第二十四プラン 冒険者その二
*前回のあらすじ*
ミノタウロスとの戦い。
***
何故だ?何故アレを食らって立っていられる?ちゃんと捉えたのに……。ミノタウロスを観察していると背中が水で濡れていた。
まさか水を噴射して衝撃を和らげたのか!?確定は出来ないが少なくともそれに似た何かで衝撃を和らげたのか。
しかしそれでももう体力は無いはずだ!トドメを刺す!
「モオォォォォォーーーーー!!!!!」
ミノタウロスは咆哮を上げながら、構えた。頭を低くし、手を地面に付け、臀部を上げる。その姿、猛牛の如く。
そして……
「モオォォォォォーーーーー!!!!!」
雄叫びを上げながら走り出す。全身の筋肉を使い、俺を殺すために、進む。
クソッ、速い!「巨大な雲の拳」は間に合わない。他の方法でアレを凌ぐのか。後ろには仲間もいるのに…………上等じゃねぇーか!!!ここを凌いで勝つのは俺達だ!!!
しかしどうする?大きくは出来ない。なら……なら、加速する時間を増やして速くする?
これしかねぇ!!!
「雲の手!!!そしてマナ武装!!!」
手を後ろに伸ばし、雲の手を後ろに後ろにと伸ばし続ける。腕を戻すタイミングの見極めが重要だ。これをミスったらあの突進をマトモに食らったら死ぬ!!!
「うおぉぉぉぉぉーーーーー!!!「長く加速する雲の拳!!!」
腕を戻し、全力で振るう。戻しながら雲を噴出して加速させる。加速しまくった拳はミノタウロスの頭が俺に届く前に間に合った。
ミノタウロスの頭と俺の拳がぶつかり合う。
お互いの全力がぶつかり合い、そして二人共止まった。
ミノタウロスは力尽きたのか、魔石に変わった。しかし奴は土産を置いてった。ミノタウロスの魔石と、ミノタウロスの角を。
その土産を回収して、レル達の所を見ると、したら……
「 「クモーーーーー!!!早く来い!!!」」
二人の声が聞こえた。
「おう!!!」
俺は二人に返事をする。
そうして駆け出して二人の近くに行くと、エレンは右肩が切られており、血が出ているがポーションで治療したのだろう、傷が少し塞がっている。そしてレルの糸でも縫われている。あまり動かなければ傷は広がらないだろう。
レルは腕に糸が着いている。恐らく腕を切られてそれを糸で縫ったのだろう。エレンとレルも他にもかすり傷が目立つ。死闘だったのだろう。
「とりあえず急いで帰るぞ」
「あぁ」
「うん」
俺は足を踏み出すと、目眩が起こり、そのまま平衡感覚を失い、倒れた。失血をしすぎたのだろうか?右脇腹を見ると『雲』は赤く、血で染まっていた。
「クモ!!!」
「クモしっかりして!!!」
倒れる途中、 駆け寄る二人を見ながら、倒れた衝撃で俺は呆気なく意識を手放した。
***
目を覚ますと知らない天井だった。白く美しい天井だった。体を起こし、周りを見ると誰もいない。室内はベットが複数あり、病院を思い浮かべる。ドアがひとつあり、それ以外はあまりなく、簡素な場所だった。仕方ないから体がどうなっているのか確認をする。
右脇腹を見ると傷跡ひとつ無かった。まるで何も無かったみたいだ。アレは夢だったのか?そしてひとつ疑問がある。
「ここは……どこだ?」
普通に考えれば病院だ。もしくは……と考えているとガチャとドアが開く音がする。
そちらを見ると赤い瞳に、胸ぐらいまで伸びた白い髪。レルがいた。
「ク、クモーーーーー!!!」
と言って抱きついてきた。
胸の感触が俺を襲ってくると考えてたが、何も無かった。そう、何も無かった。しかし、体は細く、柔らかい、やっぱりレルも女の子なんだなぁ。
と考えていると、レルが泣いていた。
「おいおい、どうしたんだ?そんなに泣いて?」
「だって……ひっぐ……クモは五日間も寝ていたんだよ?それで心配しない方がおかしいよ」
俺は五日間も寝ていたのか。すげぇな、人として心配になってくるレベルだな。
「そう言えば、エレンは?」
「エレンなら、そのうち来ると思うけど……」
