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ボーパルバニーの魔王様  作者: 黒兎
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第一話 影が薄くて何が悪い

主人公が兎で、ヒロインが魔王だったら、どうなるのか、気になって書きました。

ぜひ、読んで下さい。

二年前のあの日のこと。

八月上旬、蒸し暑い気温が続く中、近所の神社だけは、涼しかった。

あの子を初めて見たのも、その神社だった。

息を呑んだ。蒸し暑い中、彼女だけは涼しげで、この世のものではないのではないか、触れたらこの美しい光景は、壊れて消えてしまうのではないかと、

恐怖してしまうほどに、この光景は絵画じみていた。


――生まれて初めて見とれてしまった。


そのときからだろうか、彼女の一挙一動を、目で追ってしまうようになったのは、彼女のことが気になるようになったのは、彼女は、俺のことを気付いてはいないだろうけど、意味がないと解っているけど、


――多分俺は彼女に惚れてしまったのだ。


●●●



俺は平凡な男だ。

高校二年生。そこそこ楽しく平凡な学校生活を送っている。

家族は両親と兄が一人、彼女はいない。生まれてこのかた彼女と言うものをが出来たことは無い。

身長は平均より少し高く、顔だって悪くない。成績は高いほうだし、社交力が無いわけじゃない。つまり、スペックが悪い訳では無い。

ただ、欠点を言うならば、影が薄いことだろうか。


さっきも言ったように社交力はある。友達だっている。別に暗い訳でも無口でも無い。ただ、いつも忘れられる。

傍に居ても気付かれず、傍に居ても気付かれない。

中学校の修学旅行で、全員揃ったなって、ナチュラルにハブられた事がある、あの時はいじめかと思ったが、ただ、忘れていたとのこと……なおのことタチが悪い。


誰もが驚くような結果を出しても誰にも気付かれない。

両親にさえ、気付かれない。

あれは、小学二年生の頃。その日は俺の誕生日だった。

ケーキ食べれるかな、プレゼント貰えるかな。と子供ながらにワクワクしていた。ずっとワクワクしながら、家に帰って、宿題をして、机に座って、

両親を待っていた。いつも、帰るのが遅いけど、今日は早く帰って来るだろうなって、子供ながらに思っていた。

しかし、どれだけ時間がたっても、両親が帰って来ない。

時計の針が十二時を過ぎてから思った。


……あれ? 忘れられて無い? と、


結局両親が帰って来たのは一時を過ぎた頃だった。

ずっと両親が帰って来るのを待っていた俺を見て、両親は怒った。

普通に考えればそうなるのだろう。小学二年生が一時を過ぎてもまだ起きているのだから、親としては怒らずにはいられまい。

だが、待って欲しい。それはあまりに理不尽だ。ずっとワクワクして待っていた。最後くらいにはもう魚が死んだような目になっていたけど、それでもずっと待っていた。そして、やっと帰ってきた。今日は遅いけど、何か用事が有ったに違いない。誕生日を祝ってくれるんならそれだけで良い。


そう思って、走って来た俺に、両親が一言。『まだ、起きてたの? 早く寝なさい』……泣いた。それはもう泣いた。ドバァって涙が溢れてくる。

それでも、何か、何か理由があるはずだ。まさか実の息子の誕生日を忘れるはず無い。そう思って涙ながらに理由を聞いた。

最初は怪訝な顔をした両親だったけど、どんどん顔が青くなっていき、一言。


すなわち、『ごめんなさい。忘れてました』

おい!おかしいだろ!一番どうしようも無い理由じゃん!全然救われねーじゃん!滅茶苦茶虚しいじゃん!あの死んだような目をしてまで待ってたのに、

それが忘れてたって、酷いよ。あんまりだ。

取り敢えず、それがもう一回くらいあった。

両親に愛されていない訳では無い。むしろ普通に愛されていた。

なかなか、子供に恵まれず、もう諦めようかと思った時に出来た子供が俺だ。

だから、かなり可愛がられていた。だから、両親が悪くない。

……影が薄い俺が悪いんだ。


それでも、年頃の男子らしく気になっていた女の子に告白しようと、声を掛けたら、ガチで驚かれた。『あれ、いたの?え、いつから!?』……あの時は辛かったなぁ、死のうかと思ったなぁ。いつも喋ってるじゃない。

三回くらい、告白しようとして、失敗してからは彼女を作るのを諦めた。

その全てが気付かれない恋。

今では、一人で普通の日常を送っている。


楽しく平和な毎日だ。けど少し退屈だった。この日常が少しでも変わらないかなと思い、黒いジャンパーを羽織り靴を履いて外に出た。


外は空っ風が吹いていて中々寒かった。

しばらく当ても無く歩くと、公園に着いた。

やることも無かったから、ベンチに座って休むかと思い、公園に入った。


その時だった。

まだ幼い男の子。小学二年生くらいだろうか?その男の子はボールを強く蹴りすぎたのか、公園から飛び抜けたボールを追いかけ、左右をろくに確認せず、ボールを追いかけている。


「危ないぞ、ちゃんと周りを見ろよー」


子供は気付かない。うん。ですよね~

何も無かったら良いけど、そう思ったとき、

それを見た。


幼い男の子に高速で迫る。黒い影。

黒い影は、真っ黒なスポーツカーだろうな。

男の子はボールに夢中で、スポーツカーを見ていない。まずい!そう思った瞬間に体が動いた。

男の子に向かって走り出すが飛び込んでも届かない。

間に合わない!咄嗟に男の子を突き飛ばした。だが、もう俺が車から逃げる時間はない。

ドバンッ! と強い衝撃に襲われ、俺はまるで蹴られたボールのように飛ばされた。

しかし。

車はそのまま止まらずに逃走する。


おいおい轢き逃げかよ、性根腐ってんなぁ。


――それが、俺の最後の思考だった。


ユーザーネーム考えるのって意外に難しい。

シンプルにいきました。ニゲル兎です。

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