第九プラン 敗北者
*前回のあらすじ*
魔力の使い方の第一歩を踏み出せた。
***
訓練場、今日も冒険者達が訓練をしている。
俺は今、訓練場の端っこに座っている。隣にはゴーゴさんがいた。
「俺がこの依頼を受けてから半年が経ったんですね……」
「そうだな坊主。でも、そんなふうに逃げても変わらないぞ」
そう、半年も経ったのだ。俺がこの世界に来てから半年。依頼も後半分だ。半年前と比べれば俺はとても強くなったと言ってもいいだろう。しかしそんな俺でも今ただいま、壁に当たってます。
「まぁ、落ち込むなって。レルに模擬戦で連敗してるからって、気にすんなよ」
そう、今俺はレルに模擬戦で、連敗中だ。
これまで筋トレ、魔力の使い方をマスターする為の訓練をしていたが、一週間前ぐらいから俺とレルで模擬戦をし始めるようになった。
そして一週間が経過し、俺は"一勝"もして無い!!!
…………なんて言うか、腰を下ろして、座りたくなった。
「はぁー、頑張ってもう一回戦えば、なんかヒントがあるかもしれないだろう?リトライだ!」
「そう……ですね。ネバーキブアップの精神だよな!!!」
「ネバーキブアップの精神がなんなのか知らんがそうだ坊主!!!」
「ネバーキブアップは"絶対にあきらめない"とかそんな感じの意味です」
「そうか、いい言葉だな。さぁ行け坊主!レルを倒すのだ!!!」
「はい!」
気合い十分で、これから模擬戦をするのだった。
***
訓練場、前には宿敵とも言えるレルがいた。
「ねぇ、クモ。また戦うの?」
……なんかレルはやる気が無いようだ。
「あぁ、勝つまで!!!」
俺の気合いが入った答えにレルは呆れた顔をしている。
ゴーゴが俺とレルの間の位置にいる。
俺とレルの間は十メートル位だ。
「では、坊主とレルの模擬戦を始める。使用武器は魔力と己の体のみ。魔法は禁止な。では始め!!!」
ゴーゴの合図で、二人同時に動きだす。
俺は前腕に『雲』を纏い、拳を振るう。
「雲の拳」
雲の拳はレル目掛けて飛んでいくが呆気なく避けられる。
「クソッ、もう一発!!!」
ヤケクソ気味にもう一発放つが避けられる。
レルは俺の攻撃を避け、近づいてくる。
「『糸』!!!」
レルは糸を伸ばし、準備をしている。
攻撃の準備を。
俺は心に焦りを感じつつ、攻撃に移行する。
「雲の蹴り」
膝から下に雲を纏い、蹴りを放つ。雲は伸び、「雲の拳」と同じように遠距離でも使える。が、それも避けられる。
もう距離は二メートルも無い。近距離戦となった。
「クソが、結局いつものと同じかよ!!!」
俺は愚痴をこぼす。
その愚痴にレルは反応する。
「それはクモが変わらないからだよ」
レルの口撃に心がグサッと会心の一撃を貰いつつ、構える。
先手必勝と「雲の拳」を放とうとするが、踏み込む所に糸があり、それに絡まり、足を取られる。
体制を崩した所に、レルの鋭い蹴りが飛んでくる。
見事に入り、まさに会心の一撃。
それを見て、ゴーゴはレルの勝利を伝えるのだった。