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練習用 縛り小説  作者: GU
3/4

①昔そこに土があった。

周りを水で囲まれており、自然にできた土の集まりだった。

やがて他の場所からも土が流れてきてくっつき、その土はたちまち大きくなっていった。

そしてそこに生き物が住み着くようになった。

土の中で自然発生したものや、遠くから泳いできたものまで様々だった。

そのころからその土は陸と呼ばれた。

生物たちは各々の集団を作り、生活を始めた。時に栄養を採るために他の集団を襲ったりもした。

しばらくすると陸の上にいる生物は種類が減っていた。

強い生物が地上で活動するようになり、弱い生物は地下で身を守るためにこっそりと生活していた。地下世界で弱い生物は生き抜くために、知恵を身につけた。

同時に知恵がなかった強い生物は栄養が不足して、次々に倒れていった。

強い生物が減ると、弱い生物は再び地上に姿を現し、活動を開始した。

また時がすぎて、弱い生物と強い生物の数が同じくらいになっていた。

そして次に彼らを災害が襲った。

強い生物も弱い生物も、多くの命が散った。

各々、十分な体力も知力も持ち合わせていなかったからだった。

②そして、ふと強い生物は絶滅した。

弱い生物たちが地上で自由に活動して、気が付いたらどこにも強い生物はいなかった。

地上を探し回ったけれど、見つかった死体には、すべて災害による傷がついていた。

災害は未だに、陸上に被害を与え続けていた。

弱い生物たちは災害から自分たちを守るために、建物を作った。

それは土と石と木で簡素に作られていた。

また、移動手段として建物と建物を繋ぐ抜け道を掘った。

それは災害が来た時の移動手段として重宝された。

抜け道を使って木の実や水、を集めた。それらが尽きかけた時は強い生物の死体の肉を食べた。

やがてそれもなくなると、今度は、穴の中で共食いが始まった。

共食いは建物のなかの生物が最初の40%になるまで続いた。

最後まで生き残ったのは、建物や食料集めに参加していた生物が多かった。

そしてふと、災害が去っていった。

生き残った生物たちは地上に出て、食料集めと新しい建物作りを始めた。

同じことを繰り返さないために、何が必要なのか、その生物たちは自然に悟っていた。

③新しい生活を始めてから、数か月したころ、陸に植物が生まれた。

生物たちは植物を摘み取って、口にしてみた。

植物は口当たりがよく、害になるようなものは含んでいなかった。

生物たちは植物を食料として使うために、植物の管理を始めた。

食べつくして、植物が絶滅しないよう観察や、植物の作成方法を研究した。

最初に分かったことは、植物は主に水を用いて成長する、ということだった。

植物は水辺に多く生えており、試しに一本刈り取って、別の場所で水を与え続けたところ、問題なく成長した。

生物たちは、このことが分かるとすぐに植物を刈り取って自分たちの住処の近くに運んで栽培を始めた。

食料の種類が増えてから、生物たちの味覚が発達した。

段々と味に敏感になり、好き嫌いを主張する種も現れ始めた。

さらに、外の水は塩辛い味がすることや、植物にも酸っぱいものと甘いものがあることが認識され始めた。

好き嫌いが明確化されたことにより、食料の消費の偏りも現れ始め、これが陸にすむ生物たちの次の問題となった。

④他にも生物の間で病が蔓延する問題も起こった。

栄養バランスが偏り、免疫力がなくなったことが原因だった。

食事をえり好みする種ほど病に掛かっていったことから、原因の発見は早かった。

生物たちは管理作業を徹底した。

それぞれの食糧の一日の消費量と、採取できる量を計算し、予定を立てていった。

  それは今までの彼らの過ごし方が顕著に表れる結果となった。

とくに極端だったのが一日に、一番人気のなかった食料を、一番人気のあった食料の3倍消費しなければならないということだった。

管理を徹底し、新しい食事を始めても問題は終わらなかった。

栽培されている植物が盗まれたり、それによって禁止領域になった場所に入る生物が後を絶たなかった。

侵入者と管理者が争うことも少なくなかった。平和だった陸で再び争いが増えていった。

そして弱い生物たちの中で二つの集団が出来上がった。

一つ目は調和を尊重し、食料の管理を優先する集団。

二つ目は食料の消費を優先し、管理者から無理やり食料を奪っていく血の気の多い集団だった。

⑤二つの集団は一触触発だった。

調和の集団は血の気の多い集団をヴィランズと名付けた。その生物たちの言葉で血の気の多い、という意味だった。

ヴィランズから自分たちを守るために、調和の集団は罠を用意した。一定区画内に入ったら石が飛んでくる仕掛けになっていた。

さらに自分たちが管理していた畑と植物はすべて地下に移動させた。

石のダメージでヴィランズを威嚇し、敵の狙うものは見つからない場所に隠す。

それが調和の集団の計画だった。

ヴィランズは野蛮で好き嫌いの激しい奴ら。一部の強い奴が食料を独り占めにして、内部から分裂していくに決まっている。集団内ではヴィランズの行動がそう予測されていた。

しかし、それは甘かった。

獰猛で血の気の多い彼らの作戦はシンプルだった。食料は奪えた分だけ食べていい。いわゆる成果制だった。一対一なら負けないと踏んだヴィランズ達は、数で一斉に責めてきた。

集団が用意した石の罠も大した足止めにならず、すぐに突破された。

ヴィランズ達がこちらへ向かって走ってくる。

それを見つけた生物は仲間に伝えるために笛を吹いた。

「やつらが来た。たくさん来た!」

ヴィランズはすぐそこまで迫っていた。

⑥調和の集団は食料を隠した穴の中へ逃げ込んだ。

急いで穴をふさぎ、ヴィランズの足音が消えるまで息を潜めた。

ヴィランズは彼らの頭上で、走り回り彼らを探していた。

ヴィランズには食料を目当てに行動するものだけではなく、先に集団を確保し、安全に食料を確保しようとするもの、集団の中の一人を見つけて食料の在りかを聞き出そうとするもの、など知恵が働く存在もいた。