とレルがドアの方を見るとエレンがちょうど来た。そのタイミングでレルは俺から離れてベットに座った。
むぅ、抱き心地が良かったのに。
「クモ、起きたんだね。よかった、心配したんだ」
「心配させて済まないな。あの後どうなったんだ?」
「あの後?それはとても大変だったよ。クモを背負いながら、ダンジョンの脱出を目指したんだ。途中途中、背負うのを変えながらね。なんとか出口に着いた時はその瞬間から膝から崩れ落ちたよ。その後、冒険者に連れてかれて、ここに来て、治療を受けたのさ。僕達は三日間寝てたらしいけどね」
それはとても大変なことをさせてしまったな。
俺は二人に腰を折り、お辞儀した。
「済まない。俺が不甲斐ないばかりに」
エレンは俺の行為に驚きながらも声を出した。
「そんなのいいよ。全員無事だったんだから。あそこをよく全員無事で出てこれたよ!!!」
「うんうん、エレンの言う通りだよ。全員無事だからね!結果オーライってやつさ」
「クモ〜?起きてる〜?」
そんな中、聞きなれない声が聞こえた。
「誰です?」
彼女は緑色の髪の毛を短く切り揃えていて、緑色の瞳、白衣を着た美しい女性で、泣きボクロもあり、そしてレルと違って胸がある美しい女性だった。
「私はヒバナの街にいる元冒険者のテスラだ。よろしく」
「冒険者なのに、治療をしているのか?」
「元冒険者と言ったろ?私は治療が必要な人に治療をするためにいるんだよ。あとあんたらに話すことがあるよ。しっかり聞きなさいよ?」
テスラは椅子を出して腰にかけた。
「一体なんの話ですか?」
「あんたらは"壁"を知っているかい?」
「"壁"…………確か、成長限界のことだっけ?」
ゴーゴさんが言ってた気がする。
「そう、今回の壁を無事破れたみたいだよ、三人共さ」
テスラの言葉にエレンは首を傾げた。
「"壁"を破れた?今回?」
「そう、今回の"壁"を破っても壁はまた出てくる。それはいつかは知らないが」
「なんで"壁"を破ったか分かったんですか?」
「それはね、あんたらが寝ている時に分かるのさ」
「寝ている時?」
「あぁ、寝ている時にマナが体を包み込むのは"壁"を突破する時さ。"壁"を突破する為にはずっと鍛錬をするかそれか、死にかけるか」
「死に……かける?
「あぁ、死にかけると、人の本能か、何かが周りのマナを集めて体を強化するのさ。次は死なないようにね」
「じゃあ私達は前よりも強くなっているんですか?」
強化するという言葉に反応したのかレルが凄い食いついた。
「いや、器が強くなっているだけで、体は強くなってない。つまり鍛錬は必要なんだ」
「そうですか。まぁそうですよね」
とレルは少し落ち込んだ。
「まぁ、死にかけると言っても生きる"意思"が無いとダメだけどね」
「そうなんですね」
「じゃあ私はそろそろ行くよ。エレンとレルは明日から動いていいけどクモは三日間は動いちゃダメよ?散歩くらいならいいけど、運動とか動いたらベットに縛り付けるからね?」
とても怖い顔で言われた。ミノタウロスなんか目じゃないくらいだ。
「分かりました」
「分かったならよし!!!」
そう言って彼女は部屋を出てった。
「なぁ、二人共これからどうする?」
「う〜ん…………しばらくはダンジョンに行って強くなるしか思いつかない」
「俺も同意見だ」
レルとエレンの頭にはダンジョンに潜るしか無いのか?
「まぁ、俺もしばらくはダンジョンに行くのはいいけどそれからどうする?ずっとダンジョンに行くのか?」
「確かにそう言うのは決まってないよね」
「あぁ、多分」
「じゃあさなんか目標を立てようぜ!」
「目標ね……エレンなんか無い?」
「そうだな。エクスに勝つとか?」
「僕に勝つのが目標?頑張って、楽しみに待ってるよ」
気が付かないうちにドアが開いており、そこに居たのは"滅殺の剣"団長、デウス・エクスだった。
「やっほー、三人共。お見舞いに来たよ」




