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27話

 街へと帰ってきたジェフたちは、早速ギルドに入る。

 時刻は昼少し手前にもかかわらず、ギルドの中は人がかなりいる。

 そのことにリリィは首を傾げるが、他は気にせずにカウンターへと向かう。

 向かったカウンターには、20代前半と思わせる美人なお姉さんがいた。


「いらっしゃいませ。本日はどのようなご用件でしょうか?」


「討伐指令にあったカラミティを発見した」


「……今、なんとおっしゃいました?」


「カラミティを発見した。ここで話すか?」


「しょ、少々お待ちください。上と相談してまいりますので」


 そういうと、カウンターのお姉さんは、慌てて席を立ち奥へと向かっていく。


「さて、どうなると思う?」


「普通に考えれば、どこかの個室に移動させられてから、詳しく話をすることになるのでしょうね」


「ま、そんなところか」


 ジェフとヴィオはそう言って口を閉ざす。

 それをみたリリィは、ギルドの様子が気になり聞いてみた。


「なんか、ギルドにいっぱい人がいるんですが、どうしてなんでしょうか?」


 リリィの質問に答えてくれたのはヴィオだった。


「ああ、それは、魔の森と関係しているのでしょうね」


「魔の森と?」


「ええ。今のあそこには、行ったからわかるでしょうが、魔物が殆どいません。となれば、そこで活動していた冒険者たちは仕事ができなくって、ここで管を巻いているのでしょう」


「ああ、そういうことなんですか。でも、他の場所に行けば仕事はいくらでもありますよね?」


「それはそうですが、移動するしないは、彼らの自由ですからね」


 そう言われてしまえばリリィも反論はできない。

 ヴィオのいうとおりどうするかは、彼らの自由なのだから。


 そんな話をしていると、奥から先ほどのお姉さんがこちらに向かってきた。


「すみません、お待たせしました。マスターが会いたいという事ですので、お手数ですがお会いしていただいてもよろしいですか?」


「ああ、わかった」


 ジェフが承諾すると、お姉さんの案内で、2階へと移動することになった。

 そして、2階の奥の部屋の前にくると、お姉さんはドアをノックする。


「マスター、お連れしました」


「わかったわぁ。通してちょうだぁい」


 返ってきたのは、少し間の延びた艶めかしい声だった。

 この声を聞いたジェフたちは、怪訝な顔つきになるが、ドアノブに手を伸ばしドアを開け中に入る。

 中に入ると、装飾された豪華な机に腰を掛けた人がいた。

 その人物は、整った顔と出るところは出て、引っ込むところは引っ込んでいる抜群のスタイルを持つ女性だった。

 しかも耳が長いという特徴を持っていた。


「エルフか」


 ジェフがそう口にすると、エルフと言われた女性は微笑む。

 その笑顔は妖艶な、と但し書きをつけて、だ。


「ええ、そうよぉ。エルフのディオナよぉ。よろしくねぇ」


 ディオナと名乗ったエルフは、間延びした声とくねらす仕草から、無駄にと言ってもいいほどの色気を感じ取れた。

 その仕草を見ていたリリィとアンリは、女の色気を全面に出すディアナに対し不快に感じた。


「それでぇ、カラミティを発見した、と聞いたのだけれどもぉ、本当かしらぁ?」


「ええ、本当です。俺たちが見たカラミティは……」


 と、ジェフは、ディアナの色気に惑わされず、カラミティのことを話し始めた。

 全てを聴き終えたディアナは、胸の谷間に手を入れ細長い何かを取り出す。

 それを見ていたジェフたちは、なんでそこから取り出すんだ!?と、内心で突っ込んでいた。

 ディアナが取り出したのは、煙管といわれるタバコを吸う道具で、先端にタバコを詰めると指先から小さな火を灯し、タバコに火をつける。

 それを見たヴィオは、ピクリと眉を動かす。

 小さな火とはいえ、それを無詠唱で行うとは、かなりの実力者だと判断したためだ。

 ディアナは、煙管を咥えるとタバコが真っ赤に燃え、口を放し紫煙をくゆらせる。

 ただ、それだけなのに、その仕草は様になっており、そして、(あで)やかであった。


「なるほどねぇ。その高さ10mくらいあった生き物がぁ、カラミティだとわかったのはぁ、そこのお嬢ちゃんのお陰、というわけねぇ」


「ああ、そうだ」


「それで、あなたたちはどうするべきだと思ったのぉ?」


「それだが、取れる手段は2つだけだと思う」


「何かしらぁ?」


「1つは、国に要請して、一丸となって当たる」


「もう1つはぁ?」


「放置だ」


 ジェフがそういうと、悠然とタバコを吸っていたディアナが一瞬であったが動きを止める。


「アナタ、自分が何を言っているのか理解しているのかしらぁ?」


「勿論だ。このままカラミティを放置していれば、Sランクに至る可能性がある。だが」


 ジェフはそこで一旦口を閉ざし、リリィをチラッと一瞬だけ見る。


「今まで、カラミティから被害を受けたという報告を聞いたことがない。希望的観測であることは承知しているが、今後もカラミティが人族に対して害をなさないかもしれない」


「……それだけの理由で、放置するというのかしらぁ?」


「あ〜、やっぱりこれだけじゃ、無理だよなぁ。ま、理由はもう1つある」


「聞かせてちょうだい」


「俺は、カラミティの強さは最低でもAランクだと(くだ)した。という事は、既にSランクに至っている可能性がある。もし、そうなっていれば、国どころか、人族全員で当たっても倒せない。ならば、放置したほうがいい。そう判断した」


「なるほどぉ。そういう理由なら、納得できるわねぇ」


「それで、どうするだ?」


「そうねぇ。とりあえず、カラミティがここの魔の森にいる事を国に伝えて、後は判断待ちになるわぁ」


「そうか。なら、話はこれで終わりだな?」


「ええ、終わりねぇ。御苦労さまぁ」


 ディアナはそういうと、煙管からタバコを灰皿に落とす。

 ジェフはそれを見届けると背を向け、皆を連れて部屋を出る。

 そして、ドアが閉じてジェフたちの気配がなくなると、ディアナは再び口を開く。


「放置、ねぇ。その考えに至った理由は面白いけどぉ、魔の森、いいえぇ、魔境にたどり着いた時点で手出しできないのよねぇ。それ以外の場所であったら、国と連携して討伐する、ということができたのに、よりによってここに現れるのかしらぁ。どういう結果になるかわからないけど、しばらくの間魔の森は出入り禁止にしないといけないわねぇ」


 そういうと、ディアナは煙管にタバコを詰め火をつける。

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