彼らも災害を乗り切った種だけあって、第六感や高い知能を兼ね備えていた。

そんなヴィランズを相手に調和の集団は穴の中で隠れることしかできず、息を潜めているうちに、ヴィランズの中の一匹が言った。

「ウコブだ。ウコブがあったぞ!」

それはヴィランズたちが特に好む果実だった。腐りかけていたものが森の中から発見され、ヴィランズの一匹が運んできたのだ。

「間違いねぇ、ウコブだッ」

「何か月ぶりだ。ウコブを見たのは」

ヴィランズ達は、ウコブの強烈な香りに涎を垂らした。

彼らは今にもウコブに噛り付きそうであった。

しかし、ウコブを運んできたヴィランズは冷静だった。

⑦そのヴィランズは仲間たちにウコブを差し出して言った。

「こいつの匂いを覚えろ。匂いを覚えたら探せ」

そのヴィランズは鋭かった。

そこには生物がいた形跡はあったのに、食料が少しも見当たらなかった。

そして調和の集団が食料を隠していることを、ヴィランズ達は確信した。

「探せ。近くに食料があるはずだ。それか、匂いだけでも残っているはずだ。」

その声を聴いて、ヴィランズ達は一斉に辺りに散らばっていった。

どんどん音が近づいてくる。

いよいよ地下にいる調和の集団も黙って待っているわけにはいかなくなった。

「穴を掘って逃げるんだ。食料は諦めよう」

集団の中の誰かが言った。そして静かに、土を削り取る音が聞こえた。やがて、その音は徐々に増えていった。

地上に聞こえない程の小さな音で、彼らは一斉に壁を掘り始めた。

ヴィランズの多くは畑仕事に慣れていない。奴らが地下の存在に気が付いたとしても、十分に時間は稼げる。

彼らはヴィランズが自分たちに気が付かないよう祈りながら懸命に壁を掘っていった。

そして、ヴィランズが地下に食材があることに気が付き、地面を掘り始めた時には、調和の集団は自分たちの住処から遠い場所にまでたどり着いていた。

⑧結果的に、残っていた食料の殆どをヴィランズ達に奪われてしまった。

調和の集団のもとに残った食料はごく僅かとなり、全員が生き残るに十分な量は残っていなかった。

「どのように分けようか、十分に残らなかったこの食料を」

その場にいた全員で、食料を分ける話し合いが行われた。

しかし、全員に行きわたるほどない量の食料をどのようにするかは、初めから決まっているようなものだった。

「幼い者を優先に、食料を持っていきなさい。」

生物の中で幼い者は、食料を分け与えられた。

そして、年長の者はヴィランズから食料を取り戻すために、戦いを始めることを決めた。

ヴィランズは好物であるウコブをやっとの思いで手に入れたのだ。

ウコブを口にして油断をしている隙を利用して、奴らを叩く。特に、仕留めやすい小柄のヴィランズから集中して各個撃破していく。

大昔での、強い生物と弱い生物の戦いの様に、調和の集団は知恵でヴィランズを圧倒する道を選んだのだった。

⑨襲撃は翌日の夜に行われることとなった。

ヴィランズ達が食料を平らげ、眠りに落ちている時間を狙う。

そして、翌日の昼間、一撃必殺を狙うため、調和の集団は石を集めて鋭利な槍を作っていた。

ヴィランズの心臓を一突きにするために、槍の訓練も行った。

目的の時刻まで、調和の集団は各々の戦闘力を高めあった。

ヴィランズと一対一で戦ったところで勝機は薄い。

情報でも体力的にも、彼らとの差を埋めておきたかった。

ヴィランズの行動を調査するため、奪われた穴の偵察も行われた。

  

夕方に戻ってきた偵察隊によると、ヴィランズの多くが穴の近くで過ごしていることが分かった。

「地形はこちらの方が把握できている。奇襲をかけて混乱させさえすれば、俺たちにも勝機はある」

誰が言ったか、調和の集団の一人がそう言った、

全員が合致し、こうしてヴィランズ達と戦う準備が整った。

その夜は静かだった。

ヴィランズ達は数日前のことが嘘かの様にすうすうと音を立てないで、皆熟睡していた。

「いくぞ」

最初の一人が放った投げ槍が、ヴィランズの一人の心臓部めがけて向かっていった。

⑩槍は狙ったヴィランズの心臓部に命中し、悲鳴が起こることもなく絶命した。

続けて、少数の槍を持った生物が残りのヴィランズを仕留めるために突撃し、後方で別のメンバーが他のヴィランズ目がけて槍を放っていく。

8体ほどヴィランズを仕留めたところで、熟睡していたヴィランズ達が次々に目を覚まし始めた。

「目を覚まし始めたっ。このまま仕留めるぞ。」

ヴィランズが戦闘態勢に入り切る前に、作戦通り調和の集団はヴィランズを各個撃破していく態勢に入った。

ヴィランズ達は右往左往し、次々と倒れていった。

それから30分としないうちに、ヴィランズ達は全滅した。

終わってみればあっけなく、ただの虐殺だった。

「ヴィランズは死んだ。食料はどこだ?」

調和の集団に虐殺を悔やむものはいなかった。

その後、この集団内でも争いは発生し、最後に残った一人も陸の環境に適応できずに死んでいった。

そして、何もなくなった陸はやがて姿を消し、そこには水だけが残った。

そして、またどこかで新しい陸と命が作られていった。


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