ここがうちの商店!
―1613年12月15日 15:00―
智樹は、手を引かれながら5分近くあるいた。
その道中は、学校の歴史の教科書や、時代劇なんかでみた風景と全く一緒の物だった。
ちょんまげ姿ではかまを着た商人や、着物をきて町を歩く女性たち、侍のような人、
さらには人力車までも見受けられた。
(本当に江戸時代に来てしまったのか・・・?)
信じられない光景が目の前に広がっているが、信じないほかなかった。
また、回りの人たちも自分のことを不思議そうな目で見ている。
それもそうだ。この世界に、”洋服”なんてきているのは智樹だけだ。
しばらくすると、手を引っ張っていた女性はピタッと止まり、手を放した。
「ここが、うちの働いてる商店やねん。さ、お腹いっぱい食べていき!」
智樹は首を縦に振ると、女性は中に入って行った。
「ただいま戻りましたよ!三郎さん!」
「おお、戻ったか。随分時間かかったなあ。」
中にいたのはすこしふっくらした50歳くらいのおやじだった。
「ん?その男は・・・?」
そう言って三郎という男は、智樹を見た。
すると女性は三郎に説明し始めた。
「あのなあ、江戸に帰るところで、そこの山で遭難してたんや。やから一緒連れてきたんよ。お腹すいてるみたいやから、ほっとけんくてなあ」
そういうと三郎はがっはっはと大きな声で笑った。
「それは大変だったな。しかし初めて見る格好してるな。宇宙人じゃねえか?」
「んなわけないやろう?ちゃんと人間やで。失礼にもほどがあるなぁ?」
女性はそういいながら智樹の方を見た。智樹は知らない環境で急に話を振られて、なんて言っていいかわからなかった。智樹は黙っていた。すると
「あ、そうやったお腹すいてたんよね。三郎さん!お餅とお団子、いくつか作ってくれへんか?」
「ああ!もちろんいいとも。たっぷり食べていきな!」
そういうと三郎は、お餅を作り始めた。
「さ!入って入って!階段つこうて上の階で食べ。それなら周りにも見えへんし」
「あ、ありがとう・・・」
ギクシャクしながらも、智樹は二階へ上がった。
この商店の一階は、三郎の台所と、餅や団子を食べているお客さんがいて、
二階は食糧庫のようになっていた。
「ずいぶん暗い部屋やな・・・」
きっと物置用に作った部屋だろう。窓もなく、昼なのに薄暗い雰囲気だ。
しかし智樹は落ち着くことができた。昨日の帰り道の出来事から考えると、やっとゆっくり座って休憩できる時間だ。しかしなぜ、自分がこの時代にいるのか?あのタイムスリップのようなものはなんだったのか?2020年に戻れるのか?いくつもの心配ごとがある。
「ほんと・・・どうしよう・・・帰れなかったら、この町で暮らしていかないといけないのかなあ・・・」
そんなことを考えていると、誰かが階段を上ってくる音がした。
「おまたせ!お餅とお団子、もってきたから、遠慮せずたべてやあ」
その女性がもってきたのは、ほかほかのお餅と、色とりどりの三色団子だった。