第十プラン 勝者は立っている
〜祝十話〜
*前回のあらすじ*
ゴーゴ 「雲は所詮敗北者じゃけェ」
雲 「はぁ……はぁ……敗北者?取り消せよ!……はぁ……今の言葉!!」
***
敗北してから、少し時間が経過した。俺は考えていた。
レルに勝つために、考えていた。どうしたら勝てるんだと。
と考えていたら、訓練場の冒険者が少し気になった。
なんだったかな?少し見た事ある気がする。
好奇心と言っても過言ではない心境の中冒険者に近づき質問する。
「あの、ちょっといいですか?」
「なんだ坊主」
「実は気になったことがありましてさっきの……なんでしたっけ?名前が出てこない」
俺の言葉に冒険者が考える。すると思い出したのだろう。手を叩き、口を開ける。
「あれか?ジャブのことか?」
ジャブ。その言葉を聞いた時思い出した。
「そうそれです!いや~思い出してスッキリしましたありがとうございます」
「そうかい、役に立てたなら嬉しいよ」
そう言いながら俺はその場から立ち去る。
歩きながら少し考える。
俺の攻撃はレルには一発も当たらなかった。何が足りない?…………速さが足りない!!!
そこでさっき見たジョブ。ジョブは威力よりも速さを優先して繰り出す技。「雲の拳」は隙が大きい。これよりも速さを優先して繰り出す技を作れば少しは勝率が上がるのでは?
では、どうしたら速く繰り出せる?雲を伸ばすスピードを速くすればいいが、出来たらやっている。
ではどうする…………伸ばすのが遅いなら飛ばせば速くなる。
ロケットパンチみたいに飛ばせばいいのか?まぁやってみるか。
俺はロケットパンチ(仮)を出来るか試した。
***
出来た。少なくとも「雲の拳」よりも速く、多く打てる。
あとは、何かあるか?とりあえずは少しは抵抗出来そうだ。少しは作戦を立てるか?
まぁ考えてみるか。そのうちゴーゴに呼ばれた。
***
「よう坊主。少しは抵抗出来そうか?」
「あぁ、少しは出来そうだよ」
「そうか、なら戦うか?」
「おう!!!」
俺は威勢よく返事をした。
気がついたらレルはもう準備完了していた。
「ではこれより坊主とレルの模擬戦を始める。武器は己の体と魔力のみ使用可。魔法はダメだぞ。始め!!!」
ゴーゴの合図でレルは歩を進める。俺までの距離は十メートル位だ。俺は雲を前腕に纏い、構える。
「くらえ、「雲の拳」
これまでとは違い、ジョブの如く腰を使わず、腕だけの力で放たれる拳。これまでとは違う。これまでは雲が伸びていたが、今回のはロケットパンチの如く、纏っている物ごと飛んでいく。飛ばす時、腕の力とロケットの如く雲を吹き出し、加速させている。
その分魔力の消費が少し高いが、気にしない。ジョブで速く繰り出された拳は次々と繰り出され、少し弾幕のようになる。
「クモ、少し変わったね!けどまだまだ!」
レルは避けるのに苦戦している。そこに……
「オラ!!!」
「雲の蹴り」を放つ。
レルにガードされたが、しかし確かな手応えがあった。その手応えに少し興奮を覚えながら次の準備をする。
「いいね、クモ!そうでなくっちゃ!!!」
レルは糸を出しながら、突っ込んでくる。
そんなレルに対抗する為の手段は考えていた!!!
「おぉ!!!「雲」
俺は全身から雲を放ち、レルの視界を奪う。
「けどこれだとあんたも見えないでしょ?」
「残念だったなレル。これは俺の魔力で出来た雲だぜ?むしろ目で見るよりもお前の行動が手に取るようにわかる!!!そらそら行くぜぇぇぇーーー!!!」
俺はここぞとばかりに「雲の拳」を放つが、
レルはガードしており、あまりダメージは与えてない。レルは雲を払うため糸を使い、少しづつ雲を払って行った。
「くっ、これじゃ押し負ける。「糸」」
その時には雲はほぼ無くなり、目でしっかりと見えた。
レルは糸を伸ばし、俺の左腕に巻きついた。
「捉えた!!!これで逃げられない!」
「それはこっちのセリフだ!レル!」
俺達はお互い、拳を握り、走る!
「「糸の手」」
レルは糸を使い、人の腕を作り出していた。
あれで俺を殴る気だろう。通常よりも射程が伸び、有利だ。このままでは負ける。
しかしまだだ。俺には切り札がある。それはジョブの「雲の拳」の時に使った技。ロケットの如く雲を吹き出し、加速させる技。それを自分に使えば、腕が一瞬でも伸びるのが速くなる。これを使うしかねぇ!!!
「加速する雲の拳」
「糸の拳」
お互いに拳を振るう。振るわれた拳はグングンと進み、それぞれの顔に。少しでも顔に着くのが速ければ勝ち。
相手を殴り飛ばし、自分は喰らわなかった。レルは倒れているのに、自分が立っているのに少し驚きながらも喜びを噛み締める。
勝者は…………雲だった。