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16話

 カラミティとリリィが袂を分かってから数年の時が流れた。


 そこは冒険者ギルドと呼ばれる建物の中で、掲示板の前にフード付きローブを被った人物が立っていた。

 その人物が見ていたものは依頼書で、書いてある内容は次の通りであった。



 依頼内容:爬虫類型のネームドモンスターの討伐

 難易度:C〜S

 詳細:セーリス草原で、ネームドモンスターを発見。

 名は天災(カラミティ)となっており、最後の遭遇時の大きさは6mほどの爬虫類型モンスター。

 ネームドモンスターとなったばかりのようで、時間が経つにつれ脅威度は増していくものと予想される。

 よって、難易度をCランクから最大のSランクとする。



 ローブを被っている人物は、その依頼書を睨むように見つめていた。


「なんだ、嬢ちゃん。またそれを見てたのか?」


 ローブを被っている人物に、声をかけたのは30を超えていると見られる、剣士の男だった。

 いたのは、その剣士だけではない。

 槍を持った女性と、魔法使いと思われる男、それと弓使いの男がいた。

 その4人は、いつだかカラミティが住んでいた草原でアリを退治した冒険者たちであった。


 ローブを被っていた者は、剣士に声をかけられるとフードを降ろす。

 すると、現れたのは、顔立ちの整った女性だった。


「すみません、ジェフさん。新しい情報が書いてないか、気になってしまって」


「謝る必要はねえよ。ただ、よく飽きねぇな、と思っただけさ」


「仕方ないよ。この子は、このカラミティを探すために、冒険者になったんだからね」


「発見されてから10年近くも経ってますからね。あなたから聞いた話とおりの勢いで成長していれば、CどころかAでも低い気がしますけどね」


「Sランクになっていてもおかしくはない」


「で、こいつはまだ生きている、って言うんだろ。お嬢ちゃんよ?」


「はい、ラミィはまだ生きてます。いまも繋がっているのを感じていますから」


 フードから顔を出した女性は、胸を押さえながらそう答える。

 そう、彼女はカラミティの名付けの親であるリリィであった。

 10年近くの年月が流れれば、少女が立派な女性になるのも当然である。


「そうか。で、場所はわかるのか?」


「いえ。私の感じられる範囲には、いないようです」


 リリィは、カラミティが近くにいれば、その気配を感じ取れることに気づいていた。

 だが、今のリリィにはその気配を感じることができないため、悔しそうな顔で、そう口にする。


「ということは、ここもハズレか?」


「まだ分かりませんよ。これから行こうとしている場所は、思っていたよりも広いようですからね」


「みたい、だな」


 ジェフと呼ばれた剣士の男は、ため息をつく。

 彼らが向かおうとしている場所は、魔境の1つで、通称「魔の森」と呼ばれていた。

 その名の通り、この森には数多くの魔物が住んでおり、奥に行けば行くほど強い魔物がいる、と言われている。

 断言できないのは、未だこの森を攻略できていないためである。

 現在把握しているのは、上から3つ目の脅威度のBランクのモンスターがいる、という事であった。

 それ以上先は、危険すぎて攻略が中断されたためであった。

 もちろん、さらに先へ向かったものもいるが、誰1人帰ってきたものがいないので、更に上のAランク以上の魔物がいるのではないか、と噂されている。


 なぜ彼等は、こんな危険な場所へときているのかというと、カラミティがいたのではないかと思われる痕跡を辿り、現在一番怪しい場所がここだったためだ。

 しかし、彼等は無理をするつもりはない。

 自分たちが行ける範囲まで、カラミティがいないか調べるつもりである。

 彼等は、ベテランと呼ばれる年となり、冒険者として今がピークであることがわかっている。

 そんな彼等が倒せるのは、ギリギリBランクあたりである。

 つまり、現在把握している森の最奥まではなんとか行ける、と踏んでいる。

 言い換えると、それ以上先は無理だということだ。

 もし、仮にここにカラミティがいるとわかっても、行ける領域の先にいるようであれば、手は出すことができないということになる。

 だが、それはそれで、現在のカラミティの強さがBランク以上あることが把握することができ、それだけでも十分であった。

 彼等は今回の冒険が最後の大仕事だと考えていた。

 今の冒険が終われば、引退か、もし続けるとしても難易度を落としたものとなるだろうと。

 1つ懸念があるとすれば、リリィがついてこれるのか、という点であった。

 彼等からすれば、彼女はまだまだ未熟で、危うく感じていた。

 どこまで行けるかは、リリィの様子を見ながらになるだろう、と考えている。

 リリィもまた、自分の実力が至らないことを感じており、せめて足手纏いにはならないように、と思っていた。


「一先ず、今日は宿へ戻るぞ。森に行くのは明日からだ」


「はい。分かりました」


 そういうなり、彼等は建物から出て行く。

 建物から出ると、1匹の犬、いや、狼がリリィに近寄る。

 リリィは、その狼の頭を撫でる。


「ごめん、待たせちゃったね。リル」


 リルと呼ばれた狼は、気にするなと言わんばかりにリリィの手を一舐めする。

 リリィは、カラミティと別れた後、再び会うために冒険者として剣の訓練をしていたが、自分には剣の才能がないことにすぐに気づく。

 だが、それで諦めることができなかった彼女は、他に方法はないかと探していき、自分にはテイマーとしての才能があることが判明する。

 もちろん、テイマーは従魔がいなければ意味がなく、また従えられる魔物にも制限がある。

 しかし、リリィはこれに活路を見出した。

 そして、従魔として従えることができたのが、リルと呼ばれた狼型の魔物であった。

 そのリルの首には、真っ赤なスカーフが巻かれていて、これが従魔としての証であった。


 リリィは、リルを従えて、ジェフたちと一緒に宿へと向かう。

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