第百六プラン 手合わせ
*前回のあらすじ*
クモとラグザの手合わせをする事にした。
***
村のハズレの平原。
二人の冒険者が見合っていた。
「じゃあ二人とも準備はいい?」
レルが確認をする。
「あぁ」
「もちろんだ」
二人の距離は五メートルくらい。俺は構えをとる。次の行動を速くできるように。
その間にレルは立っている。
手を振り下ろし、試合開始の合図を送る。
「始め!」
合図と共に雲を使い、足から雲を噴出させ飛ぶ。
そのまま空中で回転し、ラグザの頭目掛けて右足回転蹴り。
「いい蹴りだな」
ラグザは難なく腕でガードする。
足を掴まれる前に左足から噴出させ、左蹴りを放つ。
「まだまだだぜ」
これもガードされる。
ヤバイな。掴まれたら離してはくれないだろう。
一旦距離を取ろう。
右足をラグザの顔の前に起き、雲を噴射。
雲を噴射させた勢いで、後ろにそれて、距離を稼ぐ。
「目くらましか?」
にしてもどうやって一撃入れよう。
前に開発した奴を試すにも試す前にやられそうだよ。
一撃を入れる為には……俺の強みを生かすしかない。
奴は俺よりも性能が段違いだ。
ほとんどがラグザの方が上だ。
しかし俺が奴を上回っているのは確かに一つ。
たった一つある。
それは_____________
「物は試しだ。やってみるか!」
____________機動力!
雲を噴射させ、空高く飛ぶ。
そのまま空中を縦横無尽に移動する。
「なんだ?遊ぶだけか?」
もちろん移動するだけでは無い。
加速しながらだ。そして雲は黒くなっていく。
「あれは、雷雲!?」
「雷雲の……」
加速しながら空中を縦横無尽に移動する。
移動した場所には黒い雲がある。
移動しながら……やるんだ……溜めろ……溜めろ!
空中にある雲に着地して、一気に加速する。
ラグザ目掛けて突撃する。
溜めて放つこの一撃。
新たに開発した技の名前は……
「鉄槌!」
ラグザにガードされずに、腹に見事に決まった。
「いい一撃だな……だけど」
拳を掴まれた。
あ。
「終わりだ」
その次の瞬間意識が飛んだ。
俺が目を覚ましたのは日が沈んでいく時間だった。
平原の中に、糸で作られたシートの上に寝ていた。
レルが作ってくれたのだろう。ありがたい。
俺が起きるのを待っていたのか、横にはラグザがいた。
「すまねぇな、クモ。力加減を間違えた」
「あぁ、いいよ別に。俺の実力が足りてない証拠だ」
「そう言って貰えるとありがたい」
「他のみんなはどうだった?」
「レルには新たな可能性を教えた」
ラグザが気になることを言った。
新たなる可能性だと?
「なんだそれは」
「それは魔像と呼ばれる物だ。西の"獣王国"発祥の技術らしい。そしてその使い手は旅をしているらしい。もしかしたら会えて教えてくれるかもしれないと言っておいた。
魔像のために西の国に行くのもいいかもしれないと」
「西の国、"獣王国"か……」
ここから真反対だけどな、いつか行きたいな。
「他には?
「リバーには剣の修行を頑張るように、そしてエレンはもっとマナを使えるようにするように言っておいた」
「ほう、トウカには?」
「刀加には夜刀を使わなくても戦えるようにと。そしてお前は戦い方は良かった。ただ油断をするな。油断をしなければあの場面で捕まることはなかった。
油断を決してするな。それは命に関わる。いいな?」
「はい」
今回の手合わせで得るものはあった。
これを生かす他ないだろう。
日は、時間は過ぎていく。