすぐ自分の家を教え始めた。

「この通りをなあ、一回も曲がらず、ずーっと5分くらいあるくんや。そうしたら、玄関にたぬきの置物が置いてある建物が、うちの家や。そこまで行けるか?」

智樹はうん、と首を縦に振った。

「わかった、ありがとう」

すると初はまた話し始めた。

「あと、うちの仕事が終わるのが暗くなってからやねん。日が落ちたころには帰ってくるから、家で好きなようにしててや。っていっても、なんてないんやけどな・・・」

初は苦笑いしながらそう言った。

「それじゃあ、行ってみるよ。」

「ほな、気をつけてなあ」

初が見送ると、智樹は歩き始めた。



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